ラム酒を一杯
「もしかして自分は無敵だとでも思っていますか?」
カナエは俺に聞く。
なんだと?
「我は無敵である!!」
この裏切り者め!?ぶっ倒してやる!!俺の「オーバー・ヒート」は無敵だ!!
俺はショーテルでカナエをぶった斬ろうとする!!
キュッイーン!!
カナエは俺のMAXパワーの攻撃を辛うじて弾いた!!
ギンッ!キュッイーン!!
くそっ!?言うだけの事はある!!俺の「オーバー・ヒート」での攻撃をことごとく弾きやがる!!
少しでも早くカナエを倒さないと、まだまだジーク軍は不利である。こんなところでグズグズはしていられない。
俺の気持ちを知ってか知らずか、カナエはニコニコといつもの笑顔を絶やさない。
ギンッ!!キンッ!!
俺は一方的にカナエを攻撃するが、ノラリクラリとカナエは交わす!!
早く、こいつを倒さないと残りの「海賊力」も心配である。
俺が少し焦っていると……
「貴方に面白いものを見せてあげましょう……」
俺の攻撃をかわしながらカナエは言う。
なんだ?面白いものとは!?
カナエはゆっくりと口ずさんだ。
「……ラム酒を一杯……」
ラム酒を一杯?なんだ?それは!?ふざけ……
「……発動!」
カ、カナエのスピードがガクンと上がった!!
なっ、なんだ……と……
し、信じられない!!どういう事だ!?
キンッ!!ギンッ!!キュッイーン!!
カナエが連続攻撃を仕掛けてくる。それが速い!!
オーバー・ヒートだ!!これはどうみてもオーバー・ヒート!!
キンッ!!ギンッ!キュッイーン!
速いっ!!
俺はそれを辛うじて弾く!!
ギンッ!ギンッ!!キンッ!!
だっ、駄目だ!!つっ、強い!!俺も「オーバー・ヒート」発動中だと言うのに!!
なんて強さだ!?
俺が疲れているからか?いや、オーバー・ヒート発動中は疲れなど関係無いはず。
キュッイーン!ギンッ!!
や、やば……
ギンッ!!ギンッ!!
カナエの攻撃が苛烈さを増す!!上から左右からと巧みに攻撃をしてくる!!その上、ひとつひとつの攻撃が重い!!
ギンッ!!
しまった!!防御した剣を弾かれた!!
頭が無防備になってしまった!!
カナエの剣が、無防備な俺の頭を狙う!!
駄目だ!とても……凌ぎきれな……
ギンッッ!!
なにっ!!
ベルンだ!!
ベルンが助けに来てくれた!!
「だ、大丈夫ですか?ジークさん」
ベルンが心配そうに俺の前に立ち、声を掛けてくる。
「ああ……」
愉快な仲間たちの士気が落ちるといけないので、俺が動揺してはいけないのだが、これが動揺しない訳が無い!!
俺はベルンと並んで立つとカナエに言う。
「どういう事だ?カナエ」
カナエは楽しそうにニコニコとしている。
「ふふふ、びっくりしたでしょう?」
「……」
「オーバー・ヒートはあなただけの特技では無いんですよ」
考えもしなかった……まさか、「オーバー・ヒート」を使えるキャラがいるなんて!?
どうすれば良い!?これでこちらは下手に「オーバー・ヒート」を解除出来なくなった。
おそらく、俺の「体力(HP)」も「生命力(VIT)」もかなり減っているはず。今「オーバー・ヒート」を解除してしまったら、一発でカナエにやられてしまう。
とにかく、自分の「海賊力」がきれない内にカナエを倒さなければ!
「ベルン!一気にケリをつけるぞ!!」
「はいっ!!」
俺はベルンと二人がかりてカナエを攻撃する!!
ギンッ!キュッイーン!!
カナエは俺のショーテルの攻撃に慣れていない!!フェイントを入れつつカナエを追い詰める!!
そしてベルンが速い!!さすがは俺のMAXパワー以上のスピードを持つ男!!もう相当に疲れているはずなのだが、そんなのはお構いなしだ!!
「くっ!!むぅっ!!」
やっとカナエの表情から笑顔が消えた!!
「これはさすがにかなわない……もう少しベルンさんが疲れてからと思いましたが……」
カナエはそう言うと大声で叫ぶ!!
「トゥルルさん!!出番です!!」
トゥルル!?誰だ、それは!!
俺達は今、船尾の辺りで戦っている。
カナエに呼ばれてマストの向うから背の高い美しい男が出てくる!!
や、やばい!!
ハンサムだ!!こいつはヤバいぞ!!この【海賊GAME】では下記の公式が成り立つ!!
外見が良い=強い
これだけ美しい男なのだ!!相当な強さのはず!!
「お呼びですか?カナエさん」
トゥルルと呼ばれた美しい男は眠たそうに言う。
この男は状況が分かっているのか?周りはインテリ海賊軍とジーク海賊軍とで、血で血を洗う戦いとなっているのに、なんだ?この緊張感の無さは!?
「そちらのおチビさんの方を頼みます……」
カナエはベルンを剣で指し示しながら、トゥルルに言う。
「……さすがのあなたでも荷が重いと思いますが、少しの間だけ引き受けてくれますか?」
「はい……」
トゥルルはのんびりした口調で返事をする。
「こちらの少年を倒したら、そちらのおチビさんも私がやりますので……」
なっ、なんだとぉ!!
俺を倒して、その後にベルンを相手するだと!?
「おらっー!!」
ギンッ!!
俺はショーテルで力一杯カナエを攻撃する!!
するとカナエは俺の剣を弾いて、そのままのコンビネーションで俺の喉に突きを繰り出してきた!!
速い!!!!
俺は身体を振って交わすが!!
ぐわっ!!
だから、痛いんだって!!
首にかすったぞ!!それが痛すぎる!!ほんのちょっとかすっただけじゃねえかっ!?
これがもし避けにくい胴にきてたら本気でやばかった!!
先ほどまではうまくベルンが牽制をしていたので、カナエは派手に俺を攻撃が出来なかったが、ベルンは今トゥルルと交戦中だ!
カナエと俺の一対一の勝負となる……