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海賊GAME  作者: niyuta
海上の略奪者
15/73

所詮はどうしようもないゲーム

「がぁ……あぁ……」


俺は船の甲板の上で呻きながらゴロゴロと転がる!!


だっ!かっ!らっ!!


本気で痛いんだって!!


ゲームなんでしょ!!夢の中なのに、なぜこんなに痛いのか!!それとゲームなのに、なぜこんなに痛いのか!!


どこから突っ込めばいい!?


「ジーク!!」


ムンクが慌てて俺に近寄って来ようとする!!


「来るな!!」


俺は痛みに耐えながら叫ぶ!!今俺に近づけば、俺と一緒にパウルに殺されるかもしれない!!


俺の言葉にムンクは立ち止まった!!


そして俺はパウルの追撃を受けぬように起き上がろうとするが、もう起き上がる事も出来ない!!


俺が慌ててパウルの方を見ると、パウルは余裕の笑みでこちらを見ている!!


俺はこんな時に使ってみたい言葉があった。今からそれを使う!!


……万事休すだ!!


もう身体が動かない!!


先ほど、吹っ飛ばされた時にスマホを落としてしまったようで、目の前にスマホが転がっている。俺は寝転がったまま、そのスマホを掴んだ。


パウルはすぐに、俺にトドメを刺そうとはしないようだ。


理由はほんの少し分かる。


「俺に逆らう奴は容赦しねえ!拷問の準備をしろ!!」


やはりかっ!!


やはり拷問か!!クソゲーめ!!


おかしいだろ!!なんでゲームの中で拷問を受けるんだよ。


これがロール・プレイング・ゲームなら、俺は主人公だろ!!


主人公が拷問を受けるゲームなんて聞いた事が無いわ!!


腹立たしいが仕方が無い。俺はスマホを操作して、ゲームを終了する方法を「HELP」から探す。


こんな動けなくなる程の攻撃を受けても目が覚めないのだから、自然に目がさめる事は無いのだろう。何かゲームの終了方法があるはずだ。


俺は寝転んだまま、スマホを操作する。そして極力周りは見ないように努めた!!


パウルの手下が、拷問の道具らしき物を準備し始めたからだ。


ノコギリみたいな刃物や大型のペンチみたいな物を用意してい……なんだっ!?あれは!!鍋だ!!奴ら鍋を用意したぞ!!まさか、俺を食う気か!?


し、信じられん……


いや、違う。あれは俺を熱湯につけるつもりだな!!昔の大泥棒がやられた刑だ。


俺はこのゲームの中途半端さにムカついてきた!!船の上でどうやってお湯を沸かすつもりだ!!リアルの追求はどこにいったんだ!!


ずっとリアルを追求してきたのに、ここに来て鍋なんか出すな!!


アイドルが出てきたあたりから、お前おかしいぞっ!!


とにかく、俺が慌ててゲーム終了方法をスマホの「HELP」から探していると衝撃の事実が分かった。


本当に衝撃だった……


「ゲームの終了」ボタンがメニュー画面にあったのだ……


いや、正確にはメニュー画面に「航海日誌」というボタンがあり、クリックすると「航海をおわる」というボタンがある……


なんじゃそりゃっー!!


ただのゲームじゃねえか!!


まあ、ゲームなんだが……


特殊技能は掛け声で発動出来るんだから、ゲーム終了もサマになる掛け声でいいじゃねえか!!


だから、ちょこちょこクソゲーの香りをさせるんじゃねぇ!!


とにかく、終わりだ、終わり!!


こんな身体もろくに動かない状態じゃどうしようも無い。


忌々しい。これだけリアルを追求しながら、結局はただのゲームだな!!


……


…………俺はゲームというフレーズで何かに気付く!


なんだ?今、何かに気付いたぞ!ゲーム……ゲーム……裏技……


俺は何かを見落としている。


そうだ、これはただのゲームだ。それもどうしようも無いゲーム。


な、何か思いつきそうだ!!


俺はスマホを操作して所持品一覧を確認する。


俺が所持しているアイテムは「黒闇のショーテル」のみ……薬草やポーションのような回復系のアイテムっぽい物は無い……


んっ!?これは!?


……なんで?


そうか!?確かに書いてあった!!


俺は慌てて、スマホを操作して、「オーバー・ヒート」の説明画面を見る!


そうかっ!!


「よし、準備は整った。奴を抱えあげろ!」


パウルが楽しそうに言う。俺を拷問する準備が整ったのだろう。


「やめろっ!!」


えっ!?


俺が見ると青い顔をしてムンクがパウル勢を睨みつけている!!


残念だが、ブルグン勢とあの奴隷部屋の連中は……俺がパウルにやられた後に武装解除をされて、周りを武器を持ったパウル勢に取り囲まれている。


「なんだぁ~?」


パウルはあの凶悪な顔でムンクを睨みつける。


可哀想にムンクは青い顔でガタガタと震えるばかりだ!!


