表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊GAME  作者: niyuta
海上の略奪者
6/73

我はショーテルの使い手である

どうする?どうすればいい?


とてもでは無いが、こんな手足が不自由な状態では戦いにならない。


それになんだ?あの大量の剣は?


何回、俺のことを斬ろうの言うのだ?


俺が身構えていると、ブルグンが大声で言う。


「お前らー!命が惜しければ俺と一緒に戦え!!」


なんて馬鹿でかい声だ!


それに立場が逆じゃねえか!?


「我と共に戦え」は俺がさっき言った台詞だ!!


すると、ブルグンの背後から子分らしき海賊がゾロゾロと部屋に入って来る。


そしてなんと、俺たちの手錠の鍵を開け始めたでは無いか?


もちろん、足の拘束も一緒に解いてくれる。


これで俺も晴れて自由の身となる。


「お前たち変な気を起こすんじゃねえぞ!武器を持って甲板に出ろ!!」


部屋にいた男たちは不思議そうに顔を見合わせている。


そこに!!


ドッーン!!


「うぉっ!?」


いきなり凄い衝撃が俺たちを襲う!!それと爆発音だ!!


なんだ!?なんの音だ!?


「ちっ、もうそんな距離まで!?」


ブルグンはそう言うと慌てて部屋を出て行く!!


子分たちも慌ててブルグンを追いかけるが、部屋の中の男達はなかなか動こうとはしない!


そこへっ!!


ドッーゴーンッッ!!


またアラたな衝撃と爆発音がする!!


これはただ事では無い!!


部屋の中に取り残された男達も徐々に慌て始める。


そして男達は剣を取った!!今度は我れ先にと部屋を出ようとする!!


少し出遅れた俺は慌ててブルグンが大量の武器を放り投げた場所に行く!!


とにかく武器だ。俺も武器を確保しなくては話にならない!


くそっ!?


少し出遅れたのがいけなかった。もう良さそうな剣があまり残っていない!!残っている剣はボロボロのものばかりだ!!


しかし、残っている武器の中でも少しでも良いものを選ぼうとして、俺はしゃがみこんで武器の山を引っ掻き回す。隣ではムンクも真剣な表情で一本、一本武器を品定めしている。


俺には反則の「オーバー・ヒート」がある。後は武器だ!武器さえあればなんとかなる。少しでも良い武器を選んでやる。


いろいろ武器を選んでいる俺は思う。


「なんだ?みんな少し短いんじゃ無いか?もっとこう……」


俺は両手で剣を振るうポーズをする。ファンタジーには詳しく無いが、バスタード・ソード?とでも言うのか。なんかでっかい剣の方がかっこいいような気がする。


「やっぱ、お前、馬鹿だな。船の上の戦闘で武器と言えばカトラスに決まってるだろ!?」


自分の武器を品定めしていたムンクが、さも人を馬鹿にしたように言う。


「オーバー・ヒート」を発動したらブルグンを倒す前に、こいつをやっつけてやろうか!?と俺は内心思う。


「なんだ?カトラスって?」


俺のその言葉にムンクは目を丸くした。まだ言葉を話すはずの無い生まれたての赤ん坊が「天上天下唯我独尊!!」とでも言ったかのような驚きようだ。


いかんな。びっくりしすぎて説明もしてくれない。


「……なんですか?カトラスって?」


俺は少しへりくだりながら聞いてみる。


「この武器の事だろう。船の上で戦う者は、その戦場が狭い船倉などに移るかもしれない」


「ふん、ふん」


「だから長い得物エモノは御法度だ!常識だろう……」


ムンクは心底信じられないとの表情で俺の顔を見る。その瞳には憐れみさえ伺える。


クソゲーがっ!クソゲーがっ!クソゲーがっ!


ゲーム・バランス最悪のくせして、変な所でリアル追求すんなよっ!!


ほんとクソゲーだなっ!!


「うんっ?」


俺はボロボロの武器の山の中に一本だけ、黒く鮮やかに光る剣を見つけた!!


なんだ?まだ綺麗なのが残ってるじゃねえか?


俺は、柄の部分と言うのか?持ち手の部分を握る。かなりしっくりとくる!!


刃の部分はまだ剣の山の中に埋まったままだが、このガラクタの中には、もうこれ以上の剣は残っていないだろう。


俺はその怪しく光る美しい剣をガラクタの山から引き抜きながら言う!


