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海賊GAME  作者: niyuta
海賊の生活
36/73

別の一手

俺はどうにか身体が動かないものかとジタバタするが、何ともならない!!いも虫程度に動けるだけだ。


そんな俺の無様な姿を見て、カナエの子分達は笑っている。


ベルンだけは泣きそうな目でこちらを見ているが、膝をつかされて、両方の腕を背後から二人の人間に締め上げられているので、少しも動く事が出来ない!!


「……カナエさん、仲間にはなりますが……その……俺がジークさんをやらなきゃ駄目ですか!?」


ブルグンが弱々しい声でカナエに聞いた。


俺の目の前にはブルグンとベルンがいるが、周りは全てカナエの子分である!!それが三十人はいる!!


最後まで抵抗したのがいけなかった。こちらの仲間はズタボロの状態で遠く離れた所にひとかたまりにされている。そしてその周りを多くのカナエの子分が囲んでいるのだ。


そちらはトゥルルが見張っているので、反撃の余地は無いだろう。


「何を言っているんです?ブルグンさん。あなたの噂は聞いていますよ……」


「はぁ……」


「……それなりに悪い噂もね」


そうだ。ブルグンは卑怯な手でベルンを倒そうとして、ベルンがそれに文句を言ったら、ベルンの事を世の中を知らない奴と罵った。


そういう意味ではブルグンは、ズルさを知っている。


自分が生き残る為なら、死にそうな俺など、すぐに始末出来そうだ……


「どちらにしても彼は死ぬのですよ……」


カナエはゆっくりとブルグンに言う。


「……彼と一緒に、あなたも死にますか?」


カナエはそう言うと、背後からブルグンの肩に自身のシャムシールを置いた。


「仕方ない。やりますよ……」


ブルグンは冷たい目で俺を見ながら言う。


そして俺に向かって一歩、また一歩と近づいて来る……


「ブルグン!止めろ!!僕が許さないぞ!!」


ベルンが叫ぶが、彼自身折れそうなほど腕を捩じ上げられている。どうすることも出来ない!


痛いのは嫌だが仕方ない。血もそれなりに流れているし、意識も遠のいてきた。


さすがにブルグンの一撃を食らえばゲーム・オーバーだろう。


心残りはカナエに騙された事だ!そして奴に少しも傷を付けられなかった事!!


実は俺はもう一つ、反撃の一手を考えている。


もうカナエに勝つ事は出来ないだろうが、出来る事なら隙を突いて、一矢イッシ報いてやりたいと思っている……しかし何にしてもカナエが「オーバー・ヒート」を発動中では太刀打ち出来ない。


ブルグンが俺のすぐ横に立った!


そのすぐ後ろにはカナエが立っている。


「よお、ブルグン?元気か?」


俺は甲板に寝転んだまま、にこやかにブルグンに話しかけた。


「ジークさん……」


ブルグンは悲しそうに俺を見る。


「さあ、何をやっているのです?ブルグンさん、早くして下さい」


「分かりました。カナエさん……このブルグン、卑怯な事や悪い事はいくらでもやってきました……」


ブルグンは独り言のように言う。


「……海賊になってからも、いったい何人罪の無い人間を殺したか分かりません……」


ブルグンは剣を振り上げる!!


「……しかしっ!!なにゆえ、仲間や、ましてや命の恩人をこの手にかけられようか!?」


止めろ!!ブルグン!?


ブルグンは突然振り向いて、後ろに立っていたカナエに剣を振り下ろした!!


ギンッ!!


ズシュッー!!


最後まで抵抗して疲れ切ったブルグンと、「オーバー・ヒート」発動中のカナエでは勝負になる訳が無い!!


「うぅぅっ!!」


ブルグンはカナエに斬られてうずくまる!!


「ブ、ブルグンッ!?」


まだ、カナエはブルグンを仲間にする事を諦めていないのか、うずくまったブルグンにトドメを刺そうとまではしない。


……ドタッッ!!


ブルグンは甲板の上に前のめりに倒れた。


くそっ!!くそっ!!絶対にぶっ倒してやりたい!!


カナエは甲板に倒れているブルグンを静かに見下ろしている。


そして、チラリとベルンを見た。


ベルンはブルグンがやられた事にショックを受けたようだが、カナエの子分に両腕を捩じ上げられているので動きようが無い!!


カナエは大きく息を吐いた。


そして用心深く、今度は遠くにいる俺の仲間達を見る。そちらにはブルグンの手勢もおり、ブルグンがやられ事にかなりのショックを受けているようだが、しかしどうしようも無い。


カナエは俺を見て、少しニコリと笑う。


なんだ?なんだ、その笑顔は?


カナエは懐に手を入れた……


そして懐から何かを取り出す仕草をした。しかし、手には何も握られていない。


そして手の指をちょこちょこと動かす。


この動作は……スマホだ。カナエは今、スマホを操作している。


その仕草は見ようによっては何かお祈りをしている様に見えなくも無い。


あの時だ!!あの時、カナエは俺を背後から見ていた。あれは俺がプレイヤーかどうか確認する為に見ていたのだ。そしてスマホを操作している俺を見て、プレイヤーだと確信したのだ。


カナエは一通り何かの操作を終えて、また息を吐く。


おそらく、残りの「海賊力」が気になって自分のパラメーターを見たのだろう。


するとこの後の行動は読める!!


俺はこの時を待っていた!!


よくて相打ち!!


しかし、俺を騙したこいつを俺は許せない!!


ブルグンをこんな目に合わせたこいつを俺は許さない!!


一太刀だけでも浴びせてやる!!


「……」


……


…………


………………早くして!!


俺の意識が遠のいて来た!!本当に「体力(HP)」が「0」になってしまう!!


もう無理!!早く!!


カナエはゆっくりと言う。


「ラム酒を……」


「……」


「一杯……停止」


ふ、ふ、ふ。


俺はカナエにばれない様に小声で言う。


「……オーバー・ヒート……はつ……どう……」




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