反撃開始
俺が相手の船に乗り込むと、想像以上の敵がいた!!
いったい、何人の人間が船倉に隠れていたというのだ!?
俺は敵を斬って斬って斬りまくった!!
身体中に敵の返り血を浴びながら、俺は次々と敵を屠る!!
そしてブルグンとベルンを見た!
二人とも自分の役割を完璧に果たしている!!
ベルンは着実に敵を一人、また一人と倒している!!そして一人にかける時間が信じられないほど短い!!
恐ろしい!!戦う為に生まれてきたような奴だ!!
いろいろな意味で恐ろしい……
女性ファン獲得の為に【海賊GAME】がやたら、ベルンを可愛いキャラにしてしまった!!
その可愛い容姿のベルンが無表情に黙々と敵を殺害していく!!
その光景に俺は薄ら寒いものを感じる。
そして、真正面から敵船に乗り込んだブルグンとブルグンの手勢は、周りを大勢の敵に囲まれながらも孤軍奮闘している!!
ブルグンが大勢の敵を引きつけてくれるので、俺とベルンが囲まれる事も無く、敵を各個撃破出来ると言える。
もう、俺はかなりの敵を倒した。まだまだ敵は多いが、俺は一度、「オーバー・ヒート」を解除する。
残りの「海賊力」が心配だったからだ!
そして激戦の中ではあるが、俺は懐からスマホを出して、自分のステータスを確認した!!
くそっ!!残りの「海賊力」は「5」だ。
この後、山場は来る!!それまでは「ショーテル」のステータス「100」だけでノラリクラリと凌ぐしか無い!!
敵を倒すスピードは格段に落ちるが仕方が無い!!
俺はショーテルの剣技だけで黙々と敵を倒す!!
このゲームの「体力(HP)」と「生命力(VIT)」と、実際のスタミナ、つまり疲労との関係はよく分かっていないが、疲れによって能力は低下する。
出来るだけ疲れないように敵を削らなければいけない。
しかし疲れ切ったとしても、俺には奥の手がある。「体力(HP)」がゼロにさえならなければ……死にさえしなければ最強になれるのだ!!「オーバー・ヒート」で……
俺はこの船に乗り込んでから、いったい何人の敵を倒しただろう?さすがに疲れてきていた……
俺は右手にショーテル、左手にスマホを握る例の戦闘スタイルで戦い続ける。
しかし、スマホの画面を見る余裕は無い。俺も徐々に敵に囲まれ始めたのだ!!
ベルンとブルグンを見る!!
やはり、あいつらもかなり疲労しているように見える。
動きに精彩が無い!!
しかし、あと少し!あと少しだ!!敵はかなり減った!!
ここを乗り切れば巻き返せる!!
俺は、ここがターニングポイントと思い、「オーバー・ヒート」を発動しようか迷っていると……
「ジークさん!!大丈夫ですか?」
この声は?
カナエがやってくる!
敵に囲まれた俺を心配しての事だろう。
……
…………俺は「オーバー・ヒート」を発動する。
ドタドタとやって来たカナエはシャムシールという武器を振り回し、俺を囲む敵をかき分けて俺の隣に到着した。
「カナエ!よく来た!大丈夫か?」
「大丈夫です!!後少し、頑張りましょう」
カナエはいつものニコニコ笑顔で力強く言う。
俺とカナエは背中合わせで戦う!
もうインテリ海賊とジーク軍とではあまり戦力差は無いように思える!
しかし、周りを囲む敵はニヤニヤと俺を見て笑う。
その笑い方が嫌に不気味だ!
それに先程まで、どんどん攻撃を仕掛けてきた敵が、なぜか攻撃の手を休めているような気がする。
なぜだ……
むっ!!
何か背後の気配が変わった!!
周りを囲む敵達の視線が、全て俺の背後に立つカナエに集まっているような気がする!!
俺は剣を構えながら、背後を振り向く!!
キュッイーン!!
俺は自慢のショーテルでカナエの攻撃を受けた!!
やはりっ!?味方であるはずのカナエが俺に攻撃をしてきたのだ!!
すかさず、俺はMAXパワーで目の前のカナエに反撃をする!!
ギンッ!
なんと、カナエはMAXパワーの俺の攻撃を弾いた!!そして背後に跳んで俺から距離を取る!!
「……」
「……」
カナエはいつものニコニコ笑顔で俺を見ながら言う。
「よく、今の攻撃を受けられましたね。もしかして最初から、私の事を疑っていましたか?」
「……ああ、やはりお前は俺を騙していたのだな?」
「はい……しかし、よく分かりましたね?」
カナエは不思議そうな表情で聞く。
「最初から何かおかしいと思っていたさ」
そう、俺は最初からカナエが何かを隠している事に気付いていた。
「どうして分かりましたか?」
「お前が最初にベルンに会った時だよ」
それを聞いてカナエは目を丸くする。
「確かに私はベルン君を初めて見た時に、かなり驚いてしまいましたが、それだけの事で?」
「お前は最初からベルンを知っていた。しかし、嘘を付いた」
「どうして、私が元からベルンさんを知っていたと思うのですか?」
俺はカナエの質問に答える。
「俺が、お前にベルンと手合わせをしてみろと言った時だ。お前は『とてもベルンにかなう訳が無い』と言った……」
「……」
「……なぜ、初対面なのにベルンのとんでもない強さを知っている?」
「確かに……それは失敗ですね」
カナエは苦笑いをしながら言う。
「それと、ハルバードのサガと戦った時だ」
「まだ、あるんですか?」
カナエは言う。
「俺を助ける前、お前はかなり遠くにいた。しかし一瞬で俺の元にやってきた。それはお前の素早さが高い証拠だ……」
「あの時ですか?」
「しかし、お前は普段の戦闘でそれを隠している」
「……」
「それはお前が、俺たちに本当の強さをばらしたくないからだ」
カナエは観念したかのように笑う。
「お前はインテリ海賊の仲間なのだろう?だから、この航路で俺達がイースラント港に戻るように仕向けた」
そしてそこにインテリ海賊が待ち伏せていたのだ。
「そこまで分かっていながら、なぜ、私の言うルートでイースラント港に向かおうとしたのですか?」
カナエは不思議そうに聞くが、俺としてはカナエがなんとなく怪しいと思っていただけで、何かの確証を得ていた訳では無い。
だから、無理にこのルートには反対をしなかったのだ。
それにこちらには反則技の「オーバー・ヒート」がある。
どんな罠に掛かろうとも、最後に勝つのは俺だ……