「よし、俺はこれにしよう!!」


そう言って黒く光る美しい剣を引き抜いた。


……


…………


………………


……泣いていいだろうか?信じられない事が起きた。


俺の引き抜いた剣がなんと、綺麗に曲がっているのだ!!いや、少し曲線を描いているというレベルでは無い。


人為的にひん曲げたとしか思えないぐらいの凄い曲がりようだ。投げたらブーメランのように戻ってきそうである。


これは駄目だな……


俺が諦めて違う武器を探そうとすると……


「お前……まさか……」


ムンクが信じられないというような顔で俺を見ている


なんだ?どうした?俺のおっちょこちょいを笑うつもりか?


「ショ、ショーテル!ショーテルを使うのか!?」


なんだ?そのショーテルって?


遠くの方でもボソボソと聞こえる。


「……おい、アイツ、ショーテルを使うらしいぞ……」


「マ、マジか?まさかショーテルの使い手か?」


なんだ?この雰囲気は?また俺は置いてきぼりか!?


「そうだったんか?お前、ショーテルの使い手だったのか?道理で……」


おお、ムンクの俺を見る目が変わった。なんか知らんが良い事だ!


俺は言ってやる。


「そうだ!俺はショーテルの使い手である!!」


ショーテルが何かは知らんが。


「おおっ!」


少し歓声が上がる!


よしよし!掴みはOKだな。


という訳で、自分の武器を選ぼう。俺はひん曲がった不良品の剣を放り投げて、また剣の山を物色し始める。


「待てっ!待てっ!待てぃ!!」


んっ!?なんだ?ムンクが俺の襟首を掴む。


「なんだ?どうした?」


「それはこっちの台詞だ……お前、ショーテルを使い手じゃなかったんか!?」


ムンクは少しキレ気味に俺に言う。


めんどくさいなぁ!


「そうだ!俺はシューテルの使い手だ」


「シューテルじゃねぇ!ショ・ー・テ・ル・だ!」


「そうだ」


「だったら自分の得意な武器を使えばいいだろう!!」


ムンクはそう言うと、例のひん曲がった剣を押し付けてくる!


な、なんと!!この不良品がショーテルだったのか!?


ムンクは疑わしそうな顔で俺を見る。


「……」


こんなひん曲がった剣、まともに使えるのか?


「まさか、お前、嘘をついたのか?」


ムンクは俺に言う。


「……」


今さら知らなかったとも言えない。


俺には「オーバー・ヒート」もあるし、このひん曲がった剣でも何とかなるだろう。


「少し、お前をからかっただけだ。我は本当にショーテルの使い手である」


俺は試しにビュッ!ビュッ!っとこのひん曲がった剣を振ってみる!!


「逆だ、逆!」


んっ!


よく見ると刃が逆に付いているではないか!クルリと急角度の曲線を描く外側が刃なのかと思えば……違う、内側が鋭い刃なのだ!草を刈る鎌のようなイメージの剣だ。


ヒョンッ!!ヒョンッ!!


剣自体はしなやかだが、正直、上手に扱えそうには無い!!


いや、こんな特殊な剣をまともに扱える奴なんかいるのか?


そこで俺はピンッとくる!!


俺は懐からスマホを出す!!


メニュー画面から「スキル一覧」画面に行く……


あった!!あったぞ!!


片手剣の項目に……


「ショーテル」がある!!


試しにショーテルの説明を読む。

________________

【ショーテル】


ショーテルとはS字状に湾曲した剣身を持つ片手用の片刃の剣である。


※稀に両刃のものも存在する。


他の刀剣と比べてもかなり特殊な形状をしており切れ味は他と比べてかなり鋭い。


敵の盾をかわして攻撃出来るなど数多くの優位点があるが、一般的な刀剣とは重心位置が全く違うために非常に扱いにくい剣である。


鞘に収めることも出来ず普段は皮袋で囲んだ状態で腰に下げる等不便さもある。


反った内側の方を相手に向けて用い相手が盾を構えていても、それを飛び越えて鋭い切っ先で敵を攻撃出来る。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ふむふむ。上手く扱えれば、かなり優位な訳だな。


問題は…


俺はスマホの画面を「スキル一覧」に戻し、ゲーム開始時に割り振ったボーナスポイントを操作してみる……


最初、適当に割り振った各スキルの「10」ポイントを一旦全て「0」にする。


一度、割り振ったポイントを「0」に出来るという事は……


素晴らしい!!


俺は「ショーテル」のスキルに全てのポイントを割り振り「100」ポイントにした!!


そして「確定」ボタンをクリックする。


「!?」


なんだ!?この感覚は!!まるでこのひん曲がった剣が、自分の体の一部のような感覚に捉われる!!


ヒョンッ!ヒョンッ!ヒョンッ!!


この一体感は!?自分でも分かる!とんでもなく素晴らしい剣さばきだ!!


「お、お前……」


横で見ていたムンクが驚きの声を上げる!


それに対して俺はにこやかに言う。


「言っただろ。我は……ショーテルの使い手だって」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