GAME OVER
俺の身体の中から力がみなぎってくる!!
しかし出血がひどい。今、発動した「オーバー・ヒート」が解除されたら俺は確実にゲーム・オーバーだろう。
しかし、そんな事は関係無い!カナエめ!今に見てろ!!
カナエが「オーバー・ヒート」を解除したということは、完全に気を抜いている証拠だ。
俺の「海賊力」の残りはほとんど無い。勝負は一瞬!!
俺は呼吸を整える……
カナエは甲板に倒れている俺を見て何事か考え事をしているようだ。
まずいな……さすがに見られている状態では隙を突けない……
俺も、自分の「オーバー・ヒート」がいつ終わりになるかは分からないので、ヒヤヒヤだ……
もう、駄目かもしれない……
一か八か、カナエがこちらを向いていても無理矢理飛び込んで行くか?
「……どうにか羅針盤を取り上げる方法は無いんだろうか?」
カナエはボソボソと言う。
「このままゲーム・オーバーになってもらっても困るな」
羅針盤?なんだったか、それは?どこかで見た覚えがあるが……
俺が考えていると……
千載一遇のチャンスが来たっ!!
カナエが自分のスマホを見る動作をしたのだ!!
今、奴は確実にスマホの画面を見ている!!
……今だ!!
行けぇっ!!
俺は床を蹴った!!
そしてすぐそばに落ちていた自分のショーテルを握る!!
カナエが慌てた様子で俺を見た!!
俺はショーテルを握ってカナエに向かう!!
奴はまだシャムシールを下にさげたままだ!!
俺はショーテルをカナエに向かって下から突き上げる!!
シャムシールを構えながら、カナエが叫ぶ!!
「ラム酒をいっぱ……」
遅い!!!!
ザシュッ!!
俺のショーテルがカナエの脇腹を貫いた!!
「ぐぅっ!!」
よしっ!!やったぞ!!
俺はカナエの脇腹に刺さったショーテルを抜く!!
奴の腹から勢いよく血が噴き出した!!
「ラム酒を……一杯……発動」
カナエはどうにか「オーバー・ヒート」を発動したようだ……
という事は、MAXパワーで攻撃をしてくる!!
離れて距離を取らなければ……
しかし、思うように動けない……
……本当に「海賊力」が切れたようだ。
「……なぜ?」
カナエは俺に聞く。俺の「海賊力」が切れた事を察知して、攻撃はしてこないようだ。
なぜ?と聞いてきたのはおそらく、なぜ俺が「オーバー・ヒート」が使えたのか?と聞きたいのだろう。
へ、へ、へ。意識が遠のいてきた。
「俺の海賊力は……切れてなかった」
「……」
「さっきは、お前を騙すために……ワザとオーバー・ヒートを解除したのだ」
これは嘘だ。
本当はさっきカナエに斜め斬りにされて大怪我を負わされた時、そのあまりの痛みに、ゲーム・オーバーになりたくて、自分から解除したのだ。
しかし「体力(HP)」が残っていたようでゲーム・オーバーにはならなかった。
そして俺は甲板の上で動けなくなってしまったのだ。
それを見てカナエは勝手に俺の「海賊力」が切れたと勘違いしてくれた。
しかし、「オーバー・ヒート」は自分で解除したので「海賊力」は残っていたのだった。
それを使ってカナエに一矢報いたのだ。
俺はカナエにもたれ掛かりながら床に両膝をついた。
そして静かに甲板に倒れる……
俺の手に握られているスマホの画面にはこう表示されていた…………
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GAME OVER……
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