海賊の醍醐味!!陸で豪遊!?
「飲めっー!!歌えっー!!お前達!!」
俺は不死身の海賊ジークである。
俺は、あの海の悪魔と恐れられる海賊パウルを倒した男だっー!!
ここは、イースラント港という所である。パウルの船を奪い取って、ブルグン達とやって来たのだ。
そして今は豪遊をしている。
やれ素晴らしきは海賊行為である。
やっつけたパウルはたくさんの金銀財宝を持っていた。どうもパウルは、何度も海賊行為を働いた後に俺達を狙ったようで、奪ったパウルの船にはたくさんの略奪品が積んであったのだ。
つまり、海賊の略奪品を俺たちは略奪したのだった。
五時間程前に俺は、たくさんの金銀財宝を積んだ船で、イースラント港に到着した。
俺はここからが、このゲームの本番とばかりに興奮した!!
海賊行為の略奪品で、豪遊する!!
このゲームの名前は【海賊GAME】だ。海賊といえば、そうであろう!!
「さあ、ブルグン!ベルン!行くぞ!!街に繰り出すぞ!!」
俺は二人に言う。
「えっ?」
俺の掛け声に対して二人は少しビックリした顔をする。
えっ!?ってなんで?
俺は二人の顔を見た。
するとブルグンが言う。
「ジークさん。まずは船の修理の手配と、次の航海に使う物資の調達をしないと……」
何でだよっ!!!!なんでそんなに計画的なんだよ!!
お前らマジ海賊かよ!!
海賊がそんなに真面目だったらおかしいだろうが!!
俺の内心をよそに、ブルグンは船の修理と次の航海の準備を始めた!!
おかしいんだよ!このゲームは!!リアルを追求してんのか、笑いを狙ってるのか、よく分からん!!
略奪品の分配についてもそうだ。
今回の戦いで一番の武勲は俺だろう!?
俺がいなければ、海賊ブルグンは壊滅していた。だから、パウルを倒した俺を皆たててはくれる。要は船長のような扱いだ!!
そうだ!言うなれば、俺は新しい海賊の船長だ。
だったら、パウルから奪った金銀財宝は俺の物だろう。全部俺がもらっても良いとまでは言わねえが、俺が自由に取り分を決めてもいいんじゃねえのか!?
それが俺の取り分は、他の者とあまり変わらないのだ!?
よくて、普通の船員の二倍あるかどうかだ!?
このゲームの通貨である「ピース・オブ・エイト」がどれくらいの価値なのか分からないが、俺に入ったのはたった「362」ピース・オブ・エイトだ。
俺はパウルを倒すために「1,000」ピース・オブ・エイトを使った。そして戻ってきたお金が「362」ピース・オブ・エイトだとぉ!?
減ってるじゃねえか!?損してるぞ!!
これなら海賊行為を行わずに、まっすぐ港町に行って、最初の所持金の「1,000」ピース・オブ・エイトで豪遊すれば良かったという話になる!!
パウルは大量の金銀財宝を持っていたのに、なぜ、こんなに取り分が少ないのか?
それには理由がある!!
それは今回の戦いで怪我人が多かったからだ。
ブルグンは勝手に怪我人に略奪品を分配しやがったのだ。
片腕を失った者にはこれだけ。両足を失った者にはこれだけとかなりの金を怪我人に渡しやがった。
ブルグン!!お前は悪人じゃねえのか!!
なぜ、怪我人に手厚い!!それでも海賊かぁ!?
結果的に俺の取り分はかなり少なくなった!!
一番働いたのにだ!!
不公平極まりない!!
言いたい事は山程あるが、今はもういい。
船の修理手配や物資の調達が済み、豪遊の時が来たからだ。
「俺らはまず酒場ですが、ジークさんはどうします?」
ブルグンが俺に聞く。
「もちろん、俺も行くぞ」
まずは飯だ!飯!!腹が減っては戦がはじまらない。
なぜ夢の中で腹が減る?と思う気持ちもあるが、このゲームの無茶苦茶ぶりは今始まった事では無い。
俺はブルグンと、ブルグンの子分数人を従えて酒場へ行く。
すぐに大量の酒と飯が運ばれてきた。
俺は食って食って食いまくった。
すごいぞ!クソゲー!!美味い!!美味しい味がする。ここまでくるとノーベル賞ものだな。
途中、可愛いアイドル(ベルン)を出した時には、一時お前の正気を疑ったが、お前はやる時はやるゲームだ。
俺が豪快に飯を食っていると、誰かの視線に気付く。
うん?
俺がそちらを見ると……
綺麗な色っぽい……お姉さんとおばさんの間ぐらいの女の人がこちらを見ている。
なんだ?なんだ?俺らが騒がしかったか?
それともブルグンのいかにも海賊という風貌が恐ろしくていやだったか?
俺が不思議そうな顔をしていると、ブルグンがニヤニヤとした顔で言う。
「俺は今日は博打じゃ無くて、女になりそうだな」
うん?
「どういうことだ?ブルグン」
俺がブルグンに聞くとブルグンは言う。
「あの女は俺達が金を持っているのを知ってるんでさ」
「……」
「俺らの金目当ての女ですよ」
今ひとつピンとこない俺にブルグンは説明をしてくれる。
どうも海賊というのは、海を航海する船などには忌み嫌われるが、港で商売をするごく一部の者には歓迎されるらしい。
それはたくさんのお金を持っていて、それを豪快に使うからだそうだ。
特に、長く海の上で生活をする海賊は、ストレスをためて陸に上がってくる。
結果、博打と女に大金をはたくそうだ。
おいおい、よく見ると俺たちが食事をしている酒場には続々と、そういう感じのお仕事をしていそうなお姉様方が集まってくるじゃないか。
俺達はブルグンと、その子分を合わせて五人。しかし、お姉様方はそれ以上の数がいるぞ!!
こいつぅ~!!ゲーム・バランスが悪い、悪いと思っていたら、こういうところもバランスが悪いのか?
これは俗に言う、ハーレムというやつではないか!
周りをニタニタと見ていたブルグンが言う!
「いよいよ、集まって来やがったな。あいつら、ほとんどジークさんが目当てですよ」
なっ、なんですとぉ!?
「ジークさんが、一番金待ってるし!あの海の悪魔パウルを倒したのを皆知っている」
「……」
「それにそこそこかっこいい!!」
なんだ!?そのそこそこって言うのは!?
「ジークさん、どうするんですか?どいつにします?ジークさんが選んでくれねえと俺ら選べねぇ」
選ぶ!!あの綺麗なお姉様方の中から!?
いや、正直緊張する!!
どちらかと言うと俺は女性が苦手だ!何を考えているか分からないからだ。
しかし、周りにお集まりのお姉様方は、お金が目当てなのだ。逆に分かりやすい。
所詮はゲーム!楽しければ金が目当てだろうが愛が目当てだろうが、関係ない!!
俺がジロジロと酒場内のお姉様方を見ていると、一人の美しいお姉様がスクッと立ち上がってこちらに近づいてくる!!
少しつり目で気は強そうであるが美しい!唇の下に小さなホクロがあるのがまた色っぽい。
「あなたがジークさんて言うの?」
その美しいお姉様方が俺に話しかけてきた!!