激突!ブルグン対パウル
これはゲーム!!これはゲーム!!これはゲーム!!
俺は、お念仏のように何度も唱える!!
ブルグンとパウルの船が接触している辺りの甲板は両海賊が入り乱れての大乱戦になっている!!
剣と剣のぶつかる音や海賊達の叫び声が飛び交い凄い迫力だ!!
ちなみに剣と剣がぶつかる時は、時代劇で見るような、キュイッーン!!キッーン!!キッーン!!というような軽快な音はしない。ガツッ!!ガツッ!!ガッツ!!という鈍い音だ……
そして、剣で斬られた人間はすぐに死なない……
時代劇で斬られた人間はその場に倒れ、すぐに息を引き取っているが、目の前の海賊達は……まず斬られる時に骨が折れるようは鈍い音がする……
そしてしばらく甲板の上をのたうち回るのだ……
するとそこを敵の海賊が何度もカトラスで斬りつけてトドメを刺す……
しかし、トドメを刺している海賊もそれに気を取られてはいけない……それに気を取られて注意を怠れば、自分が後ろから敵に殺られるハメになる……
あの海賊達が持つ剣は、俺の想像ほど斬れ味がよく無いようだ。
その有様は斬殺と言うより撲殺である……
まさに地獄絵図……
つまり……何が言いたいかと言うと……
こんのっ!!クソゲーがぁっ!?だから変なところばかりリアル追求すんじゃねえよっっ!!!!
ゲームなんだからっ!!たかがゲームなんだから「や・ら・れ・たー」とか言って、少し点滅して消えればいいじゃねえかっ!!
こんなん、夢に見そうだわ!!
まあ、今見てるこれが夢なんだが……
隠れて海賊同士の戦いを見ていた俺だが、内心で思う。
やばいな……
両海賊が入り乱れているので誰がどちら側に属する海賊か、俺には分からないが、もちろん海賊達自身には自分の仲間が分かっているだろう。
そして、二対一で戦うグループが増えてきているのだ!!
つまり何が言いたいかと言うと……
海賊達の戦い方としては、敵を倒した者は次の敵を探すが、その時に自分の仲間を見つけてそこに加勢をして二対一で戦うケースが多いだろう。
その方が自分が殺られる可能性が少なくなるし、結果味方の勝ちにつながる!!
そして一度その連鎖が始まると優勢な海賊と劣勢な海賊の差はどんどん広がるばかりだ!!
そう思っている間にも、一人の海賊が三人の敵海賊に囲まれ、無残に斬殺される場面も出てきた!!
部外者である俺には、いったい、どちらの海賊が負けているのか分からない。
そして今現在、戦っているのは海賊同士だけであって、最初俺と同じ部屋にいた男共は、まだこの戦いには参戦していない。皆、俺と同じように物陰に隠れて見ているのだ。
「やばい、次は俺たちの番だ……」
ムンクがガタガタと震えながら言う。
ムンクがこう言うということは……やはり負けているのはブルグン側のようだ。
元々の人数もパウル側の方が多かったようだが、今や、その差は歴然。
圧倒的にパウル側の方が勝利している。
「おおっ?」
みると、親分ブルグンなどは悲惨な事になっている。
もう六~七人程の敵に囲まれているではないか!?
「おらっー!!」
あらまっ!?意外に強い!!
複数の敵に囲まれてもなんのその、海賊の船長だけあって、簡単には負けてはいないようだ!!
しかし多勢に無勢!!背後からの攻撃には耐えられない!!それに体力も持たないだろう。
最初戦場は一箇所に固まっていたが、いまや、ブルグン側の海賊は散り散りになり、所々で大勢の敵に囲まれている。
今まで殺されず残っていたということは、皆それなりに強いのだろうが、数の力には敵わない。一人、また一人と数が減っていく……
「かなり、悲惨な状況になってきたな」
俺がボソリと言うと……
「……まずい。ブルグン達が殺られちまったら、次は俺らが皆殺しだ」
俺はびっくりする。なんと!ムンクが剣を片手に物陰から出て行ったのだ!!
やばいっ!!やばいぞっ!!ムンク!!
「まだ、あそこにもいるぞっ!!」
まずいっ!?見つかった!!
海賊達は命を賭けた戦いに興奮しているのか、血走った目をしてムンク目指して走ってくる。
二人!三人とムンク目掛けて敵海賊がやってきた!!
一方、ムンクはというとガタガタと震えていて、立っているのがやっとの状態だ!!
た、助けなければ!?これはゲームだし、俺の「ショーテル」は100点満点だ……恐れる事はない。
しかし、凄惨な殺し合いを目の当たりにしたばかりだ。そして悪魔のような形相で敵は襲い来る!!
さ、さすがに本当は俺も恐い……
震えながらも俺の目の前でムンクは剣を構えた!
敵海賊はもうムンクの目の前だ!!
このクソゲーがぁ!!クソゲーが!クソゲーが!!変なところばっか、リアル追求すんじゃねえよっっ!!
海賊がムンク目掛けて剣を振り上げた!!
ムンクは剣は握っているが全く反応出来ていない!!
海賊がっー!!
敵はムンクの脳天目掛けて剣を振り下ろした!!!!
キッーン!!
間一髪!!
俺はムンクに振り下ろされた剣を自分の黒いショーテルではじき返した!!
「ふうっー」
俺は大きく息を吐く!!
「ジッ……ジーク!?」
ムンクは驚いて俺の名を呼んだ!!
一人目の剣ははじき返したが、その後ろから二人目、三人目が凄い形相で近づいてくる!!
な、なんて迫力だ!?
悪魔の形相とでも言うのだろうか?
「ムッ、ムンク下がってろ!!」
俺は叫ぶ!!
「ジーク……」
心配そうなムンクの声がする。
うおっ!?一人目の海賊の次の攻撃が来る!!
キュイッーン!!
二人目が来た!!
ギッンッ!!
さ、三人目!!
キンッ!!
うっ!!一人目!?
ギッンっ!!
三人……
キュイッーン!!ギッン!!
防戦一方だ!!
いや、防戦一方なのがいけないのだ!!
こ、攻撃だ!!
い、いやっ!!
三対一では反撃出来る隙など無い!!
だが、俺は「100」点満点だっ!!
俺は無理矢理攻撃に転じようとする!!
「!?」
するとどうだろう!?
敵は俺が攻撃の構えを見せただけで一度下がり、距離を取ったではないか!!
ヒョッン!!ヒュンッ!!ヒョッン!!
俺は敵に向けてショーテルを振るう!!
距離的に届くわけは無いが、威嚇になるかと思ったのだ!!
すると!!
敵は慌てて大きく下がる!!
なにっ!?敵は、距離感がつかめていない?
そうかっ!?
このショーテルという剣が大きく曲がっている為、敵は距離感を測れていないのだ!!
しかし、三人の海賊も黙ってはいない。俺のショーテルに苦しみながらもジリジリと距離を狭めて来る!!
「ジ……ジーク……」
俺の後ろでムンクが心配そうに声を掛けてきた。
「下がっていろ、ムンク。そして心配するな……」
俺はムンクに言う。
「……我はショーテルの……使い手である!そう言っただろう?」