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海賊GAME  作者: niyuta
海上の略奪者
5/73

「オーバー・ヒート」発動!!

いったい、どうしたというのだ!?


あの慌てようはただごとでは無い。町を歩いていてライオン?いや、恐竜にでも遭遇したかのような驚きようであった。


しかし、俺としては助かった。あんな大男に剣で頭をカチ割られるところだったのだ。いくらこれがゲームの世界と分かっていても気持ちの良いものでは無い。


「お、おい?大丈夫か?お前……」


ムンクは心配そうに声をかけてくる。


「ああ、何があったか知らないが、助かった」


「馬鹿、ブルグンをあんなに怒らせたんだ。戻って来て殺されるに決まっているだろう」


確かにそうだ。このまま何事も無かったかのようにはならないだろう。


なんにしても忌々しいのはこの手錠だ。マンガやドラマに出てくるような洗練されたものとは違うゴツくて荒いつくりだ。


俺が、手錠から手首が抜けないかとむやみやたらに動かしていると上着のポケットに何か入っているのを見つける!!


これは……


これはあれでは無いか?


……俺のスマホだ。


……これ以上無いほどに気分台無しである!!


今、俺が着ている服はファンタジーのゲームに出てくる、村人Bが着ていそうな、なんの飾りも無い麻のボロキレのような服だ。


この服装のおかげで、いかにも海賊のいそうな……よくは知らないが中世のいつかに迷い込んだような感覚を覚える。


……なのに……なぜ、ここでスマホ!?


俺は猛烈にこのクソゲーに腹が立ってきた。


先ほどブルグンに頭をカチ割られる事を恐れた自分が……そこまでこのゲームにのめり込んだ自分が恥ずかしい!!


俺はとにかくスマホの画面を見る。

________________


PLAYING……


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


と表示されている。プレイ中という事か?


俺が試しに画面を操作してみると……


画面が変わった。メニュー画面のようなものが出たのですぐに「HELP」を開く。


俺が知りたいのはアレだ!!あのゲーム・バランス最悪の裏技!その名も「オーバー・ヒート」。


ステータスが全てMAXになるという、人を馬鹿にした特殊技能だ!


それを使ってあのデブ海賊をぶっ飛ばしてやる!!


俺は特殊技能「オーバー・ヒート」の使用方法を読む。


なになに?「オーバー・ヒート」を使用するにはかけ声が必要です。


かけ声を設定して下さい。だと!?


勝手にこちらで決めて良いのか?


どうする?どんなかけ声がいい?注意書きを読むと「かけ声は何度でも変更可能です」と書いてある。


う~ん、悩んでいても仕方が無い!!技の名前が「オーバー・ヒート」なのだ。かけ声も「オーバー・ヒート」で良いだろう。


「HELP」には……技を使うには、かけ声の後に「発動」と付け加えて下さいと書いてある。


俺の場合は、「オーバー・ヒート発動」と言う事でこの反則技を使えるようになる訳だな。


これで万全と思い、俺がスマホをしまおうとしたところ、気になる注意書きが「HELP」には書いてあった。


「オーバー・ヒート」発動中は「海賊力」が減っていきます。「海賊力」が「0」になると「オーバー・ヒート」は使用出来ません。


そうか、「海賊力」とは魔法が使えるファンタジー・ゲームの場合の、マジック・ポイントのような役割をする訳だな。つまり、その「海賊力」とやらが無くならないように気をつけないといけないのだ。


そうなるとどうしても気になるのが「海賊力」の回復方法だが、これは時間と共に回復すると書いてある。


後は、ゲーム内通貨で一気に回復させる事も可能と書いてあるが、俺はスマホゲームなんぞに課金はしないので関係は無い。


「おい、お前、さっきから何をやってるんだ?」


おっ?ムンクが心配そうに話しかけてくる。


「いや、ちょっとスマホでヘルプを見てたんだ」


俺はムンクの目の前で自分のスマホをプラプラと振る。


するとムンクは不思議そうに言う。


「な、何?なんかあるのか?」


ん?ムンクの目の焦点があっていない。スマホが見えていないのか?


