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海賊GAME  作者: niyuta
海上の略奪者
10/73

ブルグン対ベルン

あんなハンサム貴族が、海の悪魔と呼ばれるパウル一味のナンバー2だと!?


なんかイメージ違う!!


もっとこう……なんというか……パウル一味のナンバー2なら……片脚もげてるとか、無精髭がぼうぼうとか……なんかあるだろ!!なんであんなアイドル顔がナンバー2なんだ!?


うん?デブッチョを囲んでいたパウル勢がナンバー2とやらを残して、皆、五メートル程後ろに下がった?


ハンサム貴族は細身で、少しだけだが身長も低い。ブルグンと比べると、まるで大人と子供である。


二倍?いや三倍はブルグンのほうが大きく見える!!


遠くから見るとヘビー級と、モスキート級の戦いだ。


「まずいです。ジークさん。ベルンはとんでもないレイピアの使い手らしいんです」


「そうなのか?」


「ジークさん、ブルグンさんを助けて下さい」


ブルグンの手下らしき海賊が俺に言う。


助けてくれ?あんなに強いブルグンを?


「ブルグンは、あんなチビには負けないだろう?」


俺がビックリして言うと、ブルグンの手下は言う。


「普段ならそうかもしれませんが、もう船長は傷だらけです。それに、もう体力が残っていないと思います」


俺は目の前の敵を薙ぎ倒しながらブルグンを見る。


確かにデブッチョは全身傷だらけだ!!


そして今まで一人で、何人もの敵を打ち負かしている。


ブルグンは他の者よりかなり大きなカトラスを武器として使っているが、一体それを何度振り回したのか!?


ブルグンは肩で息をして、少し疲れの色を見せていた。


俺としてもデブッチョを助けてやりたいが、目の前の敵が多すぎる!!


「オーバー・ヒート」を使うか!?いや、これは奥の手である。そう簡単には使えない。目の前の三下共は「ショーテル」の「100」ポイントだけで優に倒せるのだ。


俺が考えていると、ベルンとデブッチョの戦いが始まった!!後少しでそこに着く!!ふんばれ!デブッチョ!!


「おらっ!!」


ブルグンは掛け声と共に大上段に構えたカトラスをベルンの脳天目掛けて振り下ろす!!


ブンッと風の音がここまで聞こえてきそうだ!!


俺は早くも勝負がついたと思った!ブルグンの攻撃はそれぐらいのスピードがある!しかしそうはならなかった。


ベルンは、テレビのアイドルがダンスでも踊るかのような華麗なステップを踏み、デブッチョの第一撃をサイドに避けてかわした!!


力強く振り下ろされたデブッチョの剣は、そのまま甲板に激突し、床を破壊するかと思ったが……


「なんと!?」


デブッチョは剣の軌道を変えたのだ!!


一直線に振り下ろされたカトラスは、スピードが落ちる事なく直角に曲がり、横に逃げたベルンを襲う!!


なんという技だ!!いや、筋力なんだ!!


横に一閃したデブッチョのカトラスは確実にアイドルの身体を真っ二つにするかと思われた!!


しかしアイドルは軽いバック・ステップでデブッチョの攻撃をかわす!!


二人とも信じられない動きだ!!


そして一度後ろに下がったアイドルが次の瞬間前に出た!!


ギンッ!!キンッ!!キンーッ!!


ブルグンとベルンの攻防が始まった!!


ベルンの動きが速い!!なんだ!?あの動きは!?


素早いだけでは無い!!攻撃の回転も速いのだ!!


ブルグンが防戦一方だ!!パワーだけの勝負であれば、ブルグンの圧倒的勝利であろうが、これは剣と剣の戦いだ。力が強いだけではどうしようもない。


一撃!ただ一撃を与えれば、ブルグンはベルンを粉砕出来るだろう!しかしその一撃が出来ない!!


まずい!!ブルグンがベルンの速さについていけてない!!


ブルグンの肩に、腕にとレイピアによる傷が増える!!


まだ、俺の所からブルグンの所までは距離がある!!


どうする!?「オーバー・ヒート」を発動するか!?


俺が今にも「オーバー・ヒート」を発動させようとしていると……


プッ!!


ブルグンが口から何かを吐いた!!


その何かはベルンの顔めがけて飛ぶ!!


「くっ!?」


ベルンはその何かを、首を捻ヒネって避けた!!


な、何が口から出たのかと思えば、ブルグンは口から血を飛ばしたようだ!!戦いの中で口に溜まった血をベルンの目に向けて飛ばしたのだ!!


首を捻ヒネってブルグンの血を避けたベルンの体勢は崩れている!!


「死ねっ!!」


そこに向けてブルグンは剣を横に薙ぎ払う!!


体勢の崩れたベルンは、いつもの華麗なステップを踏む事が出来なかった!!


ガッツっ!!!!


かろうじてベルンはレイピアを縦に構えてブルグンの剣を受ける!!


しかし、これがいけなかった!!


あんな細身の剣でブルグンの怪力を受け止められる訳が無い!!


俺は思った!!


ベルンの剣はへし折られ!!彼の身体は真っ二つになる!!


しかし!!


ブワッ!!!!


チビで体重が軽いのが幸いしたか!?


ドガッー!!!!


ベルンの剣がブルグンの剣と接触した瞬間、ベルンは身体ごと吹っ飛ばされる!!


そして甲板の床に叩きつけられ、少し離れた場所までゴロゴロと転がる!!


