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中露戦争  作者: 集束サイダー
国境
4/55

中露艦隊激突

2015年8月21日 AM10:34


日本海 朝鮮半島北緯三十八度線東方九百キロ 


荒れる日本海上を、ロシア太平洋遊弋艦隊は航行する。


荒波を艦体に受けても、艦隊が一つの生き物になったように隊列を整えていた。


艦隊の編成は、キーロフ級重原子力ロケット巡洋艦「アドミラル・ラーザリェフ」を旗艦に、ミチエーリ級ミサイル巡洋艦「グローム」、オースィニー・ルナー級駆逐艦「オースィニー・ルナー」、ソヴレメンヌイ級「ボエヴォイ」「ブールヌイ」だ。




「これで富士山があれば、富獄三十六景なのにな」


荒波を受ける「アドミラル・ラーザリェフ」艦内で「ラーザリェフ」艦長のマルクス・ギリバエフは呟いた。


ふと、レーダー員が

「艦長!前方五百五十キロに艦隊です!!数は十二隻!!中央の艦は非常に巨大!!」と叫んだ。


「なに・・・!!『ノボシビルスク』はストークにいるから・・・中国の『黒竜江』か!!」

マルクスが推測していると、



「艦長!!前方の巨大艦から飛翔体が射出されました!!」

またもやレーダー員が叫んだ。


「艦載機だ!!やはり空母だ。P-700発射準備!!」


マルクスの言葉で、部下たちが端末を操作し始めた。


「目標は"敵艦隊"左端のコルベットだ!!発射数一発!!」


「えっ!?空母じゃ・・・」


「相手の出方を見る。いいからやれ!」


「了解!!」


「距離五百四十キロ、座標入力!!」


「敵攻撃機十二機、本艦に接近中!!」


CIC内部の巨大なレーダーに、P-700「グラニート」の飛行予定ルートが表示される。そのルートは、敵艦隊左端のコルベットに繋がっていた。



「P-700、オンラインです!!五番VLSハッチ開放!!」


「アドミラル・ラーザリェフ」前方の巨大なVLSハッチが開く。


砲術長が操作盤のロックを解除し、指定されたミサイルのみが発射されるようプログラムされた発射コックを掴む。


「P-700『グラニート』、完全射程内ですが、敵の艦載機と飛行ルートが重なっています!!」


「別にいい!!よし、P-700、発射!!!」


艦長が叫ぶと、砲術長が発射コックを捻り、ロケットが打ち上げられたかのように煙がハッチを覆いかくし、その中からP-700「グラニート」が現れ、オレンジの炎を噴いて飛んでいった。



