801作戦発動
やばい!やばい!!
ベルン君が私の事、すっごい変な目で見てる!!
やっぱり、「男の子が、男の子を好きなのをどう思いますか?」と聞いたのはまずかったか!?
「ヤオラ、まさか?君……」
ベルン君が青い顔をして、私から少し遠ざかる。
いやぁっー!!勘違いされた!?私が同性愛者だと思われた!?
いや、私、女だし!!いやいや、今は男か!!いや、違う!元から男は好きじゃ無い!!
「ち、違う!!自分の話じゃ無くて!!な、仲間の話です!!」
「仲間?」
「そう、仲間です」
「……もしかして君の捜しているリンて言う人?」
ベルン君はまだ私を疑いの眼差しで見ている。
仕方ない。
「そう。リンがそっちの方面の子で……」
許せ、凜。この場を言い逃れるにはこれしか方法は無い。ちなみに凜には全くそっち方面の嗜好は無い。完全な濡れ衣だ。
「……」
「いや、そういうのって本当に気持ち悪いですよね!」
「そ、そうだね……」
とほほ、全然気持ち悪く無いと思うけどな……
「いや、ベルンさんは凄い可愛い……いやカッコイイから、そういうのに悩まされていないかなと思って……」
「……やめて下さい。変な事を言うのは……」
ベルンさんはさも嫌そうだ。つまり悩まされているのか?そりゃそうでしょ!!
こんなに可愛いんだもん。女装しなくても女の子じゃないか!?なんとかコスプレサミットとかに出場したらコスプレしなくても優勝してしまいそうだ。
本人は毛嫌いしているけど、これは脈アリだな。好きな男性が現れれば、イッキにイケる!!
私のよく読むマンガではそうだ!!嫌だ嫌だと言っていても最後には……
私はついついベルン君の顔に見とれてしまう!!
これこそ最高の2.5次元!!
この可愛いお顔で「あ、ダメ……ダメです。ボ、ボク、い、嫌です」なんて言った日にゃぁー、うひょー!!
ヨダレが出るぜ!!
君は受け決定!!
さて、そうなると攻めはあの人しかいないわよね。私はベルン君とバイバイをして、ジークさんを探す。
これより私は801作戦に入る!!
私が捜していると、ジークさんは船の船首に立ち、風に吹かれていた。
……なかなか、カッコイイ!
彼はベルン君の様な目を見張る程の絶世の美男子では無いが、じゅうぶんカッコイイ。
ジークさんと、ベルン君が……もし……たまらん!!想像しただけでヨダレが出るぜ!
彼と内緒の話をしたいのだけど、隣にはいつもの如く、ブッブゥッーなブルグンさんがいた。
もう!!絵面が悪いわ!海に落ちてアンコウにでもなってどっかに行ってくれないかしら!
彼と二人きりで話が出来ないじゃないの!!
私が二人の周りをウロチョロしていると……
「なんだ?ヤオラ。なんか用か?」
ブルグンさんが私に言ってくる。あんたにゃ用は無い。黙っていてもらおう。
「いえ……別に……」
私は仕方なく答える。
「用が無いなら、邪魔だ。あっちに行ってろ」
くっそー、不細工のくせに態度だけはでかい。私の801作戦を邪魔するつもりなの?
「いや、ジークさんにちょっと聞きたい事があって……」
早く結果を出したい私は無我夢中で聞く。
「えっ、何?」
ジークさんは優しい笑顔で私の言葉に返事をしてくれる。
ブッブゥッールグンの邪魔に合い、逆境の中、私にはその笑顔が身に染みた。
現実世界でもヤオラーと言うのは、案外肩身が狭い。
周りにはあまり言えない趣味だ。仲良しの凜だけには言える。理解してくれようと努力してくれるからだ。
しかし、学校の友達には言えない。そんな事を言おうものなら、どんな白い眼で見られるか分からないからだ。
しかし、良いじゃないの?花が好きな人が花を愛でるように、綺麗な男の子同士の友情以上のそういう結びつきが好きなんだから!!
「ヤオラ?何?俺に聞きたい事って」
よし、遠回しにズバリと聞くぞ。
「……あの……えっと……ジークさんは……」
「ジークさんは?」
ジークさんは優しく相づちを打ってくれる。
「……ベルン君をどう思いますか?」
よし!聞いた!!
「えっ!?ベルン?頼りになる奴だよね。もう、あそこまで強いと反則だよ」
ジークさんは笑顔で答える。
「……」
「……」
「……それだけ?」
「えっ、うん」
もっと!!もっと何か無いの!?
好きだとか!アイツの事を考えると夜も眠れないとか!!無茶苦茶にしたいとか!!
「……なんか?おかしかった?」
私が失望しているので、ジークさんは心配そうに聞いてくる。
「……いえ、別に」
駄目だわ。どっちにもその気が無い。
……ドンッと芽生えないかしら?
私が愛読している本だと、だいたい片方は完全にそっち系で、もう片方は引きずり込まれるパターンが多いけど……でも、たまに二人共が気づいちゃったパターンと言うものもある。
この二人は気づかないかなぁ……