「なんだ?これが見えないのか?」


ムンクは不思議そうに俺の顔を見る。


そうか。見えないのか。ゲーム内のキャラクターには俺のスマホは見えないようだな。


「いや、何でも無い。気にしないでくれ」


俺はニヤニヤして言う。


「ムンク。お前に俺の本気を見せてやるよ」


「な、なんだ?本気って?」


「まあ、見てろ。こんな手錠なんてクソ食らえだ!」


俺はそう言うと気合いを入れる!


「ど、どうするつもりだ?ま、まさか……」


ムンクは驚いた表情で言う。


そして俺はムンクに聞こえないように小声で唱えた。


「……オーバー・ヒート発動」


俺の体内に何かが溢れる!なんだ?この感覚は?力がみなぎる!!


俺は気合いを入れた!


「おりゃっー!!」


この!!クソ忌々しい手錠を!!ぶち壊して!!やっ!!るっっー!!


ミシッ!!ミシッッ!!ミシシッッ!!!!


「おいっ!?」


ムンクが驚いた声をあげた!!


俺の手首を拘束している頑丈な手錠が大きな音をたててキシむっ!!


ミシッ!!ミシシッッ!!!!


きしむっ!!


ミシシッッ!!


きしむっー!!


ミシシッッ!ミシッ……


きしむっ……が……壊れない……


……なんて頑丈な手錠なんだ?


「ふうー」


俺は一度力を抜いた。駄目だ、どんなに力を入れても壊れない。


「……おい?壊そうとしたのか?」


ムンクが俺に聞く。


やめてくれー!!恥ずかしい!!俺は自分の顔が真っ赤になるのを感じる!顔が熱い!!ひぃー!!


「おい?お前、今この手錠を素手で壊そうとしたのか?」


「ちがっ、違う!!だ、断じて違う!!」


俺は慌てて言う!


「だって、お前、今、格好つけて『俺の本気を見せてやるよ』って……」


「や、やめてくれー!!頼む」


ああっ!!このクソゲーがっ!クソゲーがっ!!クソゲーがっっ!!!


なんだよ!?この頑丈な手錠は?これこそ反則だろ!!この状態でさっきのブルグンが戻って来たら「オーバー・ヒート」を使おうがどうしようが勝てやしないだろうがっ!?


どっちみちゲーム・オーバーじゃねえか!?


そうだ!いかん!!


俺はある事に気付く!!


海賊力!?


俺は慌ててスマホの画面を見る!


すぐにメニュー画面から自分のステータスを見た。

________________

【ステータス】

Lv : 1

HP :60

STR :60

VIT : 60

INT : 60

AGI :60

LUK :60

PIR : 8

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

やばい!海賊力が減ってる?確か最初は「10」だったはずだ!


たったこれだけの時間で「2」も減ってる。


俺は慌てて「HELP」で「オーバー・ヒート」の停止方法を探す。


停止、停止と。なんだ?かけ声の後に「停止」と唱える?


「オーバー・ヒート停止」


自分の身体から、みなぎっていたパワーが抜けていくのが分かる。


俺はすぐにスマホでステータス画面を見る。

________________

【ステータス】

Lv : 1

HP :17

STR :23

VIT :18

INT :27

AGI :15

LUK :12

PIR : 8

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

戻った……


海賊力は「8」のままだ……


ステータスがMAXになる技なのに、なんで「60」なんだ?


普通、MAXは「99」か「100」だろう?なんだ?「60」って?


イライラしている俺はこんなどうでも良い事にまで腹が立つ!!


ムンクは俺を少し憐れむような目で見ている。


……もう、ゲーム・オーバーでいいよ。ゲーム・オーバーで。


俺がそう思っていると俺たちを閉じ込めている部屋の扉が大きな音をたてて開いた!!


そしてそこには武器をたくさん抱えたブルグンが立っていた……


俺としては思う。出来るだけ穏便にゲーム・オーバーしたいと。

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