エピローグ
これで第一章は終わります。
感想・批評・ご意見、お待ちしております。
まだ暗い夜空を見上げ、大の字になって地面に寝転ぶトウヤ。
しばらくの間、そのままの状態で身動きせずに考える。
何とか助かりました。一体ボクは何回死に掛けたんでしょうか。
一度や二度では無いことは確かです。
文字通り九死に一生を得た。そう言っても過言では無いでしょうね。
トウヤはゴリオの方に顔だけ向けた。
そこには自分と同じように疲れきった顔で、しかし無事だった事に安堵するゴリオの姿が。
トウヤはふと思った。
ゴリオさん、これからどうするんでしょうか。
山賊達は全滅し、親分さんは既に亡くなってしまった。
自分の居場所が無くなってしまったんです。きっとこれから大変でしょうね。
ゴリオの未来を想像し、不安を募らせるトウヤ。
だがトウヤは、すぐさま決意した。
ボクの為に山賊達と命を懸けて戦ってくれたんです。
ゴりオさんがどうするにしても、最大限協力してあげなくては。
それがボクに出来る精一杯のお礼ですね。
再び天を見上げ、さらにトウヤは思う。
改めて考えてみると、ゴリオさんの事を加え、問題は山済みですね。
自衛団の人達、というかレイラとレイナはいつ来るのか。
山賊達の後始末をどうするべきか。
あの化け犬の事をとかどう説明すればいいのか。
というか、いつからここはファンタジーの世界になったのやら。
……まぁでも。
「何とかなるでしょう」
トウヤは目を瞑り、小さく呟く。
それを、いつの間にか消失時間を終えて姿を現していたカズマが聞いて、笑い声を挙げる。
「ハッハッハッ! だいぶ考え方が卑屈じゃなくなってきたな。ホント少~しだが成長したな」
トウヤの顔の上で、何度も頷くカズマ。
「……カズマさん。ありがとうございます。今回の事もそうですが、今まで何度も危機から救ってくれて、本当に感謝してます」
「いいってことよ! 俺が好きでやったことだからな、気にすんじゃねぇよトウヤ」
「はい。……あれ? ボクの名前」
初めて呼んでくれた? いや確か牢屋で助けを求めた時も。
自身の呼び方が変わっていることに気付くトウヤ。
驚いているトウヤにカズマは言った。
「まぁ今まで自分の事しか考えないで、しかも逃げ続けてきたお前が誰かの為に、まぁ逃げるだけとはいえ覚悟した」
それに、と続けて。
「あの駄犬を一瞬でも足止めする事が出来た。お前にしては上出来を通り越して奇跡だぜ。
あの戦いに関しては確実にお前のおかげで勝てた。まぁほんの少しだが認めてやんよ、まだまだだがな」
そう言って顔を赤くし、そっぽを向くカズマ。
「……どうもありがとうございます」
カズマのツンデレな態度に少し気持ち悪いものを感じたが、それでも誰かに認められて嬉しくなるトウヤ。
ボクはほんの少しだが成長することが出来たんでしょうか。
結局、ボクがやった事は実を投げただけ。大した事をしたとは思えません。
でもあのカズマさんがそう言うんだったらそうなんでしょうね。
確かに逃げる事しか出来なかった自分にしては上出来、とトウヤは改めて思った。
そんな風に考えていると、はるか遠くの方から声が聞こえてきた。
「トウヤ!」
聞き覚えのある声に、トウヤは起き上がりながらそちらの方に顔を向ける。
見るとそこには二つの影。レイラとレイナの姿があった。
「あ、助けに来てくれたんですね。お~い!」
胡座をかきながら、手を振るトウヤ。
その姿を確認し駆け寄ってくる二人。
「これでやっと村に帰れます」
帰ったらまずは寝よう。もうヘトヘトです。
トウヤは疲れきった顔で、しかし笑みを浮かべながら、そんな事を思った。
- 第一章 完 -
あとがき
これにて第一章を終わり。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
一段落付いて作者もホッとしています。
今後もトウヤの冒険は続きますので、読んで頂けると幸いです。
それではこの辺で。