王の宣告
世界には、、、いや言い換えよう。俺の住んでいる世界にはファンタジーがあふれている。小説・マンガ・ゲーム・テレビ。世界は虚構に飢えているのか。未来へのトリップ。迫る脅威への反抗。英雄と呼ばれるような冒険譚。見方を変えれば恋愛物だってファンタジーといってもいい。この現代日本であんなハーレムが横行してたまるかっ。
・・・と作品のキャラに嫉妬したらダメだな。冷静になれ。俺よ。
まぁ世界にはファンタジーがあふれている。ガキの頃はあこがれもする。いつもと違う場所・郊外の洞窟は知らない世界とつながってるなんて信じていた時期もあったかもしれない。だけど、それは現実にはならない。
ファンタジーっていうのは現実じゃないんんだ、。実在しないからこその非現実なのだ。
それでもそんな世界が、剣と魔法の物語や巨大ロボットが戦う幻想が俺にとっての現実にならないかと妄想に浸るだけ。・・・いや、だった。いま俺の目の前のこの光景と現実は、確かに非現実の世界だった。望んだものが、確かにそこにある。体が熱くなり知らない世界にいるのことの不安なんて考えもしていなかった。これから何が起こるのか、その期待に一杯だった。
でも、考えてみれば当たり前のことを俺は気が付かなかった。俺が知っている幻想は"物語"だったってことに。物語ってのはご都合主義があったりメインキャストの活躍が見れるよう補正があったあったりするものだ。いわゆる主人公補正なんて言われるような。だけどこの異常な体験は自分を物語のキャラクターと同一視させるのに十分だったのだろう。
だけどそんな幻想はすぐに崩れさることになる。
期待に胸を膨らませている俺に姿を見せるものがいた。綺羅びやかな衣装をみにまとった筋骨粒々の大男。そしてその頭上には金に輝く王冠があった。
(おう・・さま?王様!?すげぇ!本物だよ!俺は来たんだ。もう妄想でも白昼夢でもない望んでいた世界に!!)
二人の従者を従えた王は、従者と何かを話し合いそして俺の方へ振り向いた。
(おぉ!何を言われるんだ?やっぱりあれか。よく来たな勇者よとかか?勇者になっちまうのか!?俺は?!)
興奮を押さえきれない。目を見開き言葉を待つ。そして王のはなった一言は俺を現実に引き戻すに十分だった。
『よく来たな。我らが尖兵。異界の隷属者。』
・・・俺は頭が真っ白になった。