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裏切の美徳

2色目        『裏切りの美徳 1』


どうして誰も教えてくれなかったんだ。

Hをするよりキスをするほうがよっぽど大変だってことを・・・。





この人間には全く無関心で視界に入れていない名前の無い町の中で


絶滅危惧種の少数派人種がいる。


それを他の一般的な世の中では『ストーカー』と呼ぶそうな。


まあ思い返せば俺がいた中学校は男子中だった。性に敏感なお年頃だと

いうのに、毎日毎日


顔を合わせるのは野郎だけ。


しかも酷いことに学校には男の教師しかいないため、全てにおいて


暑苦しい中学生時代を送らされた。


しかし中学生の性に関する興味は並々ならぬモノがあり、


耐え切れない奴らはよく同級生を体育倉庫や放課後の教室で襲っては


溜め込んだ熱を襲った生徒の中へぶちまけた・・・とかいう噂も


あったが、どうなんだろう。


ただ、まあ同じ男子中学生でありながら異様に女のような顔立ちを


した奴や、普通の顔して全身から言葉に出来ないフェロモンのような


ものを醸し出していた奴もいたし、もしかしたらもしかするのかも。


現に、俺の真後ろにはそういう事例の奴が一人付きまとっている


からな・・・。




「・・・」


「・・・」


なにしてんのあの人・・・。


纏伊まとい・・・何か用?」


「・・・」


俺の問いに纏伊は首を左右に振る。ていうか用が無いなら


後ろについて回るのやめて貰えないでしょうか。


「纏伊、違う高校だろ?方向逆だよな」


「・・・っ・・・っ・・・」


何だって?


「・・・ぶ・・・文遠・・・って・・・呼・・・んで」


「・・・」


俺の話は無視か。


「・・・っ・・・っ・・・っ」


「何?」


「・・・き・・・きお・・・気をつけ・・・て・・・」


「何に」


「・・・っ・・・っ・・・」


「ス・・・ストォー・・・カァー・・・」


それはお前だろう。


「あー・・・分かった分かった。じゃあストーカーに気を付けるから、


纏伊はさっさと学校へ行けよ


(訳:俺から離れろよストーカー野郎)」


「っ・・・っ・・・っ・・・」


挨拶でも言ってんのか?はぁ・・・もう付き合ってらんねーな。


「じゃあな、纏伊!俺はこれから嫁さんを迎えに行くんで!」


「・・・!!!!」


纏伊の表情が強張った。やはり「俺の嫁さん」というフレーズに


相当な打撃を受けたようだ。


まあ、当然だろ。俺の嫁さんは3枚の御札並みに強くてそして・・・


そして何よりかわいいんだからな!


デヘヘ


気持がよくなった俺は纏伊を無視して嫁さんの自宅へ向かって走り出す。


あいつも所詮はいち高校生。


登校時間になれば嫌でも自分の学校へ行くだろう。


あぁ・・・今日も爽やかで清々しい朝だ。待っていてくれよな、


俺の嫁さん!!!











「・・・っ・・・・よ・・・嫁・・・嫁は・・・げ・・・


元凶・・・う・・・うぅ・・・


雲長を・・・こ・・・殺・・・・っっっ!!!!!」











電柱の後ろに隠れてブツブツ喋っている気持ちの悪い奴を見かけた。


今日も最悪だ。早く最高な日を迎えたい。


そう思いながら、私は学校の反対方向へ歩き出す。



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