集え!者共、我が名はジーク!!
目の前の三人の海賊はこちらの隙を伺っている!!
それに対して、俺は油断なく剣を構えた!!
俺は「ショーテル」のスキルに「100」ポイントを割り当てている。それだけで、この三人の海賊には勝てるかもしれない。
しかし、あまり時間をかけるのは良くない。敵が集まってきてしまうからだ!!
こんな時は……あの反則技だ。
俺は言う。
「ムンク……」
「……なんだ?」
ムンクは俺の後ろで心細そうに返事をする。
「……お前に……俺の本気を見せてやるよ」
そして、俺は小さく唱えた。
「オーバー・ヒート……発動」
力が漲る!!集中力が研ぎ澄まされる!!
海賊力が無くなってはおしまいだ!一気にカタをつけてやる!!
ヒョッン!!
「うがっ!!」
フェイントも何もない!!俺の振るった最初の一撃が敵海賊の一人の胸を貫いた!!
なっ!?なんて斬れ味だ!!このショーテルという武器の斬れ味が良いのか?それともステータスMAXで、スキルポイント「100」の俺の攻撃が速く鮮やか過ぎるのか、敵は殆ど避けることもなく俺の攻撃を食らい、息絶えた!!
周りを囲む二人の海賊が同時に俺を攻撃してくる!!
それを見て俺は驚く!!
な、なんて遅さだ!?俺の素早さ(AGI)がMAXになっているからか!?
キュイッーン!!キンッ!!
俺は二人の海賊の攻撃を綺麗に払い、さらに攻撃を仕掛ける!!
シュンッ!!
「がっー!!」
斬り結ぶことは無い!俺の一撃は確実に相手の息の根を止める!!
俺を囲んでいた三人の内、最後の一人がチラリと周りを見た。
仲間を探しているようだ!!
しかし俺には時間が無い!!
少し怖じ気づいている敵に一閃!!
俺のショーテルは敵の息の根を止めた!!
そして俺は慌てて言う。
「オーバー・ヒート停止」
スマホを見て、残りの海賊力を確認したいが、今はそんな状況てはない!!
「お前、ほ、本当に強いんだな……」
ムンクが後ろから声をかけてくる。
パッと俺が振り抜くと……
おおっ!?
ムンクは俺を尊敬の眼差しで見ているではないか!!
良きかな、良きかな。
「すげえんだな。お前」
よし、よし。
「ジークがいれば、俺ら、助かるかも……」
なんだと……
「ジーク……」
「……ジーク……」
なんだ?いつの間にか、例の部屋に捕まっていた連中が集まってきて俺の名前を呼ぶ。
止めて、目立ってしまう……
「ジーク……ジーク……」
「……ジーク……ジーク!」
いや、目立ってしまう……
「ジーク!ジーク!」
「ジーク!ジーク!!」
なんだ?これは?俺があの時「我と共に戦え」と言った時には、俺を残念な奴とばかりに見ていたのに……
いかん!!目立ち過ぎた!?
周りの海賊共が徐々にこちらに集まってきている!!
何人いるのかは分からんが、百人以上の海賊がいる。それに比べてブルグン勢はわずか数人!
あちらの方でデブッチョ本人は一人頑張っているが、全身傷だらけだ。
どう頑張っても俺一人ではキツイんではないだろうか?
とにかく、囲まれてはいけない!!
ヒュッ!!ズシュッ!!
俺は不用意に近づいてくる敵海賊を血祭りに上げる!!
敵が警戒する前に二人目!!三人目を葬った!!
さすがにスキル「100」ポイントは並みじゃない!!
「オーバー・ヒート」を使わなくても圧倒的だ!!
あまりの強さに俺は格好をつけてみたくなった!
俺は黒く鮮やかに光るショーテルを天高くかざし、声高々に叫ぶ!!
「我が名はジーク!!皆の者、我と共に戦え!!そしてパウルを倒すのだ!!」
「…お、おおっー!!」
「ジーク!ジーク!おおっー!!」
素晴らしい!!さっきとは大違いだ!!
みんな大注目だ!!パウル勢に目をつけられたのは痛いが、良い点もあった。
それは数少ないブルグン勢が少しずつ俺の元に集まってきた事だ。それと最初に俺と同じ部屋にいた男共も集まって来る。
これで俺は、最低でも背後は気にしなくて良い。いくらショーテルの腕前が達人レベルになったといっても、背後から攻撃をされては敵わないし、周りを囲まれても困る。
その点、俺の背後は残り少ないブルグン勢と、あの部屋の連中が守ってくれる。
俺は得意のショーテルで次々と敵を薙ぎ払っていく!!
そしてまず目指すは、孤軍奮闘するデブッチョブルグンだ。
さっきまでは、俺の「オーバー・ヒート」でぶっ倒してやろうと思っていた相手だが、状況は変わった。
今の奴は大きな戦力である。やられては困る。奴にも敵の大半を受け持ってもらわなければいけない。
俺が次々と敵海賊をぶっ倒して、デブッチョとの距離をジリジリと縮めていると……
なんだ?奴は!!
アイドルみたいな奴がいる!?
いや、貴族か?
ブルグンの前にいやにハンサムで細身の男が現れた!!
ブルグンに向かって剣を構えているので、そいつはパウルの子分のようだが、構えている剣も他の海賊とは違っていた。
他の海賊の殆どがカトラスと言われる幅広の曲刀を振るっているのに対して、そのハンサム貴族はえらく細身の剣を構えている。
「やばい。アイツはベルン・ブラントです。ジークさん」
俺の後ろにいるブルグンの子分が教えてくれた。
「なんだ?ベルン・ブラント?」
「パウルのところのナンバー2です」