栄光を掴む為の
ガッチィーン!!
私は大振りの一撃をパウルにお見舞いする!!
親父は大きなカトラスを構えて、それを受けた。
この一撃で分かる。かなりのパワーの持ち主だ!!
パウルは巨大な体躯の持ち主である。見るからに力がありそうだ!!
反面、素早さは低そうである!!
私はドタドタとパウルの周りで素早く動いて、右から左から攻撃を仕掛ける!!
ギンッッ!!ズシュッ!!
やはり素早い攻撃には対応出来ていない。
しかし、大きな傷を付けられる程はスピードに差は無さそうだ!
ギンッッ!!キュイッーン!!
たまにかすり傷程度は与えられるが、パウルはそれをものともしない。
これはパウルの「生命力(VIT)」が高い証拠だろう。
どんなに【海賊GAME】の「HELP」を読んでも、ステータスの役割について細かくは書いていなかった。推測にとどまるが「生命力(VIT)」はキャラクターのタフさに関係があると思われる。
つまり「生命力(VIT)」が高ければ、少々の怪我ではこたえないのでは無いだろうか?そして疲れにくい?
キンッ!!キュイッーン!!
これは長期戦になるのか?
こちらは「海賊力」が切れれば終わりなのだ。長期戦はまずい。
何か弱点があるかもしれないと思い、私は色々な方法でパウルを攻撃する。
キンッ!!キュイッーン!!キュイッーン!!
手を替え品を替え、上から左右からとパウルを攻撃する!!
しかし、堅固な城でも攻撃をしているかのように奴の弱点は見つからない。
「オーバー・ヒート」発動時の私と親父の力は拮抗していると思えるが、親父は余裕の表情を浮かべている。
理由は分かる。奴は奥の手を隠しているからだ……
こちらは完全に不利である。私のこの高い能力は「オーバー・ヒート」発動時の限定だ。「海賊力」が切れれば、とてもこの親父に太刀打ちは出来ないだろう。
その上、親父は奥の手を隠しているのだ。
……しかし、奥の手を隠しているのはそちらだけでは無い。
延々と私はパウルを攻撃するが、もちろん、致命傷は与えられない。
スマホの画面を確認しなくても分かる。私の感覚では私の海賊力は残り「3」程しか残っていないだろう。検証の時に減るスピードの感覚を掴んでおいたのだ。
打開策も見つからないまま、私はパウルを延々と攻撃し続ける。
んっ?
親父のスピードが落ちているような気がする?力も最初よりは弱いように思う。
……そういうことか?
親父に疲労が蓄積しているのだ。
「海賊力」が残っている間しか「オーバー・ヒート」が使えない、こちらの方が不利ではあるが、逆にこちらは「海賊力」が残っている間は疲労は感じない。
おそらく、疲労は「体力(HP)」と「生命力(VIT)」の両方のステータスと関係があると思われる。
しかし「オーバー・ヒート」発動中はその両方が延々とMAXなのだ。
残りの私の「海賊力」は「2」か「3」程度。
……勝負をかけるなら今しか無い!!
私は、パウルに力強い一撃を与えて、大きく後ろに飛び退く!!
おそらく、かなりの疲労を感じていたパウルは、私が一度距離を取って内心で喜んでいるはずだ。
「パウル!観念しろ!!お前に勝ち目は無いぞ!!」
ハッタリである。しかし、かなり疲労しているはずのパウルには、これが真実に聞こえるかもしれない。向こうから見れば私は全く疲れていないように見えるからだ。
「あの正々堂々と戦った勇気ある少年を、銃で撃ったことは許しがたい!しかし罪を悔いれば命だけは助けてやる!」
「……」
私としては早くパウルに行動して欲しい。私はこの間も「オーバー・ヒート」を解除せずに「海賊力」を消費しているのだ。なぜ「オーバー・ヒート」を解除しないのか?
それはパウルが奥の手を使ってきた時に対処する為だ。
「どうだ自分の卑怯さを悔いる気になったか?」
「……」
もちろん、パウルは滂沱の涙を流しながら天を仰ぎ見て、悔い改めたりはしない。
「……」
私としては、いったい何をしているのだ?お膳立ては整っている!早くしろと言いたい。
私は、パウルが少年を撃ったことをひどく憤っている風を装って言う。
「正々堂々の言葉の意味も分からないか!この外道め!!」
パウルとしては私のような青二才にそこまで言われてかなり頭にきた様子だ。
すると次の行動は読める!!
パウルはポケットにしまってある銃を握った!!
威嚇の為だろうが、パウルは服の上に見えるように銃をさしている。それが六挺である。そして今まで撃った弾が五発だ。
おそらく一発は私の息の根を止める為に取っておいたのだろう。
パウルは私に銃を向ける!!
「がははっ!!うるさいぞ!青二才。何が正々堂々だ。この世は強い者が勝つ!!ただそれだけだ!」
そしてパウルは銃の引き金を引こうとする!!
しかし、それよりも速く私は自分の銃を構えた。
この銃は……航海に出る時に、不安そうに見えた私にエッダリがくれた銃だ。
私はその時の言葉を思い出す。
「これから一緒に栄光を掴む……仲間じゃねえか……」
奴の握る銃は仲間を脅して、いう事を聞かせ、敵を威嚇する為の銃。
そして私の銃は……仲間を心配して、守る……そして一緒に栄光を掴む為の銃だ!!!!
ドッウンッ!!!!
ドゥッッン!!!!
二つの銃が火を吹いた!!