プロローグ
(12/03/10)誤字・脱字修正
薄暗い森の中を、一人の男性が走っていた。
その男は恐怖に顔を歪めていた。
まるで何かから逃げている様子のその男は、苦痛に顔を歪めて目には涙を浮かべていた。
「くそっ、くそっ!」
男はある任務でこの森へと入ってきた。
謎の失踪事件を解決するため、仲間と共に調査にやってきたのだ。
しかし結果は……。
自身ともう一人の男以外の仲間達は、全て奴らに殺されてしまった。
無事だったもう一人の男も自身を逃がすため、その身を囮として奴らに一人戦いを挑んでいった。
「何でこんな事に!」
何故こんな事になってしまったのか。
何故仲間達は殺されなければならないのか。
そして、何故自分だけ無様に逃げ出しているのか。
男は、理屈ではわかっていた。
このままでは、調査隊の全員が殺されてしまう。
それでは今さっき遭遇した失踪事件の真相を伝える事が出来ず、さらに行方不明となった自分達を探しに来た者たちにまで悲劇が。
理屈ではわかっている、しかし感情がそれを許さなかった。
それでも今こうして逃げているのは、調査隊隊長の最後の命令を忠実に果たしているからだ。
「必ず、必ず伝えてみせる。そして皆の無念を必ず晴らしてみせる!」
男は涙を拭い、自身の限界を超えて森を駆け抜けていく。
そしてついに森を抜け出し、男は自分達が住んでいた町へと向かっていった。
その様子を遠くの方から何かが見つめていた。
怪しく光るその瞳で男が去っていくのを見つめていた。
それも一対ではない。
無数の瞳が森の木々の中に浮かび上がっていた。
それは黒い羽毛に覆われた鳥達だった。
その内の一羽が鳴き声を上げる。
すると一斉に鳥達は羽ばたき始め、森の奥へと飛び去る。
……森の奥深くから、何かの唸り声があがった。