第3話
「メル、昨日は疲れただろう。ゆっくり休めたかい?」
広いテーブルに並ぶ朝食を前にお父様が私に問いかけた。
「ええ、お父様。大丈夫です」
私がそう言うと、少しホッとした顔をした後疲れたように項垂れた。
「メル……実はな、昨日のお披露目のせいでメルの可愛さが知られてしまった」
何を言い始めるのかと思ったらまたか。
スン……と表情が抜け落ちてしまう。
「それで早速、求婚の手紙が届いている。それも、7件だ……!全く、どいつもこいつも信用ならん害虫どもめ。どうせ今からまだ増えるだろうが、このお父様が握りつぶしてあげるからね?」
任せろというように笑うお父様に呆れる。
いや、助かるけど、それ、私結婚できなくない?
「貴方、いい加減にしてくださいな」
お父様の横からお母様が窘める。
「メル、気にしないで。それよりも、気になる殿方はいたかしら?」
嬉しそうに笑うお母様。
面目ない。全く、一人も、顔なんて覚えてない。
「いえ……昨日はそれどころではなくて」
視線を逸らして誤魔化すと「そうよねぇ」なんてのんびりと言われる。
非常に申し訳ないのだが、この世界のイケメンに一欠片も興味がない。ときめかない。マジで、うっすい顔だなぁという感想が沸いて、次の瞬間にはどんな顔か覚えていないのだから。
それに、私と顔を合わせると大体の人が会話にならない。惚けるか吃りすぎて何を言ってるか分からない人ばかり。
非常に困る。私はまともに会話ができる人がいいのだ。
「メルはずっとこの家にいていいんだよ」
右からタレ目で優しい長兄であるアレンお兄様。
「そうだぞ!嫁に行く必要なんてない」
左から明るく頼りになる次兄のブランお兄様。
どっちもあっさり顔ですごくモテモテなのに、婚約者すらいないのはきっと私に構いすぎだからだ。
「あ〜、あはは……そんな訳には、行かない気も、しますが……」
その発言はどうなんだと思いながらも曖昧な返事をする。だって、出来れば好みの男性とお付き合いしたいし……。
これからの人生設計に悩んでいると、お母様は首を傾げる。
「じゃあ、どんな方がいいかしら?」
どんな人と言われても……。
不細工な人がいい、なんて言える訳もなく言葉を探す。
「えっとぉ……強いて言うなら、お強い人ですか、ねぇ?あと、私の内面を見てくれる人で……」
容姿を気にしないと遠回しに言えば「あらぁ」と楽しげに声があがった。
「そうよねぇ!メルをしっかり守ってくれる方がいいわよね!」
「ええ、そうですね。外見は気にしませんので、お互いをよく知ってからがいいです」
我が儘かもしれないが、タイプでも無い顔に自信ありげに迫られるときついものがある。せめて、性格だけは……そしたら友人にならなれる、と思う私だった。
「うんうん、そうだね。お父様がしっかり吟味するからね」
そう言ってニコニコしているが、私の元に話が来ないというのは分かりきっている。お母様も分かっているのか、ジトリと疑いの視線を向けていた。
「これから不審な人物が寄ってきたら迷わず僕に相談するんだよ、メル」
「そうだぞ。変なやつは俺らが対処するからな」
シスコンすぎるアレンお兄様とブランお兄様の言葉に「あはは……」と苦笑した。
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4月に入ってからはのんびり週4回くらいの更新予定:( '-' ):