グラニートとJ-15部隊の進路がお互いに交差し、マッハ0.9で飛翔するグラニートは中国空母から発進した十二機のJ-15と超低空ですれちがった。


『な、何だ!!』


『うああああ!!!』


これをかわそうとしたJ-15の一機が、荒ぶる海面に激突。翼をもがれ、たちまち海中に消えていった。



『いま飛び抜けていったのはミサイルか?』


隊長機が問う。


『間違いないです。六時の方向に飛んでいきました。』


『隊長!空母が!』


『くそっ!黒竜江!黒竜江!!こちら猛熊隊!!ミサイルだ!!ロシアのミサイルとすれちがった!貴隊の西南西200km地点だ!貴隊を狙ってる!!』


『了解!!全艦、対空戦闘用意!!』


『敵艦隊との接触まで四百キロ程度だ。気を引き締めろよ!!』


『了解!!』


十一機のJ-15は、敵艦隊を目指し、低空で編隊を組み、西へと向かっていった。



先程発射されたグラニートは、既に中国艦隊の上で急上昇、超音速で目標へと飛翔した。


「ミサイル来ます!!推定速力マッハ2!!」


「迎撃しろ!!空母をやらせるな!!」


グラニートに向けて、052C型が「紅旗16」を発射。だが、それよりも早くグラニートは目標へと飛んだ。



「あ、あれ!?空母じゃなくてなんでこっちに飛んでくるんだ!?」


「う、うわあああ!!!」


目標にされたコルベットの乗員は慌てふためいた。056型コルベットの玉のような白い艦体に野獣の如くグラニートが突き刺さり、爆発。


全長90m弱の小型艦は切ったピザをちぎるかのように裂け、ゆっくりと海に没した。



「よし!!敵のコルベットを撃沈!!奴等の意表を突いたぞ!!」

マルクスはしてやったりといった顔をして喜んだ。


「敵機、まもなく本艦のミサイルの射程に入ります。」


「射程に入り次第、キンジャールとコールチクを叩き込め」


「了解」


VLSからキンジャール対空ミサイルが十一発放たれ、十一機のJ-15に向かっていった。


『ミサイルだ!!散開!!散開!!』


J-15達は散開したが、キンジャールSAMによって八機が撃墜され、日本海の荒波に飲まれていった。


残りの三機は、ロシア艦のCIWSを巧みにかわすが、ついに一機が被弾し、バランスを崩して墜落した。残りの二機は対艦ミサイルを二発ずつ発射したが、ロシアン・イージスの異名をもつ「オースィニー・ルナー」に迎撃され、コールチクCIWSに一機が落とされると、最後の一機がバーナーを点けて離脱しようとしたが、知的財産権の侵害はダメと言わんばかりにS-300Pミサイルを背後から打ち込まれ、爆炎の死に花を咲かせた。


これで空の脅威はとりあえず排除した。


「よし。P-700をさらに二発発射だ。今度は空母をやるぞ!」


「了解!!」


また「アドミラル・ラーザリェフ」からP-700が五秒おきに二発発射され、獲物を求めて飛んでいく。


「か、艦長!」

部下が悲痛に叫ぶ。


「何だ!!」


「六時方向に・・・ み、ミサイル艇・・・多数!!」


「な・・・んだと・・・」


「数は十五隻です!!中国の022型と判明!!」


彼らの後方からは、中国のミサイル艇の大部隊が追いすがってきていた。


「敵艦隊回頭します!!ミサイルは迎撃された模様!!」


「くそっ!各艦、このミサイル艇を排除しろ!!」


「敵ミサイル艇部隊、ミサイルを一斉発射!!百二十発向かってきます!!」


ミサイル艇部隊が彼らに全てのミサイルを発射。その合計したミサイルの数は百二十を越えていた。


「迎撃しろ!!全力をもって迎撃しろ!!」


言われるまでもなく、艦隊のありとあらゆる対空兵器が火を吹いた。


中国の亜音速ミサイルは、ロシアの迎撃兵装にことごとく撃墜され、「アドミラル・ラーザリェフ」に飛来してくるミサイルは全て撃墜された。


だが・・・

「くっ、こちらミサイル巡洋艦グローム。後部ヘリ甲板にミサイル着弾。中国の野郎、この艦は日本の駆逐艦「雷」の擬人化キャラとコラボした艦なんだぞ!!」


グロームにミサイルが着弾し、速力が七ノット低下してしまった。だが作戦に支障はなかった。


「ミサイル艇突っ込んで来ます!!」

ロシア艦隊に、022型ミサイル艇が突撃、手当たり次第に30mmガトリングを掃射してきた。


「速射砲を撃て!奴等を吹っ飛ばせ!!」


マルクスが怒鳴る。「ラーザリェフ」後部の130mm砲が二度発射され、二隻のミサイル艇が炎上した。


そしてミサイル艇が「アドミラル・ラーザリェフ」の艦橋に機関砲を放ち、若干被弾しながらも「アドミラル・ラーザリェフ」の側をすり抜けた。



アドミラル・ラーザリェフは装甲が施されているので大事にはならないが、他の艦はそうも行かず、銃撃で多数の穴が空いていた。


だが周りの駆逐艦なども黙ってはおらず、速射砲やCIWSを駆使してミサイル艇を血祭りにあげていた。


また一隻が「ブールヌイ」の30mmCIWSを受けて蜂の巣になった。


ミサイル艇の残りは二隻だったが、すぐに「オースィニー・ルナー」の130mm砲で一隻が撃沈され、ミサイル艇は一隻に減少した。


残った一隻は、攻撃を巧みにかわし、「ラーザリェフ」の艦橋にRPG-7を発射。


いくら装甲が施されてあっても、成形炸薬弾の前には無力であった。CICの一部が破壊され、マルクス達は吹っ飛んだ。


RPG-7を撃ったミサイル艇はすぐさま130mm砲を喰らって沈黙し、コールチクCIWSに蜂の巣にされ沈んだ。



「うう・・・くそっ、RP・・・Gとは・・・な・・・」


頭から血を流したマルクスはゆっくり立ち上がり、衛生兵が死傷兵を運んでいくのを横目に、「すまないな・・・」と小声で言い、血まみれの頭を押さえつつCICに空いた穴から見える日本海に向かって、「かくれろよ、黒竜江。どんなに時間がかかっても絶対に探し出して沈めてやるからなっ・・・」と吐き捨てるように言った。


血が垂れていくのを見ていると、眠くなってきた。マルクスは、駆け寄ってきた衛生兵の胸によしかかると、そのまま意識を失った・・・



海戦の終わった日本海は、波は高かったが、空は薄い雲がかかっていて、太陽の周りに(ハロー)が出来ていた・・・



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