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中露戦争  作者: 集束サイダー
泥沼戦線
16/55

"盾"を奪還せよ

「軍人よ、サムライたれ」

大日本帝国陸軍大佐 親泊 朝省

釜山沖 海中三十メートル


海中では、二隻のSDVに掴まっている十六人のSEALs隊員がイージス艦「カウペンス」へと向かっている。


しばらくすると、猛然と回転しているスクリューが見えてくる。水面では、たまにミサイルや砲弾が炸裂し、水柱が上がっているようだ。


SDVが「カウペンス」の下につく。


「よし、位置についた。浮上しろ」

隊長のシーリングが言うと、全員がSDVから手を離し、ゆっくりと浮上していく。


そして、水面を突き破り、彼らは顔を出した。


すると、彼らのすぐ上をトマホーク巡航ミサイルが通りすぎ、湾岸施設に着弾して蓮華のように炸裂する。


「チーム2より1へ。ここで別れよう。幸運を祈っているぜ」

「了解だ。ちゃんと生きて帰ってきてくれ」


「ようし!ワイヤーガンを速射砲がある甲板に放て!」

「間違えんなよ!俺らはVLS甲板だぞ!!」


揺れる水上でシーリングが命令すると、八人全員がワイヤーガンをVLSの甲板に向かって発射し、ワイヤーは無事に手すりへと巻き付く。


ちなみに、チーム2の隊員達は一段下の甲板へとワイヤーを放った。


「よし!速やかに登れ!!」

シーリングが言い、隊員達がワイヤーを伝って甲板へと移乗していく。

甲板上にいた乗員が手すりに掴まっているSEALs隊員に対して目を見開いている内に次々とSEALs隊員が拳銃で彼らを撃ち殺すと、残った乗員は一目散に逃走を図った。


下の甲板上では5インチ砲がひたすらミサイルに向かって弾を撃ち込んでいる。ふと、砲が砲弾の発射を停止したかと思うと、艦内から四人の乗員が飛び出してきた。


「ぶっ殺せ」


チーム2の隊長が言うと、二人の隊員がM4カービンを更に刪省したM4E2を彼らに発砲し、彼らは驚いた表情のまま甲板を動脈血で汚しながら倒れこむ。


チーム1隊長のシーリングは部下と共に走りながら後部艦橋へと逃げていく乗員を撃ち殺していき、そのまま後部艦橋に侵入する。


艦橋内部の通路ですぐさま二人の乗員をシーリングが巨大な拳銃で射殺すると、彼らの顔や頭が炸裂して大量の血が通路を通うパイプに飛び散った。


「隊長、一体それは何の銃でしょうか?」

隊員の一人がシーリングに質問する。


「ウェルディ・サバイバーだ」

「そんなのよく手に入れまし・・・はぎゃあっ!!」

突如、水密扉が開け放たれ、M249MINIMI軽機関銃を持った乗員が彼らに向かって機関銃を乱射してきた。


「デキストリン!!」

「うがっ!!」

「まずいぞ!!機関銃だ!!」


直ちに隊員がMP5を発砲し、機関銃を持った乗員は頭を撃たれて倒れる。


デキストリンと呼ばれた隊員が5.56mm×45NATO弾を胴体に多数撃ち込まれて即死、そばにいた隊員も左手の前腕を抜かれていた。


「よし、カゼイン、リチウム。この艦橋を完全に制圧したあと、前艦橋に行くんだ」

「了解」

「了解です」


シーリングの言葉で二人の隊員が通路内の水密扉を開け、急角度の梯子を登っていった。


「ソルビドール、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です・・・」


ソルビドールと呼ばれた隊員が左腕から流れる血を止めるために上腕の止血帯を押さえながら答える。


「よし、このまま俺たちは艦橋を占領するぞ。乗員が拳銃を所持している可能性がある。用心しろ」



「カウペンス」艦橋内部


「十時よりトマホークミサイル二発!!」

「前部VLSより二発のSM-2を発射しろ!!」


イージス艦「カウペンス」のCICでは、人民連邦所属であり、「カウペンス」艦長である報西像が同じく人民連邦所属の乗員に淡々と命令を下していた。


「カウペンス」を奪取したあと、元々の乗員からはミサイル発射などの術を聞き出したあと全員殺害してしまった。


本来ならこの「カウペンス」搭載のトマホーク三十六発を日本の東京に撃ち込む予定だったのだが、突如米艦隊と思われる艦隊が釜山港にトマホーク攻撃を実行してきたため、「カウペンス」を始めとするイージス艦隊は現在防空戦闘に注力している状態だ。


VLSから二発のSM-2が発射され、釜山の沿岸施設に向かうトマホークを同時撃墜せしめる。


「撃墜成功です!!」


オペレーターがミサイルを見事撃墜した旨を艦長に伝えた。


(随分ミサイルがお利口に飛んでいくな。「世宗大王」とは大違いだ・・・)


