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海賊GAME  作者: niyuta
荒くれ者の集まり
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花火は上がらない

私は甲板の上に集まった武器を見て驚く。


意外に武器が豊富なのだ。


なんだ?この多種多様な武器は?


それに銃が多い。いったい何梃あるのだ?


私達は五十人ほどしかいない。


それなのに銃が二十挺はある。こんなものに金を費やすなら、もっと良い船を買え。


「皆さん、まず一人一本ずつ武器を持って下さい」


私は言う。こんな落ちこぼれ共と一緒に海賊になるのはいいが、どっかの民間船にでも乗り込んで返り討ちに合ってはかなわない。


皆の剣の腕を確認しておかなければ……


私も自分の武器を選ぼう。


見ると短めの曲刀が多い。初めて実物を見るが、これが海賊が好んで使うというカトラスというやつか?


かなり無骨な感じがする……私の趣味では無いな。


うん?


ひときわ綺麗な曲線を描いている洗練された武器があった。他のカトラスとは一味違う。かなり細身だ。


「これは?」


私はそれを握って聞く。


「それはシャムシールだよ」


シャムシール!?これがシャムシールか?


私が以前、好きで読んでいた海賊小説の主人公が使っていた武器だ。


その小説では、たまたま武器が描かれた挿絵が無かったので、頭の中で空想しか出来なかったが……こんな形だったのか?


少し感動だ。


「では、私はこれを武器にします」


私はそう言うと、一人ずつ順番にかかってくるように言った。


もちろん、自分のシャムシールのスキルを「100」ポイントにしてからだ。


果たして、この落ちこぼれ達の剣の腕はいかようか?


しかし、私はそのあたりについてはあまり心配をしていなかった。


陸の上では食うにあぶれた、ろくでなし達かもしれないが、そういう者は基本的に腕っ節が強い。だから海賊になるのだ……


……という私の期待は見事に打ち破られた。


彼らは皆、剣の腕も最低だった……


……もうこれは駄目かもしれない。


一人一人に問いただしたい。


「なぜ、あなた達は海賊になろうと思ったのですか?」


「なぜって……なぁ」


皆、お互いの顔を見て、それは決まっているとばかりにアイ・コンタクトをしている。


いらない。むさいおっさん同士のアイ・コンタクトなぞ。


「なぜです?」


私はもう一度聞いた。


「ワシら、陸の上での生活ではなんもうまくいかんかったんよ」


それはそうだろうとも……


「じゃから、海賊になって一発当てたるんよ。そして稼いだお金で陸に戻って、やり直したいんよ」


私は思う。海賊行為で略奪した金品は稼ぎでは無い。稼ぐとは働く事をいうのだ。


「俺らさすがに海賊で成功は難しいと思ったが、カナエがいてくれれば出来そうな気がする」


いきなり他力本願だ。しかし彼らは私を尊敬にも似た眼差しで見てくる。


先ほども「お前は剣の腕も凄いのか!」とびっくりしていた。


この目は……カナエならどうにかしてくれる。そう、パパはスーパーマンだとでも言わんばかりの目だ。


まだ、二歳半の我が子がよく私をこんな目で見てくる。


会社では馬鹿にされ、家でも妻にはろくでなしのような扱いを受ける私を……湊だけは、私が凄い人間のように見てくるのだ。正直、その眼差しを見ていると泣きそうになってしまう時がある。


「分かりました。一緒に頑張りましょう」


私は言う。


聞くとここにいる、ほとんどの者は海賊は一回こっきりにするつもりのようだ。海賊行為で略奪した金品を持って、陸での生活を立て直す事が目的の者が多い。


私は皆に獲物の船に乗り込んだ時の戦術を授けた。


こんな剣の腕前では、闇雲に突撃しても……相手がただの民間船だったとしても太刀打ち出来ないかもしれない。全く武器で武装をしていない民間船もないだろう。


しかし、やってやる!


やってやろうじゃないか、一回だけの海賊を!


使い古された言葉で使いたくは無いが……


打ち上げてやろうじゃないか!落ちこぼれの俺たちの花火を!


しかし……花火が打ち上がる事は無いかもしれない。


次なる悲劇が私達を襲う。


とうとう、食料が切れたのだ。


何てことだ!


私は甲板長のエールを呼ぶ。


エールという名の彼は、この落ちこぼれ集団の中の、唯一の航海経験者で料理人だ。


これも私が勝手に彼を甲板長に任命したのだ。


私もよくは知らないが確か、海を渡る船には甲板長という役職があって、それは船の上での物資の管理係だそうだ。


私達の船で料理を作るのが彼なのだから、食料も含めて彼に管理を任せれば良いと私は考えたのだった。


因みに釣り名人のスノラを航海長に任命したが、航海長は案外重要な役割であったりする。その船の航海に関することを取り仕切る役職なのだ。


そして、あの口うるさいエッダリは操舵手にした。


操舵手はその船の心臓とも言える、舵を預かる者である。


うーん、例えるのは難しいがサッカーで例えるなら、甲板長はゴールを預かるキーパーで、操舵手はワントップのフォワード、そして航海長がミッド・フィルダー(M・F)兼、司令塔だ。


そして、もしこの船に船長がいれば、船長がチームの監督と言える。


私はやって来た甲板長エールに聞く。


「もう食料が無いと言うのは本当ですか?」


「はい。もうほとんどありません。あるのは堅パンと大量のラム酒だけです」


なぜ、武器は豊富に積んでいるのに、食料がそんなに少ないのだ?


「最悪な事に水が腐り始めました」


水が?それは一大事では無いか?


因みにエールは私のゲーム内の設定年齢よりもさらに若い。おっさんばかりのこの集団の中では一番若いのでは無いだろうか?


「普通であれば、水の補給に近くの港に立ち寄るのですが、この前までは自分達がどこにいるのかも分かりませんでしたので……」


そうか、そういう事か。通常は航海長が航海のルートや日程を決める。


良い航海長の条件が、水の補給場所や船の最適ルートをよく知っていて、無理のない航海日程を組める事である。しかし、素人の集まりの私達にはそんな事は出来ない。


私のスキル能力を持ってしてもそこまでは分からない。港の場所や潮の特徴……それは経験により得るものだからだろう。


しかし、スノラはよく勉強をしている。今は、緯度も分かるし、操船の指示も出せる。


「今なら大体の場所が分かります。海図を頼りに近くの港を探しましょう」


私はエールに言った。

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