「おい、そいつを連れて来い!」


パウルはムンクを指差して子分に命令をした。


パウルの子分がムンクに近づいて行く!


「待てっ!!」


甲板に寝転んだまま、俺は大声で言う。


「ムンク、俺は大丈夫だから、黙って見てろ」


「ジーク……」


周りのパウル勢は俺を馬鹿にしたようにニヤニヤと笑う。


それはそうだろう。もう動くこともままならず、これから拷問を受けようとする者が「俺は大丈夫」と言っても説得力が無い。


俺は少しスマホを操作してから言う。


「ムンク。俺の言葉を覚えているか?」


ムンクは俺に心配そうに聞く。


「な、なんだ?言葉って?」


「我は……」


「わ、我は?」


「……不死身である!!!!」


その言葉と同時に俺は例の反則技を発動し、パウルに向かって走る!!


俺が動けるとは思っていなかったパウルは慌てふためきながら、自分の剣を構えた!!


キンッ!!ギンッ!!キュイッーン!!


俺はパウルに連続攻撃を仕掛ける!!


MAXパワーになっても、パウルと俺の力はほぼ互角!!


しかし、スピードに関してはこちらに分がある!!


俺は右へ左へとフェイントを入れてパウルを翻弄する!!


キュイッーン!キンッ!!ギンッ!


シュッ!!シュッ!!


俺の攻撃は、パウルの肩に腕にかすり傷はつけるが致命傷は与えられない!!


俺は自慢のスピードを生かしてパウルを翻弄した。


丁寧に攻撃を積み重ねながら、俺は左手に持ったスマホで自分のステータスを見る。


敵はパウル一人、奴はベルン程は速くないのでMAXパワー時の俺のスピードには全くついてこれていない。


だから、スマホの画面を見たい瞬間だけ、大きくパウルから距離を取ればいいのだ!!


しかし、奴に妙な動きはされたくないので、確認後はすぐに距離を詰める!!


現在の俺のステータスは……

________________

【ステータス】

Lv : 1

HP :60

STR :60

VIT :60

INT :60

AGI :60

LUK :60

PIR : 7

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

素晴らしい!!惚れ惚れする!!とにかく数字が綺麗に並んでいるのは気持ちの良いものだ。


海賊力はもう「3」も減ってしまっているが仕方が無い!!


「オーバー・ヒート」は海賊力の消費が激しい。


しかし、まさか、あんな方法で海賊力を増やせるとはな!!


ゲームならではだ!


単純に言えば「課金」したのだ。課金をすれば「海賊力」が買える。


普通のゲームなどで120円課金すれば、ライフを一個買えるようなイメージだ。


もちろん、俺はこんなクソゲーに課金はしない。


ではどうやって「海賊力」を増やしたのか?


「HELP」で「海賊力」の回復方法を読むと「ゲーム内通貨で一気に回復させる事も可能」と書いてあるのだ!!


このゲームを始めたばかりの俺に所持金など無いと思ったが、先程、所持品一覧を見たら、アイテムは「黒闇のショーテル」のみだが、画面下の「所持金」の欄に「1,000」との数字が入っていた。


なんだ?これは?と俺もビックリしたが、よくよく考えれば最初ゲームを始める時にクリックした広告に書いてあった。《今ならゲーム内通貨1,000ピース・オブ・エイトをプレゼント》と。


ちょっとピース・オブ・エイトというのは分からないが、つまり俺はゲーム内のお金を持っているのだ!


すぐさま、「海賊力」の「HELP」ページに戻った。


書いてある。「海賊力」を回復させるには海賊力「1」につき、「100」ピース・オブ・エイトが必要だと!


俺はすぐに「1,000」ピース・オブ・エイトを海賊力「10」に交換したという訳だ!!


やはりゲームはゲームだ!!課金をさせようとの魂胆が丸見えである。


まだそこまで読んでいないが、たぶん100円でゲーム内通貨が「1,000」でも買えるようになっているのだろう。ハマれば課金する奴もいるかもしれない。クソゲーめ!!


俺はパウルに攻撃を仕掛けながら、たまにスマホから自分のステータスを確認した。


とうとう「海賊力」が「3」になってしまった。しかし、俺はまだパウルに致命傷を与えてはいない!!


だが、俺に焦りは無い!!


俺はアレを待っているのだ!!


キンッ!!ギンッ!!


延々と俺はパウルを攻撃し続ける!!


とうとう「海賊力」は「2」となった!!


俺の「海賊力」が尽きれば、拷問の続きが行われるだろう。


そして、このゲームはリアルに痛みを感じる!!「体力(HP)」が尽きるまで無闇に苦しめられてゲーム・オーバーだ。


俺の「海賊力」は「1」となる!!


もう間に合わないかと俺が思った瞬間!!アレは来た!!


パウルの動きが急に悪くなる!!


俺が待っていたアレとは「疲労」だ!!

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