報西像は口に出さずに「カウペンス」の性能に驚く。部下たちに聞かれたら一大事だ。


「二番速射砲はどうした!?射撃が止まっているぞ!!」

「先程から二番速射砲の応答なし!!」

「ちいっ!!!」


報西像は受話器のような無線機を取り、後艦橋へ無線をかけた。


「後艦橋!!二番はどうなっている!?」

『こちら後艦橋!!特殊部隊が我々をっ・・・うわああああっ!!!!ひいっ!!や、やめてくっ・・・!!!』

「おい、どうした!?」


爆発音が轟き、ベッドのシーツにビー玉を落としたような音が連続して聞こえ、さらに鳥そぼろを包丁の横で叩いたような音が無線機から聞こえたかと思うと、椅子が倒れる音が響く。


「応答しろ!?何があったんだ!?」

突如無線が切られ、二秒ほどの時が過ぎた。


「特殊部隊だと・・・?・・・くそっ・・・全員、拳銃をいつでも撃てるように準備し、水密扉を厳重に閉じろ」


そういうと、報西像は腕を組んで思索を開始した。



SEALs隊員のカゼインは人民連邦人の乗員が血塗れで倒れこんだのを確認して、ドットサイトの付いたMP5の弾倉を引き抜き、新しい弾倉を挿入した。


この部屋にはもう残りはいないだろう。カゼインは外へ出ようとした瞬間、拳銃と共に一人の乗員が喉から紅い血を撒き散らしながら倒れ、そしてそこから相棒のリチウムが現れる。


「危ないところだったなカゼイン。俺が殺らなければお前は既に地獄の油田に落とされてたところだったぜ」

「ああ、すまないな」


彼らはそういって水密扉の段差を跨ぎ、血塗れで死んでいる乗員を尻目にMP5を腰だめで構えつつ再び歩く。


ふと、扉の影から一人の乗員が後ろから彼らに自販機のスチール缶コーヒーを投げつけ、そのまま消火器をふりかざして殴りかかってきた。


「!?」


カゼインのケプラーヘルメットにコーヒーが命中し、カゼインが倒れていくのを横目に、リチウムは振り返ってキンバー・カスタムを乗員に向かって二発発射し、乗員は胸を撃たれ転ぶように倒れる。


「おいカゼイン・・・大丈夫か?一瞬発狂したコメディアンになってたぞ」

「黙れ、余計なこと言うな・・・」


リチウムがカゼインの手を取って立ち上がらせる。


「よし、残りはレーダー室だな。あそこはまだ乗員がいる。制圧するぞ」


そういって彼らはレーダー室の水密扉の前に立つ。ふと、拳銃を発砲してきた乗員をリチウムが射殺する。


「奴らは引き込もってしまったようだぜ。末期のクラック中毒みたいな」


カゼインはC4爆薬が詰まったプラスチックケースを取りだし、そのC4爆薬にワイヤー・リールをさし込み、そこにM4電気信管を差し、さらにそこへM57発火具を接続し、発火具のロックを外して爆破準備を終える。


そのC4をテープで扉に貼り付ける。ふと、また一人乗員がいたのでリチウムがMP5を撃って射殺した。


「これはクレイモア用だが・・・いけるかな」

「ちゃんと装備を揃えような」

「合図で突入するぞ。ぜん虫どもを取り残すなよ」

「よし、行くぞ!!」

そういってカゼインがスイッチを押すと、水密扉が物凄い勢いで爆発して奥に吹っ飛び、二人はMP5を構えて内部に突入した。


二人の乗員が飛来した水密扉に全身の骨を砕かれ、他の乗員たちが世界の終わりのような驚いた目をしながら拳銃を構える。


リチウムとカゼインはそんな彼らを訓練のように射殺していく。乗員の一人がまたもや消火器で殴りかかってきたが、カゼインは剣道の飛び込み面のように一気に間合いを詰め、彼の眉間をMP5の銃床で打ち砕いた。消火器がカゼインの後ろに空しく落下する。


「こっ、こちら後艦橋!!特殊部隊だっ!!特殊部隊が我々を・・・ ひっ!!」


席について無線通信をしていたオペレーターが恐怖で叫び始める。そんな彼にリチウムがMP5の銃口を向けた。


「うわああああああ!!!ひ、ひぃっ、やめてく・・・」


瞬間彼はMP5の9mmパラベラムを二発受けて端末に体を打ちつけ、椅子と共に倒れた。


『おい!!応答しろ!!』


リチウムが艦長らしき声が聞こえてくる無線のスイッチを切り、無線機をもとに戻す。


すると、生き残りだろうか。五人ほどの乗員がそそくさと別の水密扉から逃げていった。


「逃げたな」


カゼインが一目散に彼らの後を追おうと、水密扉のハンドルを回し、扉を開く。すると、逃げていった乗員の一人の背中が見え、すかさずMP5を撃ち込むと、乗員は頭を撃ち抜かれて下りの梯子から下へと落下していった。