顔がアイドルのせいか、その転がり方も洗練されているように見える!!


「ベ、ベルンさん!?」


「ベルンさん!!」


パウル勢の海賊が口々に叫ぶ!!


か、勝った!!


ブルグンは嫌いだが、俺は内心喜ぶ!!ブルグンは生き残り、敵のナンバー2という男を倒してくれた。


これで後の展開が楽になる。


しかし!


「くそっ!?噂以上だなっ!?」


ブルグンが悔しそうに言う!!


どういう事だ!?俺が不思議がっていると、甲板の床に叩きつけられて、仰向けに倒れていたベルンがムクリと立ち上がる!!


そして昼寝から覚めたかのような軽い様子で、自分の服の誇りを払った!!


な、なんということだ!見るからにノーダメージだ。信じられない……


ブルグンの剣で吹っ飛ばされたのではないのか?


「ベ、ベルンさん?だ、大丈夫ですか?」


ベルンの仲間の一人が心配そうに声を掛ける。


「自分で跳んだんだ」


ベルンは少し怒った顔で言う。そして仲間にみっともない所でも見られたと思ったのか、少し恥ずかしそうである。


そうか!?そういうことか!!とてもブルグンの怪力をあの細い剣で受け止める事は出来ない。だから、デブッチョの攻撃をレイピアで受けた瞬間に、同じ方向に身体ごと飛んでブルグンの攻撃の威力を殺したのだ!


「卑怯者っ!!」


ベルンはブルグンを怒りの形相と思われる表情で睨みつける!!


くそっ!アイドルは何をやってもアイドルだ。


本人はもの凄い形相で睨んでいるつもりなのだろうが、いかんせん、顔が可愛すぎる!!


怒った顔がキュート過ぎる!!こんなん、美少年好きな足の遅い女共が見た日には、むしゃぶり付きたくなるに違いない……


なんだ!?これは!!このタイミングで緊張感に欠ける!!


今まで、変なところにリアルを追求しておいて、ここに来て美少年好きな女共に尻尾を振るとは最低なクソゲーだ!!


エンターテイメントをなんと心得る!!と怒鳴りつけてやりたい!!


「許さないぞ!この卑怯者!!」


死ね!死ね!死ね!


俺は急にこのアイドル顔が嫌いになった!!


「卑怯者だと!?殺し合いに卑怯もクソもあるかぁ!!」


「なんだとぉ!!」


「正々堂々が正しいと思えるなら!!それはお前が世の中を何も知らないと言っているのと同じ事だ!!」


ブルグンは吠える!!


素晴らしいぞ!!デブッチョ!!俺は逆にお前ぐらいにひねくれてる奴の方が好きだぞ!!


「くっそー!!もう許さないぞ!!」


くそっ!!いう事まで可愛い!!


いったい、この【海賊GAME】は何を目指しているゲームなんだ!?


あいつっ!?


真っ直ぐにブルグンに突っ込んで行きやがった!!


頭に血が上り過ぎだ!!ブルグンの怪力で殺されやがれ!!


「馬鹿め!!死ね!!」


ブルグンが大上段に構えたカトラスをベルン目掛けて振り下ろす!!


とんでもない一撃だ!!


あんなんを頭に受けたら一瞬で脳みそが飛び散りそうだっ!!


このゲームは変な所にリアルを求めるから見たくない!!


ベルンが自分のレイピアを横一文字に構えてブルグンの剣を受け止めようとする!!


「馬鹿め!叩き折ってくれる!!」


駄目だ!死んだ!!


剣は上から下に振りおろされているのだ!跳んで衝撃を殺す事は出来ない!!


あんな細身の剣でブルグンの怪力を受け止める事は出来な……


ガッツッ!!!!


……


…………


……信じられない!!


ベルンはブルグンの剣を受け止めた!!


全身のしなやかなバネで受け止めたのだ!!


ブルグンのカトラスとベルンのレイピアが接触する瞬間!ベルンは己のレイピアを軽く引いた!その動作だけでブルグンの剣の威力を殺したのだ!!


「ぬおおっ!!」


自身の剣を受け止められた事に、ブルグンも驚きを隠せないようだが、そのまま剣に力を込めて、ベルンの剣を叩き折ろうとする。


「えいっ!!」


ベルンは掛け声と共にブルグンの剣を受けている剣に角度をつける!!


そしてブルグンの怪力をするりと受け流した!!


「おっ……」


ブルグンは込めていた力をいなされて、少しバランスを崩しかける!!


「ブルグン!!危ない!!」


俺は叫ぶ!!


体勢を崩されたブルグンに、ベルンの必殺の突きが襲う!!


「やっ!!」


ズシュッ!!シュッ!!シュッ!!


ベルンは一回の掛け声でいったい何度の突きを放ったのか!!


「うぐぅっっ!!」


ブルグンは叫ぶ!!


彼の胸と両膝から血が噴き出る!!


周りからはただ一度の突きに見えたが、ベルンは突きを三度放っていたようだ!!


デブッチョブルグンは、厚い贅肉のおかげで致命傷は免れたようだが……


ズッ、ドッターン!!!!


……音をたてて崩れ落ちる!!


「おっー!!」


「やったー!!ベルンさん!!」


「おおっー!!」


周りを囲んでいたパウル勢が歓声をあげる!!


そしてバウル勢が雄叫びを上げてブルグンに襲い掛かった!!


両膝をやられて、剣を手放したブルグンに、もはや抵抗する術は無い!!

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