虎眼石の指輪
「37」ピース・オブ・エイトだと?
「どういう事だ?ブルグン」
「へっ?」
もう、そのムカつくキョトン顔はいい!!
「なんで、サガを襲った儲けがたったの37ピース・オブ・エイトなんだ?」
「え、ああ?」
信じられん!?前にパウルを倒した時には「400」近くピース・オブ・エイトが入ったというのに、今回は十分の一だ。
少なすぎるだろう!
「だって相手は海賊ですよ?お金を持っている訳が無いでしょう?」
「パウルは持ってたじゃねえか?」
「たぶん、パウルはたて続けに海賊行為をやった後だったんですよ」
「……」
「それに今回は負傷者もいましたし……」
そうだ。貿易船を襲った時には、戦う前から相手が降伏をしたのでこちらは無傷であった。
しかし、海賊サガと戦った今回は船員と船の両方に被害があった!!
ブルグンとベルンの二人が爆発的に強くてもだ。
俺から見て、新しく仲間になった連中はまだあまり戦力にならない。カナエを除いてはだが。
つまり、戦力となるのはブルグン勢とベルン勢の元から海賊軍団だけだ。
しかし、今回はベルン勢に大きな被害が出てしまった……
これで、かなりの戦力ダウンである。
そしてブルグンはいつもの調子で負傷者に大金を分配する。
「……これは見えるか?そうか完全に見えないか?では100ピース・オブ・エイトだな」
ブルグンはこの戦闘で片目を失った者に100ピース・オブ・エイトを与えようとする。
「ブルグン?片目が見えなくなったら100ピース・オブ・エイトなのか?」
「はい?そうですが……」
片目を失うなんて大変な事だ。それをやり過ぎとは思わないが……
「もうちょっとどうにかならないのか?」
「……うーむ。確かにサガはあまり金を持っていなかったですもんね」
ブルグンは少し悩んで近くの者に聞いた。
「今回の戦利品の中に奴隷はいたか?奴隷がいれば、100ピース・オブ・エイトの代わりに奴隷一人とする」
奴隷をもらう!?
戦いで片目を失ったら、代わりに奴隷が貰えるなんて、なんてめちゃくちゃな世界だ!!
しかし、サガの船には奴隷はおらず、結局は片目を失った者には100ピース・オブ・エイトを支払う事になった。
ちょっと待て!!という事は、前の海賊ブルグン対海の悪魔パウルの戦いで、もしブルグンが負けていたら、俺はパウル側の負傷者に戦利品として分配されていたかもしれないということか!?
もしそうなったら【海賊GAME】では無くて【海賊の奴隷GAME】だ!!
……危なかった。
なんにしても儲けは少ない上に、大事な戦力は失うで、今回の海賊行為は全くいいとこ無しである。
みんなの言うことを聞いてハルバードのサガと戦うのは止めておけば良かったと俺は悔やむ。
「それにしても良かったですね。大事にならなくて」
ブルグンが俺に言う。
あのおっさんの裏切り行為の事を言っているのだ。
本当にあれは危なかった。あんなザコキャラ中のザコキャラにやられて、ゲーム・オーバーになっていては悲しくてたまらない。
結局、おっさんはカナエの一撃で死んでしまったので、なぜ俺の命を狙ったのかは分からないが、たぶんパウルを倒した俺を倒して有名になりたかったのだろう……との結論で落ち着いた。
もしかしてパウルの残党がどこかに残っていて、それがやってきたのかとも思ったが、それはベルンについて来た元パウル勢に確認をしたところ、誰もあのおっさんについては知らないと言っていた。
「ああ、あれは本当にやばかった。カナエには本当に感謝しないとな」
俺は言う。
「そうですね」
俺は船を走らせるが、なかなか次の獲物が見つからない。
仕方なく、懐からスマホを出してボンヤリと画面を見る。
俺はまだこの【海賊GAME】について何も分かっていない。
何か為になる事が書いてないか「HELP」でも読もうと思ったのだ。
んっ!?
スマホのメニューを操作しようとする俺は背後に視線を感じる?
俺は視線を感じる方をパッと振り向いた!!
そこには俺の命の恩人であるカナエが立っている!
俺がそちらを見るとカナエは目をそらした。
まさか、また、ボーイズ・ラブか?
そう言えば、このカナエはベルンのみならず、俺の事もチラチラと見ている時があるような気がして気持ち悪かった。
俺がパッとカナエの方を振り向いた時には、奴の視線は俺の手を見ていたような気がする。
「カナエ。どうかしたか?何か、俺に用か?」
「……」
カナエは少し考える表情をする。そしてまたいつものニコニコ顔で言った。
「これは何かのおまじないですか?」
カナエはそう言ってキリスト教徒が胸で十字をきるのと似た仕草をした。
どうも俺がスマホを操作しているのがそう見えたようだ。
このゲームのキャラクターには俺のスマホは見えない。それはムンクで立証済みだ。
「……ああ、おまじないというか癖みたいなものだ」
俺は適当に言う。
カナエが去って行ったので、俺はまたスマホを操作する。
すると!?
自分のステータス画面を見て驚いた!!
レベルが上がっている!?
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【ステータス】
Lv : 3
HP :20
STR :25
VIT :19
INT :29
AGI :17
LUK :7
PIR :13
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やった!レベルが「3」になっている。各ステータスも軒並み上がってい……
なんだぁ!?
俺、こんなに「運(LUK)」が低かったか?
いや、そんな訳は無い!!
最低でも二桁だったはずだ……
下がってる!!下がってるぞ!!
ステータスが下がってる!?
レベルが上がってるのにステータスが下がってる!!そんなん有りかよ!?
信じられん!?
どんなゲームだよ!!レベルが上がってるのにステータスが下がるなんて!?
くそっ、しかしそれは置いておいて「海賊力」が「13」に上がっているのは喜ばしい事だ!!
あと、先ほど所持金を確認した時に気付いたのだが、何かアイテムが増えていた。
俺は所持品一覧の画面を出した。
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【所持品】
黒闇のショーテル 1
虎眼石の指輪 3
羅針盤 1
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さっきのハルバードのサガから奪ったのだろうか?
なんだ?虎眼石の指輪とは?
金は仲間で山分けのようだが、アイテムは俺が貰える仕組みらしい。
しかしパウルから奪った財宝のような物はブルグンがイースラントの港で売り飛ばして、換金してから分配していた。
つまり、この所持品一覧に出てくるアイテムは普通の財宝とは違う訳だ。
「ブルグンッ!!」
俺はブルグンを呼んで虎眼石の指輪を持って来させる。
俺は持って来させた指輪を眺めた。
色は赤く、少し濁った色をしている。
スマホを操作していると「虎眼石の指輪」の説明が「HELP」にあった。
な、なんだ?
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【虎眼石の指輪】
人物のステータス及び、スキルのパラメーターを確認できる
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キャラクターのステータスが分かるだと?
すごいじゃないか?
つまり、ブルグンやベルンの能力が分かるという事か?
これはおもしろい!!
俺はさっそくブルグンとベルンのステータスを確認する事にした。