「まずは一人」

「おい待ってくれよ。一人で進むな!」


カゼインは追いかけてくるリチウムを尻目にMP5の弾倉を取り替え、レバーを引き、そのまま梯子の端っこをつかんで滑り降りる。


そして廊下に出ると、休憩室に退避する乗員たちの足が見えて、すかさずカゼインがスタングレネードを休憩室に投げ込む。


リチウムが梯子を滑り降りて休憩室に向かうと、休憩室が閃光と轟音に包まれ、その中に飛び込んでいくカゼインが見えた。


「おいカゼイン!!!」


カゼインは乗員たちにMP5を乱射していたが、突然横から拳銃を持った腕が伸びたかと思うとカゼインの頭を撃ち抜き、カゼインはそのまま倒れこんだ。


「カゼイン!!!」


リチウムが直ぐさまカゼインを撃った乗員の顔面に掌底を打ち付けて乗員の顎を砕き、そのまま肘を彼のこめかみに入れて無力化したあとにキンバー・カスタムを彼の心臓に撃って彼を殺害した。


リチウムはカゼインに駆け寄るが、カゼインは頭を撃ち抜かれて即死しているようだ。


「カゼイン・・・今はお前を連れてはいけん・・・あとだ。あとで連れ帰ってやるからな・・・」


リチウムはそういってカゼインを仰向けにし、バラクラバを外してやって休憩室のソファーに寝かせる。ソファーからこんこんと血が流れていく。


突如シーリング隊長からの無線が入る。リチウムは応答するためにスイッチを入れた。



「カウペンス」前艦橋内部 司令室前


前艦橋の最上階で、シーリングは呆然としている乗員の頭を掴み、パイプに何度も叩きつけて乗員を殺害する。


血塗れで崩れ落ちる乗員を尻目にシーリング隊長は後艦橋の部下に無線でコールをした。


「こちらはシーリングだ。大丈夫か?」

『こちらリチウムです』


しばらくすると、部下であるリチウムが無線に出たようだ。トーンの低い堙鬱(いんうつ)な声が聞こえてくる。


「状況はどうだ?」

『後艦橋を完全制圧しました。ですが、カゼインが死亡。それと扉を一つ破壊しました』

「そうか・・・一分後に救難ヘリ隊が補欠の乗員を輸送してくる。その時に回収してもらえ。通信終わり」


そういってシーリングは無線を切った。残りは艦橋司令室のみだ。CICも既に押さえてある。


シーリングは目の前の重厚な水密扉にC4爆薬の塊を設置し、起爆スイッチのロックを外した。



「カウペンス」艦橋内部 司令室


「発射!!」

艦長の報西像が励声すると、後部VLSから八発のSM-2が炎を吐きつつ八発のトマホークに促追し、その全てを撃墜した。


「艦長!!SM-2残弾無し!!」

「前部速射砲残弾二発です・・・あっ!たった今弾薬欠乏しました!!」

「CIWS一番、二番共に残弾無し!!」

「装填用員急げ!!どうした!居ないのか!?」


司令室内は騒然となっている。SEALsの攻撃で艦内が撹乱されたため、多数の乗員が死亡してしまっているのだ。


報西像は苛立ちがつのったのか立ち上がる。ふと、凄まじい爆発が起こり、水密扉が彼に向かって飛来し、水密扉に胴体を切断された彼は水密扉と共に艦橋のガラスを突き破って外に投げ出された。報西像は夢うつつのような感覚に襲われながら目の前の光景を凝視した。水密扉のあった場所からつぎつぎとなだれ込んでくるアメリカ軍特殊部隊の姿、そして迫ってくる海面。

彼は、そのままどこまでも青い海の中に吸い込まれ、二度と浮かんでくることはなかった。


そして、ほかの乗員たちも即時にシーリングたちに撃ち殺され、たちまち司令室は血の海となっていく。そして、彼らの死亡を確認したシーリングたちのすぐ前を、MV-22「オスプレイ」が高いローター音をひびかせて横切って行った。


「こちらチーム1。『カウペンス』の操舵を確保。繰り返す。『カウペンス』の操舵を確保。」

『ジミー・カーター了解。SDVが迎えに来るだろう。黒ずくめのヒナ共を家に連れ戻すためにな』

「それは有難い・・・」



アメリカ合衆国 ワシントンDC ホワイトハウス大統領執務室


「よーし。イージスは全部奪還したんだな。ああ、そのイージス達は一旦横須賀に回しておけ。それと、第7艦隊はそのまま遊弋させておく。うむ。」


アメリカ大統領はそういって受話器を元に戻した。そして、彼は立ちあがって伸びをする。立ちくらみが起き、大統領はしばらく前傾姿勢を取っていた。


「四日後はNATO会談か・・・中露の牽制と『イスラム国』残党の掃討を扇情せねばな・・・」


大統領はそう呟き、再び椅子に腰を下ろした。



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