えっ!!そっち派!?
新しく見つけた獲物の船はこちらがジョリー・ロジャーを掲げると同時に力一杯逃げた!!
しかし、今俺たちが乗っているパウルから奪った船は、なかなかスピードの出るスループ船というやつだ。
そうそう、この船から逃げることは出来ないだろう。
獲物の船は俺達から逃げる事が出来ないと見るや、今度は迎撃の準備を始める。
おっ!今度の船は、最初の貿易船のようにいきなり降伏はしないようである。
「船を接舷しろ!!」
俺が叫ぶといつもの引っ掛けフックの出番だ!!
ドッ、ドッシーンッ!!
ブルグン達は、ものすごい手際の良さで獲物の船に俺たちの船を接舷させた!!
今のメンバーでの三度目の海賊行為である。なかなか息が合ってきた。これには、たぶんブルグンの統率力の高さが一役買っているのだろう。
船が接舷されると同時に俺が叫ぶ!!
「接舷攻撃に入れっー!!」
ここからが、俺がブルグンとベルンに授けた作戦である!!
先ずはブルグン率いるブルグン勢が中央より獲物船に乗り込む!!
ブルグンは統率力が高いので、船の上だというのに陣形も崩れず、見事に獲物船に乗り込んだ!!
もちろん、向こうは無法者の海賊に乗り込まれて、必死の思いで抵抗をしてくる!!
周りを囲まれるとさすがのブルグンもしんどいので、後方支援として元パウル勢が後から獲物船に乗り込んで援護をする!!
そしてここからだ!!ある程度敵の注意がブルグンにいった所で、俺とベルンが左右から獲物船に乗り込む!!
そして獅子奮迅の働きだ!!
この時、もちろん俺は「オーバー・ヒート」を発動している。
抵抗する者を斬って斬って斬りまくった!!
俺とベルンは止まらない!止めようがない!!
嵐が枯れ葉を吹き飛ばすかのように敵を薙ぎ倒していく!!
するとすぐに敵の抵抗は止んだ。
降伏だ!!勝てないことを悟ったのだろう。
早い!!瞬く間に制圧だ!!
相手がただの民間船とはいえ、こちらの被害はほとんどゼロである。
素晴らしい!!
あっという間に略奪完了だ。
そして相手のお宝を全て奪い取って、ブルグンが分配を終えた所で、俺はすぐにスマホで所持金を確認した!
凄い!!「150」ピース・オブ・エイト以上も増えている!!
これで合計「672」ピース・オブエイトだ。どんどん貯まる。
ちなみに俺はパウル撃退の時に「362」ピース・オブ・エイトを手に入れたが、馬鹿のブルグンが酒場で「ここは全てジークさんの奢りだ!!」と叫んだ為、出航の時には「285」ピース・オブ・エイトしか持っていなかった。
しかし今回の海賊行為では、俺のナイス戦術のおかげでこちらの損失はほとんどゼロ!!
そして略奪品は「150」ピース・オブ・エイト以上という脅威の数字!!
ちょろい!!
ちょろすぎるぜ!!【海賊GAME】!!
これでガッツリ金を稼いで、また港で豪遊だ!!
「……あのジークさん……」
ホクホクしている俺にブルグンが話しかけてくる。
「……なんか、俺たちだけ異様にしんどいんですが……」
ブルグンは自分と自分の子分達だけが、中央突破的に獲物船に乗り込まなければいけないことに不平を言う。
「……それは気のせいだ。ブルグン!」
俺はブルグンの言うことを放っておいて、次の獲物を探す!!
すると次の獲物はすぐに見つかった!!
俺がブルグンとベルンに授けた戦術は、今の俺たちのチーム編成にとって最適なプランだが、一つ気をつけなければいけない事がある。
それは俺の「海賊力」だ!
海賊力は時間と共に回復する。しかし、それなりに時間を要するのだ。だから、あまりに短いサイクルでは海賊行為を行う事が出来ない!
