プロローグ
(12/03/10)誤字・脱字修正
雲一つ無い青空の下。
どこまでも広がる大草原の中を、二人の人物が歩いていた。
二人とも少し暑いぐらいの気候の中だというのに、全身を黒いローブで包んでおり、さらにフードで顔を隠している。
二人は少し高い丘の上まで来ると、立ち止まって前方を眺めた。
二人の視線の先には、青々と生い茂った木々に囲まれ、太陽の光が反射し眩しく輝いた湖が。
二人の人物の内の、一人が言った。
「……綺麗。こんなに綺麗な場所、生まれて初めて見たわ。
貴方もそう思うでしょ?」
その高い声から女性と思われる人物が、目の前の光景に感動しながら隣の人物に質問した。
「……はい」
その少し低い声から男性と思われる人物が、女性の言葉にあまり共感していない様子でそう答える。
男性の反応に眉を吊り上げる女性。
「本当。貴方ってどうしてそう、無表情で無感動で、ついでに無愛想なの?」
「……すみません。お嬢様」
「……もういいわ」
男性から顔を逸らして呆れる女性。
「それよりも。ここから先がこの国の東部地方にあたりますので」
女性の様子を見ながら、しかしそれを気にすることなく別の話をする男性。
その態度に少しカチンとしながらも、女性は男性の問いに答えた。
「ええ、そうよ。そしてここに例のモノがある。彼の持っていた情報が正しければ、ね」
「おそらく正しいと思います。西は調べ尽くしましたが見つからなかった。つまり……」
「言われなくてもわかってるわよ。
……とにかく、ここからは予定通り別れて探しましょ。
貴方の担当は東部地方を右回りで西地区と南地区、私は左周りで北地区と東地区。
最後の中央地区で落ち合う。いいわね」
「……わかりました」
男性の了承を得た女性は一度頷き、身を翻して目的の場所へと向かっていく。
男性は、段々と遠ざかっていく女性の後ろ姿を少しの間眺めてから、自身も目的地へ向かおうと歩み出す。
しかし、ふと先ほど言われた女性の言葉を思い出して立ち止まり、湖の方を再び眺める男性。
男性は反射して自身を照らしつける光に眉を少ししかめつつ、呟いた。
「綺麗。……確かにそうかもしれない。でも……」
男性は湖から目を逸らし、空を仰ぐ。
「ボクは、それを汚してしまうんだ。自分たちの目的のために」
男性はそう呟いてから、自身の目的地へと歩み出すのであった。
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