表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

裏切の美徳

2色目        『裏切りの美徳 2』



小学校時代、保健体育の先生(女)が女子に向かって言っていた。


「口でさせてくれと強請るような男は碌な奴がいないから、そんな奴の言うことは


聞いてはいけない」と。


先生・・・あれから数年、俺は碌でもない男になりました。心だけ。





嫁さんとはクラスが違うので、授業中は退屈極まりない。


こういった町だから授業中誰かが教室から出て行っても教師は何も言わないし、


教師もただ教科書を読み上げているだけで勉強を教えようって気など初めから


持ち合わせていないという学級崩壊の前に既に根本から崩壊している俺たちの学校。


この町にある学校はどこもそうだ。


みんな、ただ「行くように」と言われているから学校へ行き「教科書の内容を


教えるように」と言われたから教科書に載ってあるそのままの文章をそのまま


読むだけの教師の授業を言われた通りに受けて時間になれば家へ帰る、


そんな決められたレールの上だけを歩くだけのような生活を送っている。


俺は勉強がそこまで嫌いではないので教師の音読はBGMとして聞きながら


通販で購入した参考書などを勝手に授業中に開いて問題を解くのが日課。


「おい、弟塚」


声を掛けられたので顔を上げれば同じクラスの・・・えっと・・・なんとか


文則・・・?が


俺の席の前に座っていた。


あれ、俺の前の席って違う奴じゃなかったっけ?


「なんだよ。俺今忙しいんだけど」


「金貸してくんない?今日、弁当忘れちゃって」


「悪い。俺、今月色々と厳しいから他人に貸す金は持ってないんだ」


「そっかー・・・残念。じゃあ他の奴に頼むわ」


そう言ってなんとか文則は授業中にも関わらず部屋の中を歩き回り、


クラスメートに金の無心をしていた。


はぁ、こんな状態でも教師は何も注意をしない。


本当にこの町はつくづく人間というものが視界に入っていないのだな。


ふと窓際のほうに目をやると一番後ろの席に座っている男子が女子を膝の上に


乗せながら舌と舌でレロレロしながらディープな接吻を無我夢中でしていた。


見せつけか?見せしめか?あぁ??




・・・はぁ・・・俺もあんなキスをしてみたい。


「・・・嫁さん・・・」


シャーペンを置いてポケットから携帯電話を取り出して嫁さんへお誘いのメールを


送ってみる。


『午後、学校を抜け出さないかい?』


数秒後、嫁さんから返信。


『じゃあ迎えに来て』


「OK、OK。全然OK」


直ぐに返事を打ちメールを嫁さんへ送信。


はぁ・・・この胸のもやもやを晴らすには、やはり嫁さんの身体に限る。


今日も思う存分、青少年的不健全育性行為をしようではないか・・・グフフ・・・。


「・・・ん?」


携帯電話の振動に気付きメールボックスを開いてみると、嫁さんからもう1通


メールが届いていた。


『あ、クラスにはいないから。屋上でみんなと集会しているので屋上に迎えに来てね』


「・・・」


愛おしい嫁さんからの返信メールも『みんな』というフレーズを見ただけで、


メールから果たし状へ変わったような気分だ。


はぁ・・・またあいつらに会わなければいけないのかと思うと、胸が苦しい。



月曜日が来て騒ぐ社会人の気持が今ならちょっとだけわかる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