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中露戦争  作者: 集束サイダー
国境
11/55

大気圏外からの贈り物

「兵の精強さ如何は全て訓練による。戦いに勝てる軍隊とは、訓練どおりに戦い得る軍隊である」

大日本帝国陸軍大佐 中川洲男

同時刻 ロシア モスクワ軍管区 ボリス・グレブ空軍基地


「高高度早期警戒衛星が飛翔体を探知したと通信が入りました!!」

空軍基地のレーダー管制室内でオペレーターが叫ぶ。


「何だと!!飛翔体の詳細を頼む!」


「はい!!飛翔体は東南から宇宙空間を放物線を描くように飛行し、初期段階で二つの落下物を確認しています・・・!!あっ!今、飛翔体がICBMと判明!!DF-5と推定されます!!」


「くそ!!中国かっ!!防空システムを起動させろ!!」


「着弾予想地点判明しました!!モ、モスクワですっ!!モスクワが狙われていますっ!!」


「何だと・・・くっ、くそっ!モスクワのクレムリンに第一級で通報しろ!!」



ロシア 首都モスクワ 大統領官邸


大統領官邸の会議室では、ロシアの政府高官が集結していた。理由は周知の通り、核ミサイルの事でだ。

高官の中には早く逃げたいようでせわしなく体を動かしている者も居れば、毅然として座っている者もいる。


会議室にまた一人男が入ってきた。

「ボリス・グレブ基地より入電!!『首都ニ核攻撃ノ恐レアリ 首都防空ノ要アリト認ム』とのことです。」


「そうか。下がって構わん。」


それに対して軽く答えたのはロシア連邦大統領のリシャール・ラスプーチンだ。


「さて、諸君。先程から多数の基地から通信が入ってきているのでご存知だと思うが、先程中国が我が国にICBM(大陸間弾道弾)一発とMRBM(準中距離弾道弾)二発を発射している。着弾予想地点はモスクワ、つまり我々の真上に降ってくるという訳だ。」


ラスプーチンはそういい、水差しを掴んでコップに水を注いだ。高官の歯ぎしりが聴こえてくる。


「着弾まであと五分ちょっとだ。既にS-400長距離ミサイルが四十六基、配置について迎撃体制を整えている。もし不安であれば裏に退避用のBe-200が待機している。早く退避したい者は行くと良いだろう。」


ラスプーチンがそういうと、高官の一人が立ち上がり、「それでは、失礼します。」と言って会議室から立ち去った。すると、それに触発されたようで次々と高官が立ち上がり部屋を後にしていった。


結局残ったのはラスプーチン大統領と補佐官、非常事態大臣、対外情報大臣に数名のSPのみだった。


「君達は行かないのか?」

「何をおっしゃりますか。私は何があろうとも大統領のお側につかせて頂きます。」

「そのとおりです。自国民を見捨てて逃げるなどという女のような事はとても出来ません。」

ラスプーチンが問うと、大臣たちは胸を張って本心を口に出した。


「そうか。感謝している・・・ところでレゴヴィッチ君。市民の避難状況はどうなっている?」

「はい。現在モスクワ全域に強制避難命令を発令しており、避難勧告をモスクワ郊外に発令しています。ですが、市民がパニック状態に陥って店舗からの略奪、車両の玉突き事故等が発生している模様です。」


ラスプーチンの問いに非常事態大臣が答える。


「そうか・・・クリナンチェコ君、ミサイルの発射地点と、現在一番中国に近い弾道ミサイル原子力潜水艦を教えてくれないか?」


ラスプーチンの言葉を聞いた対外情報大臣は会議室から一旦出て、しばらくするとまた会議室へと戻ってきた。


「お待たせいたしました。それでは、ミサイルの発射地点は雲南省山間部の中腹に設営されたミサイル基地です。中国軍の核を使用するミサイルの管轄は第二砲兵軍という極秘ミサイル部隊ですが、第二砲兵軍は中国全土に極秘ミサイル基地を設営しているので発射されないと特定は難しいですね。それに中国全土となると、広大すぎて闇雲に探し回るのも効率的ではありません。シーランド公国なら楽勝なんですがね・・・」


