パウル・ハウゼン登場
出たな!パウル・ハウゼン!!
信じられない程の凶悪顔だ!!
目は細く、まぶたははれぼったい。少し太った顔の下半分は髭がぼうぼうと生えていて、その不気味さを増している!!
このタイミングで出てきたかラスボスめっ!!
もう勝てないだろう!?こんな状態じゃあ……
なんといっても「海賊力」が「2」しか残っていないのだ!!
言うなれば、ロール・プレイング・ゲームで……万全の状態でダンジョンに乗り込むが、ラスボスのところに着いた時には、マジック・ポイントも薬草も全部使い切っているようなものだ!!
ラスボスを倒せる訳が無い!!
クソゲーめ。どうやってゲームを進めれば良かったというんだ!?
俺は考える。この【海賊GAME】なりのゲームの進め方があったはずだ!?
手錠を壊そうと、あそこで海賊力を無駄遣いしたのが失敗だったか?
いや、違う。もっと、こういうゲーム特有の何かが……
ダッンー!!
「うがっ!!」
なっ!?何が起こった!!いきなり敵海賊の一人が苦しみ出したぞ!!
その海賊は甲板の上を苦しみながら転げ回る!!
見るとパウルは銃を握り、その銃からは煙が上がっている!!
撃ったのか!?こいつ!!仲間を撃ちやがった!!信じられない!!
「どうしたぁっっ!?早く掛かって行かねえか!!」
パウルはけしかけるが、パウル勢は俺とベルンの達人レベルの戦いを見ている!!
さすがに恐れをなして俺には掛かって来な……
ダッンー!!
「がぁっ!!」
信じられん!!また一人、仲間を撃ちやがった!!
「お前らぁ~、そいつと俺と……どっちが恐ろしい!?」
パウルは煙の立ち昇る銃口を俺に向けて、いやらしく笑いながら言う!!
狂人だ!!狂人がいる!!
パウルは新しい銃に持ち替えて言う。
「次はどいつだぁー!?」
駄目だ!?やばい!!
「うぁー!!」
パウル勢の数人が変な叫び声をあげて俺に掛かってくる!!
「らぁ!!」
俺は気合いを入れて、掛かってくる敵を薙ぎ払う!!
やばい!!身体が言うことをきかない!!
これ以上はやばい!!
俺は右手でショーテルを持ち、左手でスマホを持つ。
剣を持つ手とは逆の手なので、スマホを持っていても、そんなには邪魔にならない。そんな事よりも、今は自分のステータスをいつでも確認出来るようにしておく方が大事である。
また、あらたに敵が俺に突っ込んでくる!!
ひぃー!
俺は内心で情けない声を出すが、敵に弱みを見せてはまずいと表面上は普通を装おう。しかしもう「体力(HP)」も、「生命力(VIT)」もほとんど残っていない。
今度こそゲーム・オーバーだ。
しかし、あの狂人には一矢報いてやる!!
自分の仲間を殺し、脅して攻撃させるとは胸くそが悪い!!
ゲームのキャラと分かっている!!そんなのに本気で腹を立てている自分は、もうこのゲームの術中にハマっているとも言える!!それが悔しい!!
しかし生理的に許せんものは許せんのだ!!
俺はジリジリとパウルに近づいて行く!!
使える「海賊力」はあと「2」ポイント!!
今までの感触ではラスボスを倒せる程の時間は無いだろう!!
しかし、あの海の悪魔に傷の一つも付けてやる!!
俺は少しずつパウルに向かって行く。その行く手を阻む者はいない!!
パウル勢は、パウルに脅されはするが、怒りに震える俺の前を塞ぐ事も己の死を意味する!!
どうすれば良いのか、青い顔をしてアタフタするばかりであった!!
「パウルッ!!我が名はジーク!!」
パウルは俺を見てニヤニヤと馬鹿にした顔で笑う。
パウルは手に持った銃をまた持ち替える!!
いったい、幾つの銃を持っているんだ?
奴の服には幾つものポケットがついていて、その一つ一つに銃をさしていた。
おそらく、一つの銃で一発しか撃てないのだ!先ほどから一発撃つたびに銃を持ち替えている!!
奴は銃を構えているのだ。冷静に考えれば無鉄砲に近づくのはやばいだろう!!
本来なら、今さら銃なんて有りかよ!と叫びたい!!クソゲーが!!本当にゲーム・バランス最悪だな!!
しかし少ない「海賊力」を有効に使うには出来るだけ近づいて「オーバー・ヒート」でぶっ飛ばすしかない……
「お前は何を呑気にしている!掛かって行かねえか!?」
なんだと!?
パウルが、俺の右斜め前にいるベルンに銃を向けやがった!!
俺との戦いで肩に大怪我を負っていて、動く事もままならないというのに!!
駄目だ!!
引き金を引く!!
「オーバー・ヒート発動!!」
ダッーン!!
素早さMAXを生かし、俺は横っ跳びにベルンに飛びつき彼を助けた!!
間一髪!!
パウルの撃った弾はベルンをそれて甲板にめり込んだ!!
くそっ!!許せん!!
違う、違う!!こんなところで「海賊力」を使ってはいけなかった!!
俺はすぐに「オーバー・ヒート」を解除する。
「な、なぜ助けた?」
ベルンはビックリした顔で俺に聞く。
その質問に俺はビックリする!!
確かにそうだ!!
俺自身、あの部屋に捕まっていた男共やムンクを助ける為に、何人もパウル側の海賊をやっつけているではないか。
それをなぜ今更?
それも大事な「海賊力」を使ってまで!!
くそっ!!多分、戦いの最中にベルンと会話をしたのがいけないのだろう。それと中途半端に大怪我を負わせた事がいけなかった!!
何か助けなければいけないような気になってしまったのだ。
「がっはっはっ」
それとこいつのせいだ!!
パウルは俺の行為をどうとったのか、さも馬鹿にしたように笑う!!
絶対にこいつはぶっ倒す!!俺は心で誓う!!
それに俺には秘策がある!!
その名も「骨を斬らせて!骨を断つ!!」