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せっせと花冠を作り続けて、どのくらいの時間が過ぎただろう。
ヴェルナーが戻ってきたのは2つ目の、合計5つ目の花冠を作り終えようかというところであった。
食料調達の時より早めに戻ってきたのは、習得した直後でまだレベルが低いせいなのかもしれない。採取したアイテム数を確認しても、やはり先ほどよりもずっと数は少ないようだった。
「ありがとね、ヴェルナー」
ヴェルナーにお礼を言いつつ、ミツキはアイテム欄にある薬草の名前を確認する。
(薬草名だけじゃなく、効能とか…説明を書いて欲しいんだけどなぁ…)
なんて都合よくはいかないか。ミツキは仕方がないので薬草をヴェルナーに食べてもらうことにした。
(さっきはMP40減ってたけど、今度は15減ってる)
今のヴェルナーの最大MPは90である。というわけで、残りはたったの35になってしまった。
この中にMPを回復する薬草がなければ、結構まずい状況かもしれない。
(ま、しょうがないしょうがない、深く考えてもしょーがない)
ここはひとつ楽天的にいこうじゃないか、とミツキはヴェルナーの前に4種類の薬草を並べる。
薬草と一口に言っても、いろんな姿形がある。似たり寄ったりなものばかりだったらどうしようかと思っていたが、これならなんとか区別がつきそうだ。
ステータスの画面を開きっぱなしにしながら、ミツキはヴェルナーに端から食べてもらうことにした。
ところがヴェルナーはいやいやするように首を振ると、ぷいと顔を背けた。どうやら食べたくないようである。
「……というか、食べる必要がないってこと?」
今のところヴェルナーのステータスに異常はないし、HPも満タンである。この状態で薬草を食べても効果はないということなのだろうか。
(よく考えたら、MP回復って結構レアなアイテムなのかも)
レベル1で採ってこれるようなアイテムではないのかもしれない。
「うーん、困ったな…」
詰んだかもしれない、とミツキは思う。
ヴェルナーの残りMPを考えると薬草採取をしてきてもらえる回数は最大2回、食料調達に関してはもう不可能だ。
残りのMPを使い切る前にレベルが上がる保証はないし、レベルが上がったからと言って全回復出来るとも限らない。
(あんまり軽々に判断するのもよくないかな)
ここはひとつ、保留ということで、とミツキはMP回復問題については後回しにすることにした。
となると、次の問題は今夜の寝床、といったところだろうか。
(陽が傾く前に、目星をつけておかないと)
まだ辺りは明るいが、日が暮れてしまってから探すのでは遅すぎる。
ミツキはとりあえず、ヴェルナーにどこか落ち着ける場所はないか聞いてみることにした。
「ね、ヴェルナー、私でも安全に一夜を過ごせそうな……うーん、そうだなぁ、洞窟とかこの辺にない?」
ダメもとで聞いてみる。するとヴェルナーはわふっとひと吠えした後、森の方へと歩き出した。
出来ればあんまり奥には行きたくないんだけど…とは思いつつ、ミツキはおとなしくその後をついていく。このまま草原のど真ん中で野宿することも考えたが、やはりどこか身を隠せるような場所が欲しかった。
(ここじゃ、あまりにも……落ち着かないもん)
仮にモンスターが現れたとして、自分の存在が丸見えになってしまうような状態は避けたかった。