黒河中心部
2015年 8月23日 AM10:23 黒河市内
オサー分隊の前方に第四分隊がついた。125mm砲がついていて砲弾も少ないT-90より弾数の多い30mm機関砲が搭載されているBMP-3のほうが効率的に機関銃陣地を吹き飛ばしていった。
ドアの隙間から中国兵が89式ロケットランチャーをBMP-3に発射しようとするが、第四分隊の兵士にドアごとAK-74Mを撃ちこまれ、力なく倒れた。
セルゲイは、OSV-96を折り畳んで95式小銃をアパートのベランダでリロードをしている中国兵に発砲し、彼を射殺した。セルゲイの側に5.8mm弾が着弾し、アスファルトを砕く。
すると、手榴弾がセルゲイの目の前に転がってきた。
「手榴弾だっ!!」
すぐに目の前の土嚢の裏に手榴弾を投げ込んで伏せた。
手榴弾が炸裂し、一袋数キロの土嚢が数個と67式汎用機関銃がセルゲイの背中におおいかぶさった。
身動きが取れないセルゲイに対して中国兵が95式の銃剣でセルゲイを刺そうとする。
「セルゲイっ!!」
刹那、そばにいたベロフが中国兵に裏拳を食らわし、ゴーグルを粉砕した。
そして、両目から血を流して叫ぶ中国兵の腹を殴り、嘔吐した中国兵に足を絡ませ、地面に叩き付ける。
そしてその中国兵にCz.75拳銃を二発撃ちこみ、中国兵は息絶えた。
「すまないベロフ。」
「・・・やはり白兵戦はむごたらしいな。俺はここまてしないでもよかったのに・・・」
ベロフがそう言う。
普通の人が見れば、不必要な苦しみを与える殺人だと思うだろうが、やはりアドレナリンが分泌されると理性の歯止めが効かなくなる。それに、これは戦争だ。
そんなことを二人が考えていると、土嚢やその周りの地面に銃弾が命中、彼らを現実に引き戻した。
「うがっ!」
機関銃の弾丸がベロフの胸に命中した。
すぐさま彼らを撃った機関銃陣地はT-90に押し潰されたが、ベロフは仰向けに倒れた。
「ベロフっ!!」
セルゲイがベロフに駆け寄る。
「・・・大丈夫だ・・・防弾チョッキに受け止められたが、ちょっと胸に刺さったかな・・・」
ベロフはそういい、AK-101を手に立ち上がる。どうやら無事なようだ。
だいぶ黒河市の中心に近づいてきた。高層ビルの数が多くなってくる。
前方に中国軍の96式戦車が現れた。すかさずT-90が撃破するが、数が尋常じゃない。十両はいるだろうか。前方のBMP-3が砲撃を受けて炎上、爆発を起こして残骸へと変貌する。
「退避ぃぃっ!!」という第四分隊の隊長の叫び声が聞こえてくる。
戦車の砲弾が飛来し、建物の一部が砕け散る。
「航空支援を頼む!座標1-3-6の当たりだ!何でもいいから頼む!!」
オサー分隊長が叫んだ。
すると、
『こちら第百十二戦闘ヘリコプター団第三小隊「ボオーイ・シストラーチィ」だ。指示を乞う。』
四機のMi-28「ハボォック」が低空で侵入してきた。
分隊の中に125mm砲弾が着弾し、T-90も撃ち返すが、いかんせん数が多すぎる。
「1-3-6付近の戦車を全部吹っ飛ばしてアスファルトに埋葬してやってくれ!!」
オサーが叫ぶ。
『シストラー全機了解。攻撃開始だ!!奴等の顔面を太股で挟んで首をへし折ってやれっ!!』
『了解です!・・・太股のつけ根がムズムズしてきました!』
『隊長の毛だらけの太股ならどんな敵でも昏倒させれますよ!』
Mi-28のパイロットが軽口を叩く。
Mi-28がなだれこみ、中国の96式戦車に対戦車ミサイルを発射し、ミサイルは一旦地表と平行に飛び、目標の手前で急降下。
そして、戦車の薄い上面装甲に直撃して炸裂。96式戦車の砲塔の上半分が抉られて炎上した。
すると、中国軍の95式自走対空砲が25mm機関砲をシストラー隊に撃ち込んでくる。
シストラー隊の三番機が95式対空機関砲に撃たれて、機体に多数の穴を穿たれ、煙を機体からはきだしていた。
『おいっ!!リーガル!!大丈夫か!!おい!!』
三番機の機長が叫ぶが、副操縦士はキャノピーごと25mm砲弾にぶちぬかれ、肉片と化していた。
『くそおっ!腐れ対空機関砲がっ!』
三番機が毒づき、95式機関砲に向かってロケット弾を四発発射する。
95式機関砲の車体と砲塔がロケットを喰らって泣き別れ、その間から爆炎がほどばしった。
突如、シストラー隊に対して四発のHQ-7対空ミサイルが飛来してきた。
『まずい!ミサイルだ!!全機フレアを放出しろ!!』
隊長機の言葉で各機がフレアを放出し、羽根を広げたようにフレアが空に踊り出る。だが、シストラー3のみがフレアを撒かなかった。
『シストラー3!!おい!!聞こえてんのか!?』
『フレア発射機が・・・作動しません!!動かないんですっ!!隊長!!隊長・・・』
悲痛な叫び声が聞こえてくるが、他のシストラー機にはどうすることも出来なかった。
ミサイルが飛来し、シストラー1、2、4番機はフレアでミサイルを防いだが、一発のミサイルはシストラー3に矢の如く飛翔していった。
『いっ、やっ、やめろおおっ!!!っああああああああああ!!!!!』
シストラー3が声帯の限界まで叫んだ。彼の声は裏返り、まるで地獄で責め苦を受けている罪人のようだった。
そんなシストラー3の叫び声など聞こえないミサイルは、親の仇のようにシストラー3に突っ込み、瞬間、Mi-28は胴体を切断され、搭載していた弾薬に引火したらしく、Mi-28はすざましい爆発を起こして墜落、破片が雨のように降り注いだ。
『『『・・・・・くそっ!・・・・』』』
隊長のヘルメットのバイザーにシストラー3の爆炎が写し出されていた。
『シストラー3は残念だった・・・』
隊長がそういうと、隊長のMi-28に23mm砲弾が命中し、重い音が響く。
建物の屋上から中国軍のZU-23-2機関砲がシストラー隊に猛然と射撃を浴びせてきた。
『くそっ!!バカスカ撃ちやがって!!誰がそれ作ったと思ってやがんだ!!』
二番機が毒づき、機首の30mm機関砲をZU-23-2に向ける。
その瞬間、シストラー隊の近くで対空ミサイルにやられたSu-25が爆発し、撃墜されたSu-25の重量感のある主翼がZU-23-2に覆い被さった。
Mi-28の搭乗員六人全員が、思わず冷や汗をかいた。
すると、下の地上部隊から通信が入り、戦車の車長が叫ぶ。
『こちらケイソ1。敵の地対空ミサイル部隊が接近している。貴隊は一旦撤退してくれ!!』
『了解』
戦車の搭乗員がそういう。それに対し、シストラーの隊長がそう応答した。
三機のMi-28は、各国の空軍での常識であって、戦死した僚機の飛んでいた所を空けて編隊を組む、「ミッシングマン・フォーメーション」をしながら離脱していった。
『こちらは第五十八対空砲連隊第三小隊「チーストゥイ」隊だ。そちらの部隊につく』
一方の地上部隊ではそういった通信が入り、第四、第二分隊の後方に二両の「ツングースカ」対空戦車がついた。