特殊能力発動!
「まさかの展開ですね」
私の前に立つインテリがニコニコと笑顔で言う。笑っていられるのも今のうちだけだがな。
「ベテランプレイヤーが初心者プレイヤーを狙うことはあっても、まさかその逆が起こり得るとは思いませんでした」
インテリは余裕をかましてペラペラと喋るが、私は無言で精神を統一させる。
そして長巻を構えた。
「大太刀ですか?」
インテリは私の長巻を見て言う。この長巻をそう呼ぶ者もいる。
私は長巻を右前半身に構えて、摺り足で少しずつインテリとの間合いを詰めた。
インテリは私の構えを見て表情を引き締める。
「やる人ですか?」
おそらく武道をやる人ですかとでも聞いているのだろう。
「……」
私は返事をせずにインテリとの間合いをさらに詰める。
「さがっていて下さい」
インテリは連れの女性に優しく言う。
そしてこちらを向いてニヤリと笑った。
何か特殊能力を出すのだろう。無駄とも知らずにな……
「ラム酒を一杯……発動」
私はインテリの連れの女性を見る。特に何か変わった感じはしない……
ヒョンッ!
インテリが鋭い突きを繰り出して来た!!
それが速い!!
私はそれを辛うじてかわす!!
なんて速さだ!?
姿勢も型もなっていないのにあのスピードとは!?
ギンッ!!キュッイーン!!
インテリは私に連続で攻撃を仕掛けてくる!!
インテリはまだ本気を出していないというのに私は防戦一方だ。
私がインテリの攻撃を一生懸命受けていると、奴は不思議そうな顔をして私から一度距離を取った!
「……」
そして何か言いたげな顔でこちらを見ている。
インテリの言いたい事は分かる。
「あなた、まだオーバー・ヒートを発動していませんね?」
私はインテリの問いに答えた。
「その能力はオーバー・ヒートと言うのか?覚えておく」
インテリは私の言葉を不思議そうに聞いている。
「……まさか、オーバー・ヒートの使い方も知らない?」
インテリは私をゲームのヘルプも読まないそそっかしい人間だと思ったようだ。
そんな訳は無い。いざ戦い(ゲーム)を始めようとする者がルールを覚えない訳がなかろう。
「出そうじゃ無いか。私の特殊能力を」
私は言う。
インテリは私がその「オーバー・ヒート」とやらを発動すると思ったのか、表情を引き締めた。
そんなプログラムの操作で自分の能力を高める事に何の意味がある?
私の能力はそんなものを無意味にする能力だ。
私は言う。
「インバリッド……発動」
インテリはすぐに異変を感じ取ったのか、私と大きく距離をあけて自分のスマホを取り出す仕草をした。
おそらく、自分のステータスを確認するのだろう。
そして、インテリは驚愕した表情で言う。
「まさか……信じられ無い。そんな馬鹿な……」
ふ、ふ、ふ。「オーバー・ヒート」だか何だか知らないが、そんなものに頼るからだ。
私の特殊能力は「オール・インバリッド」。周りの全ての特殊能力を無効にしてしまう能力だ。