表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

11話 代償

体育倉庫の中には沈黙が流れていた。

蛍の手首から先は、いつの間にか普通の手に戻っている。


手を下ろした蛍は、口を開いた。


「化狸族の能力は”有機物を別の有機物に変化させる力”。ただ、俺の”グー”を”パー”に変えてもらっただけさ」


スケルツは賭けにおいて、カメラによる判定ではなく、当事者の身体情報を読み取ることによって判定する。


つまり、見た目はパーでも、判定はグー。


「一戦目、お前が何を出そうと、この勝負を受けた時点でもう詰んでたんだよ」


蛍は悪戯な笑みを浮かべる。



「な……イカサマだ!イカサマは失格だろ!!」




「何言ってんだ?それは”ゲーム中の話”だろ。ルールは”イカサマが発覚した場合、失格とする”、バレない嘘は嘘じゃない。」



「い…いつからだ!お前らはいつから手を組んでいた!そんなことする暇はなかったはず!」



「いつから?だから初めからだよ。お前がここに来る前から、俺はこいつに連絡を取って計画を練っていた。さて、そろそろいいだろ?俺はもう一度寝直したいんだ」



フィーリオがわめき散らす中、それぞれのスケルツが無機質な音をあげた。



「 ピーーー ……… フィーリオノ負ケガ決定シマシタ。条件ニ乗ッ取リ行使シマス」


音が止んだ瞬間、誰も触れていないはずの体育倉庫の扉が勢いよく開けられる。


「さあ、出て行ってくれ」


開かれた扉に向かってフィーリオが少しづつ進んでいく。


「あぁああ!なんでだ!なぜ足が勝手に動く!」


もがくフィーりオの腕は何もつかめずただ宙を切る。

やがて体育倉庫から体全体が出ると、今度は扉が自動的に閉められた。



「ぜってぇ許さねぇ!覚えてろ白髪頭!」


吠えるフィーリオに、蛍はまるで興味なさそうに手を振った。


「はーい。さよならー」




「なんで、私なんか助けてくれたですか?」


静かになった体育倉庫の中、ジジがゆっくりと立ち上がった。


「別に理由なんてない。ただ、なんとなくだ」


蛍はそっけなくそう言い、体育倉庫を出ていこうとする。


「せ、せめてお礼を!そうしないと私の気が収まりません!」



「なんだお前は、江戸時代の町娘か」


「いや、それはちょっとわかんないですけど……とりあえず、なにかお礼!」


上目遣いで自分を見つめるジジにため息をつきながら、蛍は手を伸ばした。



「そうだな……じゃあ、飴、持ってるか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