さきず
誰にも見えない場所で
芽吹いた願いがひとつ
名前もないまま
瓦礫の隙間で息をしてる
光を欲しがるでもなく
誰かに褒められるでもなく
ただ君の孤独に
そっと寄り添えるならと
風で千切れそうな穂を
拾い集めて土に還す
それが涙の跡に
静かに根を張ることを信じて
もう一回もう一回
その沈黙の奥にある叫びを
誰かの「大丈夫」に
置いてけぼりになった夜
空の端に私は咲いていたい
たとえ枯れてもいい
心に灯りを残せるなら
一瞬でも
それでいい
時の波にさらわれても
誰にも見えない場所で
芽吹いた願いがひとつ
名前もないまま
瓦礫の隙間で息をしてる