俺の名はブルグン
ハンサムさんは、超美形な男の子と一緒に恐いお兄さんを攻撃する!!
ギチィッ!!ガッツィーン!!
超美形な男の子はもの凄いスピードだわ!
「くうっ!!」
さすがに恐いお兄さんも苦い顔で舌打ちをしてる!
「やばい!!ジークさん!ロイトの子分達がまだいました。近くで待機してたようです。突撃してきます!!」
焦った声で、おデブさんがハンサムさんに報告する!!
「構わん!!そちらはそちらで食い止めろ!!」
「いや、構わんじゃ無くて……凄い数です」
私が周りを見ると、ところどころから、恐いお兄さんの仲間と思われる人達が集まって来てる。みんなで私の事を探していたのかしら?
おデブなオジさんの仲間が戦っているけど、どうも恐いお兄さんの仲間の方が数が多い。
ギンッ!!キュッイーン!!
「ベルン!ブルグン達を助けてやれ!!」
「はいっ!!」
美形君はハンサムさんから離れて、おデブさん達の方に向かって行く。
「かはっ!一対一で俺に勝てると思っているのか?」
恐いお兄さんがハンサムさんに言う。
「一対一で勝つ必要は無いさ。要は全体で勝てばいい」
私が見ると、超美形な男の子はもの凄い勢いで、恐いお兄さんの仲間を倒して行く。
おデブなオジさんも強そうだけど、こちらは仲間に号令をかけて、超美形な男の子を援護しているみたい。
美形君が凄くかっこいいわ!超美形だし、超美形だし、超美形だわ!!
超美形君の勢いは止まりそうにない。
その様子を見て、恐いお兄さんは舌打ちをする。
「もっと仲間を連れてこりゃ良かったか……一度、引くぞ!!お前ら!!」
恐いお兄さんは大声で叫ぶ!!
ガッツィーン!!
そしてハンサムさんに力強い攻撃をすると、大きく後ろに下がった!!
「お前が不死身の海賊ジークか!?覚えておくぞ!!」
恐いお兄さんは歯ぎしりをしながら、凄む!!
「ちっがーう!!オラァ、デブッチョ海賊ブルグンやて言うてるでねえかぁ!?」
「ひどい!!ジークさん!!」
どうも、あのおデブなオジさんがブルグンと言う名前なのね。
恐いお兄さんとその仲間たちが逃げて行く。
「ブルグン!行かせてやれ!!逃げる者は追うな」
ハンサムさんのこの言葉で恐いお兄さんの仲間たちは逃げやすくなったのか、どんどん姿をくらましていく。
「……」
ハンサムさんと超美形な男の子と、おデブなオジさんは、逃げて行く恐いお兄さんと、その仲間たちを見ていた。
そしてしばらくして、ハンサムさんがこちらにやって来る!!
きゃー!
助けてもらっちゃった。
「お前、仲間は?」
ハンサムさんが私に聞く。
「ふ、船が沈んで仲間とはぐれちゃったの……」
「何ぃ?このゲームは船まで沈む事があるのか!?」
このハンサムさん、今「このゲーム」って言った。やっぱりプレイヤーさんなんだ。
じゃあ、このハンサムな見た目も信用出来ないのね……
「お前、プレイヤーがプレイヤーに勝つとボーナスみたいなのがあるって知ってるか?」
確か、凜がそんなような事を言ってたような……
「だから気を付けた方がいいぞ……」
ハンサムさんは心配そうに言う。
「お前が倒したパウル・ハウゼンというのが、初心者プレイヤーに絶対発生するイベントなんだと」
私は真剣にハンサムさんの話を聞く。
「だから、パウルが現れて誰かにやられると、さっきのロイトみたいな奴が新人プレイヤーを狙いに来るんだよ」
へー、そうなの?危なかったわ。私、いきなり狙われてしまったのね。
「ジークさんは、私を狙いに来た人じゃ無いんですか?」
「……俺は違うよ」
じゃあ偶然ここにいた人?それにしては、始めに恐いお兄さんに絡まれていたオジさん二人は一生懸命、パウルの噂をしてたけど……
そのオジさん二人は、おデブのブルグンさんの後ろに立っている。つまり仲間だったのよね?この人達。
「俺は、新人プレイヤーを狙いに来たプレイヤーを狙ってるんだよ」
私が詳しく聞くとハンサムさんは言う。
いつもこんな事をしてる訳では無いけど、航海の途中でパウルの噂を聞きつけたら、このように新人プレイヤーを助けて、狙いに来たプレイヤーをやっつけていると言う。
理由は、自分が新人プレイヤーの時に手痛い目にあったからだとか。
「じゃあ、お前も気を付けろよ。このゲームはそんなに甘く無いぞ」
ハンサムさんはそう言うと私の目の前から立ち去ろうとする。
え、え、えっ?
気を付けろと言われてもどうすればいいの?
「待って!ジークさん」
私は勇気を振り絞って言う!
「私を凜の所まで連れて行ってもらえませんか?」
ジークさんは、私の言葉にびっくりはしたようだが、特に嫌な顔はしなかった。
「リン?お前の仲間はリンと言う名前なのか?」
「そうです」
「ふーん、別にいいよ。船が難破して仲間とはぐれたんじゃ大変だろう。またロイトみたいな奴が来ても嫌だしな」
やったー。ジークさん、優しい!!あの超美形な男の子もいるし、これは期待出来る航海になるかも……
「ブルグン!」
「はいはい」
「リンていうのはどこにいるんだ?」
「ええっ!?」
ブルグンさんはびっくりして叫ぶ。
「ジークさん、俺が知ってる訳無いじゃ無いですか?」
「そこをなんとか……」
「ならないです!!」
「じゃあ、どうすんだよ!?こいつ……」
そこまで言った所でジークさんは言葉を止める。そして私を見て聞く。
「そういや、お前。名前は?」
名前、名前かぁ……勢いで決めちゃったけど、名前からバレないよね。
「ヤオラです」
「そうかヤオラって言うのか」
名前を聞くと、ジークさんはまたブルグンさんを見て言う。
「じゃあ、ヤオラをどうするんだよ。かわいそうじゃねえか」
ブルグンさんがこちらをジトッとした目で見てくる。
「ヤオラ、おめぇ、どの辺を航海中に船が遭難したんだ?」
「へっ?」
海の上でしょ?どの辺?太平洋とか大西洋とか?そういう話?
私が困った顔をしていると、ブルグンさんはもっと困った顔でジークさんを見て言った。
「ダメです。何も分かりません」
二人は頭を悩ませる。
「……一緒に近くに流れついてるんじゃねえか?」
ポンッ!!
ジークさんが言い、ブルグンさんが確かにとばかりに手を叩く。
「近くを仲間に捜させましょう」
ジークさんはにこやかにこちらを見て言う。
「ヤオラ、お前の仲間はきっと探してやるからな」
なんていい人なの?この人はかなりの逸材だわ。
この、ジークさんとベルンさんが私の野望を叶えてくれると嬉しいんだけど……