退き際
しまったな……
インテリのお目当ての酒場女かと思ったが、こいつがトルルだったようだな……
まさか、女性に化けるとは……由紀が聞いたら喜びそうな話だ。
キンッッ!!
私はトルルとやらの鋭い突きをかわす!!
信じられない速さだ!!
姿勢も型もしっかりしている。
しかし私の持論は変わらない。
槍は剣よりも強い!!
私は長巻でトルルに突きをお見舞いした!!
キンッッ!!ギンッ!!
なんという動き!!
本当に速い!!
それになかなかの剣さばきだ。
トルルはそのハンサムな顔に眠たそうな表情を浮かべて攻撃をしてくる。表情だけを見るととても、剣で戦っている人間には思えない。
全く力みが無い。こいつ天才か?
私は長巻を使い、多種多様な攻撃を仕掛け、あらゆるフェイントを披露する。
しかし、攻めきれない!!
トルルの方も私の長巻の攻撃範囲の長さに手を焼いている様子で、ほとんど攻撃は仕掛けて来ない。
残念だ、あと少しの所であったがこれ以上はまずい。
酒場で待機しているインテリの仲間が来る頃だ。インテリが酒場を出た後に私はお手洗いに立った。
なかなか私が戻って来ない事を不審に思う者がいてもおかしくない。
私は、力一杯トルルに攻撃をする!!
ギチィッ!!
私は長めの武器を両手で振り回している!!その攻撃を片手剣で受けるのだ。たじろがない者はいない。
私は素早く距離を取る!!
しかし、トルルは慌てて距離を詰めてきたりはしない。
私はさらに攻撃に移るかの様な姿勢を見せて、次の瞬間にはクルリと彼らに背中を向けて走った!!
「いや、トゥルルさん!!追わなくて良いです!」
はるか、後ろの方でインテリの声がする。
トルルでは無く、トゥルルと言うのか。覚えておこう。
私が暗い路地裏から出るとはるか向こうを大勢の男がこちらに向けて駆けて来る。インテリの仲間か?ようやく気付いた様だな。
私は男たちが向かって来るのとは、逆の方向へと走り出す。
危なかったな……もう少し遅ければ、あのトゥルルを相手にしながら、大勢の敵に囲まれるところだった……