アムール河渡河
2015年8月22日AM8:58
ロシア軍と中国軍は、国境付近で激しい戦闘を繰り広げていた。
アムール川の対岸からロシアのムスタS自走砲が中国領土の黒河市の中国軍へと砲撃を加え、中国軍の92式装輪装甲車や05式自走榴弾砲が破壊される。
中国軍も負けずに03式300mm12連装ロケットを発射。対岸のロシア軍自走砲部隊をなぎはらう。
すると、Su-25「グラーチェ」攻撃機が03式ロケットを30mm連装機関砲で射撃し、03式ロケットの信管が誤差動を起こして爆発。周りの車両ごと吹き飛んだ。
そしてSu-25に対して中国の95式自走対空砲が猛然と25mm機関砲を射撃する。
Su-25のパイロットは、機体に機関砲弾が命中する嫌な音とミサイルがエンジンに命中する音を聞きながら、
『くそっ!味方の地上部隊へ!下の対空車両をなんとかしてくれ!!機銃はいいがミサイルが目障りだ!!』
と言い、Su-25はフレアを撒きながら離脱していった。
そして、ロシアの自走砲部隊には9K58「スメルチ」自走ロケット砲が到着した。
第三、第四車輪の間にジャッキを挟み、車体を安定させ、発射準備を整える。自走砲部隊には、四両のスメルチが配備されていた。
「炒飯民族どもめ、本家の実力をみせてやるよ!!撃てっ!!」
ロシア兵が車内で叫び、300mmロケット弾がアムール川を越えて飛翔する。ロケット弾は中国領で炸裂。黒煙が上がる。
それと同時にロシア側の岸から世界最大のホバークラフト、ズーブル級が航行を開始した。
ズーブル級は、ロシアが開発した軍用ホバークラフトだ。その大きさはLCACの二倍にもなり、兵員なら360人、戦車なら三両を搭載でき、なおかつLCACは非武装だが、ズーブル級は30mmCIWSに対空ミサイル、ロケット発射機が装備されている。
アムール川の水面を三隻のズーブル級が疾走している。それに気付いた中国軍が我先にと攻撃をズーブル級に集中する。HJ-8対戦車ミサイルがズーブル級の一隻のすぐそばに着弾する。
それに対しズーブル級はロケットとCIWSを上陸地点に投射して、中国軍の戦車以外の装甲車両を吹き飛ばし、CIWSで陣地を掃射した。
「いいか、上陸したらすぐ物陰に身を隠せよ!!」
ズーブル級の艦内で、ロシア軍の中隊長が兵士たちに念を押す。
「了解!!」
「よーし!!上陸まで二十秒!!」
中隊長の声で、第二分隊狙撃手のセルゲイ・ニンバスは、世界最強のアンチ・マテリアル・ライフル(対物狙撃銃)であるOSV-96をしっかり持ち、上陸に備える。
OSV-96は、ロシアがアメリカのバレットM82に対抗して開発した銃だ。
M82の弾丸が12.7mm×99なのに対して、OSV-96は12.7mm×108と強力で、射程は二千メートルにもなり、チェチェン紛争で投入された時は、独立派の掃討に貢献した。
ズーブル級三隻は、黒河市に無事上陸を果たし、ハッチが開くと、ロシア兵や戦車が次々と飛び出してきた。
それに対して中国軍も必死に弾を撃ちこんでくる。
ロシア兵が四人程、機関銃の射撃を受けて倒れた。
「第二分隊続け!!」
「早く!!早くしろ!!T-90に続け!!」
セルゲイは上陸すると分隊長のオサーに追従し、彼の分隊は上陸したT-90に追従する。
すると、上空に巨大な輸送機が飛来、上空をフライパスし、旋回する。その輸送機は、世界最大の飛行機、アントノフAn-225「ムリーヤ」だった。
だが、ムリーヤの黄色と青の塗装は消され、胴体には赤い星が描かれており、ロシアの機体だと言うことを如実に表している。
中国軍のJ-10が迎撃してくるが、護衛のSu-27に撃墜された。
ムリーヤは低空で飛行し、ハッチを開けて六両のT-80U戦車を投下。そのまま旋回して飛んでいった。
「!!??なんでムリーヤが飛んでくるんだ!?あれはウクライナの管轄じゃ・・・」
岩影に隠れつつセルゲイのバディであるベロフが言う。
「そういや日本の大震災救援のため日本にムリーヤが行ったときに日本の奴が「ムリーヤが離陸するなんて無理ーや!」とか言ってたって俺のウクライナ人のダチが言ってたな」
セルゲイが話しかける。
「なんだそれ!ははっ!笑えるぜ!!」
「それって日本人がよく言うダジャレってやつだろ?」
「ダジャレ?そんな風習が「おい!!お前ら!!作戦中に無駄話すんな!死ぬぞ!?」り、了解!!」
分隊長のオサーが彼らをどなりつけた。
「岩影から出ろ!建物沿いに進め!」
オサーが命令する。
T-90が、さっきから撃ち続けていた中国軍の機関銃陣地に主砲を撃って彼らをふっとばした。
彼らの分隊はT-90と共に市街地に突入していく。だが、それが地獄の戦いになることを彼らは知らなかった。