カナエ、絶体絶命
私は長巻を構えながらインテリに近づいた。
奴は剣を構えて後ずさりながら言う。
「海賊の目、発動」
無駄だ。私が「オール・インバリッド」発動中は特殊能力は使えない。
インテリは私の方を見ながら呟く。
「信じられない。3レベルでこの能力とは?これが素での力なのか?」
むっ、なぜ私が今、3レベルだと知っている?
何か、人の能力を覗き見る力か?
私は長巻でインテリに突きをお見舞いする!
シュンッ!!ギンッ!!
「くっ!!」
インテリはそれをどうにか剣で弾くが先ほどの様なスピードもパワーも無い!!
ギンッ!!キンッッ!!ザシュッ!!
私は早くもインテリの右腕に傷をつける。
インテリは剣のスキルだけでどうにか私の剣を交わしているが、私とインテリの力の差は歴然だ。
ザシュッ!!
ズシュっ!!
私の長巻はインテリの肩に、腕にと傷を与えていく。
「くうっ!!」
ギンッ!キュッイーン!
ギンッ、ズシュッ!!
ぬぬっ!とっとと観念すれば良いものを、なかなかしぶといな!
インテリは苦しそうな声を上げてあたりを伺う。
仲間を待っているのか?淡い希望がインテリを繋ぎ止めている?
だから、こうもしぶといのか!?
私は一度、インテリと距離を取った。力の差は圧倒的なのだ。ここで相手に息をつく間を与えるのは良くない。
一息に倒した方が良いだろう。しかし、仲間が現れるという勘違いがインテリの希望となり、こうもしぶとく抵抗しているのかもしれない。
「何か、待っているのか?」
私はインテリに聞く。
それに対してインテリはニヤリと笑いながら言った。
「……いいえ、何も」
「……」
「しかし、驚きました。まさか、他人の特殊能力を無効化する能力があるだなんて……」
私との力の差は歴然だと言うのにインテリは余裕の表情で喋っている。
「ラグナ達はいないぞ」
私は言う。
これにはインテリも驚いた顔でこちらを見た。
「まさか?あなたが倒したのですか?」
それには答えずに私はさらに言う。
「酒場で普通の客を装っていた、お前の仲間達もすぐにはやって来ない」
「なぜ……」
インテリは驚愕の表情をする。それに対して私は静かに言う。
「諦めろ……」
私は長巻を右前半身に構えて摺り足でインテリに近づいた。
慌てふためいて逃げるかと思ったインテリだが、そんなことは無かった。
奴は静かに剣を構えている。
うむ、潔しだな。
すぐにカタをつけてやる。
私はインテリの胸目掛けて渾身の突きを放つ!!
キュッイーンー!!
これはかわせないと思った突きをインテリはかろうじて上に弾いた!!
私はそれに逆らわない!刀身は上を向いたが、私は長巻をクルリと反転させて柄の部分でインテリのみぞうちを狙う!
刀身が上を向いたのに、素人が下からの攻撃に準備が出来ることはまずない。
ドガッ!!
私の長巻の柄はインテリのみぞうちを強打した!!
「ぐふっ!!」
みぞうちとは人間の急所!!ここを打たれて平気な人間はいない!!
インテリは苦しそうに身体をくの字に曲げる。
インテリのみぞうちを長巻で打った時の感触が私の手に残る。インテリの苦しみようは演技では無い。
インテリは苦しそうに頭を下げて真っ青な顔をしていた。
無防備にみぞうちを強打されて呼吸でも止まったのだろう。
私は上げた刀身を振り下ろすだけで良い!!
奴の首が真下にあるのだ!!
インテリは自分から頭を落として欲しいかの様に、私の目の前に首を差し出している!!
私は奴の首目掛けて長巻を振り下ろした!!
シュッ!!
インテリは全く防御の姿勢は取れていない。
容易い!!
私の長巻が奴の首にかかる瞬間!!
キンッッ!!
な、何ぃっ!!
誰かが私の長巻を弾いた!!
だ、誰だ!!近くに人などいなかったはず!!
私は長巻を弾いた人物を見る。
するとそれはインテリの連れていた酒場女であった。
「カナエさん?……どうしたんですか?」
酒場女は眠たそうな表情と声で言った。