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海賊GAME  作者: niyuta
先行者優位
57/73

タイトルはクライマックス

「何が、残念だったんです?」


私はニコニコと笑いながらオーディに聞く。


これにはオーディも変な顔をする。


「……お前、馬鹿だろ!この状況が分からないのか?」


「この状況とは?」


私のこの質問にオーディはさらに目を丸くする。


「お前に勝ち目は無い!観念しろ!!」


「ヴェトラさん!!」


私は大声で呼ぶ!!


「は、はいっ!?」


いきなり、大声で自分の名前を呼ばれた音楽家ヴェトラは、びっくりした顔で返事をする。


ヴェトラにとっては、仲間に入った海賊が壊滅。そして一緒に仲間になったとオーディとトゥルルの裏切り、びっくりすることが目白押しだ。


青い顔をして様子を見ていたところで、私にいきなり名前を呼ばれたのだ。びっくりして当然だろう。


「曲を一曲お願いします」


「えっ、あ、はい」


ヴェトラは素直に返事をして、トランペットを構えた。


「タイトルはそうですね……クライマックス!そのような曲をお願いします」


ヴェトラは私の曖昧なリクエストに即興で曲を吹き出す!


いつ聴いても素晴らしい。自分が言うのもなんではあるが、海賊にさせるのがもったいない。


船上にはヴェトラの重厚感のあるトランペットの音が鳴り響く!!


トランペットという楽器がそうなのか?それともヴェトラの技術力なのか、彼の演奏は遠達性が高い。場所は海の上で広い船上だというのに、遠く離れたヴェトラの演奏がビリビリと私の全身に伝わる。


曲調は早く、いかにもクライマックスに相応しい軽快なリズムを刻んでいる。


「く、く、く。この曲のタイトルを俺が決めてやるよ」


オーディは楽しそうに言う。


「ほう」


この曲のタイトル?


「いいのを思い付いた」


オーディは、よほど良いタイトルを思い付いたのか、得意のしたり顏で言う。


「奇遇ですね。私もこの曲については良いタイトルを思いつきました」


「く、く、く。そうか」


「同時に思い付いたタイトルを言ってみますか?」


「そうだな。それは面白い」


オーディは、この自分が絶対的に有利だと思える状況で、私を小馬鹿にした表情で言う。


オーディのすぐ横にはトゥルルが剣を構えている。


「では、同時に言いましょう……この曲のタイトルは……」


私とオーディの二人が声を揃えて言う。


終焉シュウエン!」


素晴らしい。


私とオーディはこの曲に、同じタイトルを思い付いたようだ。


「はーははははっ」


オーディは笑う。


いったい、何がおかしいのか?


ちなみに終焉とは命が終わる事。つまり死ぬ事である。この【海賊GAME】の場合は、ゲーム・オーバーこそが終焉だろう。


「まさに、終焉!お前が迎えるものこそが終焉だ!!」


ヴェトラの曲が鳴り響く中、気持ちが高ぶるのかオーディは叫ぶ!!


「残念ですが、終焉を迎えるのはあなたです」


私の今の海賊力は「1」、オーディは「5」。よくも私の時間稼ぎに付き合ってくれたものだ。


「なんだと?俺たち二人に勝てるつもりか?」


オーディは笑いながら言う。


「勝てるつもりですが……」


私が言うとオーディはゲラゲラと笑いだした。


「お前一人で、俺たち二人に勝てる訳が無いだろう!?一対一でも俺に勝てないというのに」


「二対一ではないですよ」


私はニコニコしながら言う。


オーディは周りを見る。そして隅で縮こまっている新人を見て言う。


「あそこの半人前どもの事か?今さらあいつらがなんだ?」


「……」


「今さら、五人や十人、お前の仲間が増えたところで、状況は覆せないぞ」


「まあ、五人や十人では無理でしょうね」


「く、く、く」


「でも、百人だったらどうでしょうか?」


「なんだと?」


ちょうど良く、ヴェトラの演奏が鳴り響く!!


私は大声で言う!


「包囲!!」


すると、周りで倒れていた私の仲間達が立ち上がった!!


「な、な、な……」


オーディはびっくりした声をあげる。


立ち上がった仲間たちは凄い勢いでオーディとトゥルルを囲んだ!!


「しまっ……」


オーディは包囲網を抜けようとするが後の祭りだ。百人の人間に十重二十重に囲まれているのだ。突破の最中に背後を取られるに決まっている。


結局、オーディとトゥルルは私の仲間達に囲まれてしまう。


「さあ、今度こそ観念してもらいましょうか?オーディ君」


私は言う。


「……ど、どういう事だ?なぜみんな生きている?」


「言ったでしょう?奥の手は最後に出すものと」


「……」


「……これは自作自演です。元々、皆、私の仲間だったのですよ」

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