彼はコピーした紙をラスプーチンに渡し、紙を指差しつつ説明を始める。外からとてつもない轟音が聞こえ、窓ガラスが揺れた。


「それと、現在一番近い戦略原潜は、カムチャツカ半島沖に展開している戦略原潜『ペンザ』と、千島(ちしま)列島付近を遊弋している『ユーリ・ドルゴルーキィ』の二隻が通常弾頭の戦略ミサイルを満載していますので、迅速に作戦行動が取れる状態です。一応、北極海に『ドミトリー・ドンスコイ』も展開していますが・・・」


「いや、十分だ。ペンザとユーリを千島列島沖で合流させろ。ふむ・・・通常弾頭か・・・負傷者を多数出させるのも戦略だ。ただ全てを消し飛ばすのはつまらんからな・・・」


ラスプーチンはそういい、まるで悪魔が乗り移ったかのような笑いを浮かべ始めた。

ラスプーチン以外の全員がラスプーチンから後ずさりし、屈強なSPも冷や汗をかいていた・・・


ふと、大統領補佐官が入室し、ミサイルの迎撃に成功した旨をラスプーチンらに伝えた。ラスプーチンは、

「そうか・・・よくやってくれた。ところであの腰抜け達は戻ってくるのか?」

と問い、それに対して補佐官は落胆した表情で、

「それが、Be-200が落下してきたミサイルの破片に直撃し、きりもみ状態で市街に墜落したとのことです・・・」

と呟くように言った。



同時刻・・・


モスクワの第673中学校の校庭には、二両のS-400対空ミサイルを初めとする対空ミサイル部隊が展開していた。

DF-5の弾着までもう後二分もない。


『目標へのレーダー照射を開始しろ!!』

指揮官が言うと、S-400のレーダーが目標に火器管制レーダーを照射し始めた。


『目標を確認!』

『全車、発射準備完了しました!!』

『よし!!各車、目標に対して発射を開始しろ!!』


彼がそう言うと、二両のS-400から二発ずつの長距離ミサイルが発射され、龍の如く火を吹きながら蒼天へと舞い上がっていった。

それに続いて数発のトールM2ミサイルが発射されていった。


S-400の飛翔速度はマッハ十二にもなる。だが、ICBMの終末速度もそれに比肩するほど速い。当然、相対速度はマッハ二十を超過しているので、何万メートル離れていても雷鳴など比較にならぬ轟音を轟かせ、退避せんとするモスクワ市民を戦慄させた。


『弾着!!』


指揮官が言うより速くS-400の一発目がDF-5の弾頭の端に命中、それに続いて二発、三発目が近くに命中し、カバーが剥がれ落ちる。そこに四発目が直撃し、DF-5がスピンし始める。スピンしたときの空気抵抗でDF-5のスピードが下がり、速度マッハ四あたりまで減速した。


さらに他のS-400が飛来し、次々とDF-5に突き刺さる。そしてそのうちの一発に弾頭を砕かれ、機能を失ったDF-5は四散しながらモスクワの各地へ落ちていった。


『ツングースカ隊は直ちに破片を撃墜せよ!!』


指揮官が叫び、ツングースカの三十ミリ機関砲が発射され、破片へと曳光弾が伸びていき、破片をさらに細かく砕く。


だが大小の破片は思ったより速く落下したようで、モスクワの各地で爆発が起きた。


『!!??何だ!!何のつもりだあの旅客機は!?』


ふとまだ墜ちていないDF-5の本体のすぐそばをSu-35に護衛されたBe-200が通りすぎたと思ったら、突然Be-200がきりもみを始め、黒煙を吐きながらモスクワ市街に墜落していった・・・

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