しかし、そこさえ気をつければ、チーム不死身のジークと愉快な仲間達は向かう所敵無しだった。
運も味方しているのか、俺たちはあまり被害を受ける事も無く、その後、合計三回の海賊行為を成功させた!!
そして俺の所持金は「1,000」ピース・オブ・エイトを越える!
ぬははははっ!
笑いが止まらない!!
港で豪遊が待っている!!
ゲームの中ではすでに三日がたっていた。そろそろ陸が恋しい。
俺が船首に立ち、もうそろそろイースラント港に戻ろうかどうか迷っているとブルグンの大声が聞こえる。
「なんだ!?お前、経度を測定出来るのか?」
なんだ!?なんだ!?ブルグンが興奮した声で叫んでいるぞ!!
俺が声のする方を見ると、ブルグンとカナエだ。
「どうした、ブルグン?何を騒いでるんだ?」
俺はブルグン達に近づきながら聞いた。
「聞いてください!ジークさん!こいつ、経度を測定出来るらしいんです!」
なんだ!?ケイドを測定?ケイドって緯度・経度の事か?
「それがどうした?ブルグン。それはそんなに驚く事か?」
「えっ!?」
ブルグンは心底ビックリした顔をする!!
めんどくせーよ!!このゲームはこういうところがめんどくせーんだよ。
「ま、まさか?ジークさんも経度を測定出来る派ですか?」
なんだよ!その経度を測定出来る派って!?
変なところで分けるなよ!!人類を!!
もっと!いくらでもあるだろう!!分けるべき境界線が!!
なんで経度を測定出来るかどうかで分ける!!
まあいい。
確かこのゲームのスキルに「航海術」や「天文学」というのがあった。それをチョチョイと「100」にすれは、そんなもんはすぐに測定出来るのだろう!!
「ああ、我は天文学を心得ている!よって測定出来る!!」
「えっ、えっえぇっ!!そっちっ!?そっちで測定出来るんですか!!カナエと一緒じゃないですか?」
なんだ?そっちって!?
ブルグンは心底驚いている!!そして俺を尊敬の眼差しで見る!!
おおっ!良きかな、良きかな。
俺は少しいい気になってくる!!それはそうだろう。「ショーテル」のスキルを「100」にすれば、いきなりショーテルの達人になれたように、少しパラメーターをいじれば俺は何でも出来る!!
すなわち!!万能なのだ!!
いい気になった俺は言う!!
「俺は経度どころか……」
「け、経度どころか?」
「……なんと、緯度も測定出来るぞ!!」
「……」
「……」
……どうした?びっくりしすぎてぐうの音も出ないか?んんっ?
「……緯度が測定出来るのは当たり前じゃないですか?何言ってるんですか?あんたは?」
ブルグンがムカつくキョトン顔で言う。
なんでだよ!!なんだよ、それは!!訳分かんねえよ!!
何で経度が測れることにそんなに驚くのに、緯度に驚かねえんだ!?
二つは双子みたいなもんじゃねえのか!!!!
なぜ、お前らは経度だけを不思議な存在にする!!
どっちもスマホのマップアプリを使えば瞬く間に分かるような事じゃねえかっ!?いったい、何が違う!!
俺が渋い顔で内心わめいていると……
「もしかして経度が測定出来るというのは嘘ですか?」
ブルグンが残念そうな表情で言う。
な、な、なんだとぉ!?
俺を嘘つき呼ばわりだと!!
「我は嘘つきなどでは無い!測定出来ると言ったら測定出来る!!」
「では試しにこっちの方法でやってみて下さい」
ブルグンはそう言うと、海図と……なぜか、木片を渡してきやがった……
なぜ、木片!?
経度と何か関係があるのか?
なんにしても、目の前でブルグンは見てくるし、その後ろでニコニコと新メンバーのカナエも見ている。
とても今、スマホを操作する余裕は無い……
海の悪魔と恐れられるパウルを倒した俺だが、経度の測り方を知らないだけで……
とんだピンチである!!