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Ⅱ. 異世界・夏① 初戦

勝利は、危険のなかにこそ存在する。

                          -ジョージ・S・パットン


 転生からときは流れ、季節は夏。夏期休業直前の今日、我々は期末試験として模擬戦を行うこととなった。


 模擬戦の形式は候補生の一対一のトーナメント。順位ごとにそれぞれ点数が割り振られており、その点数がそのまま実技の成績の一部となる。最も期末試験は実技だけでなく学科もあり、実技で初戦敗退となっても学科で優秀に修めれば退学だの留年だのにはならない。が、それでもトーナメントの上位のほうは特に高得点であるので、皆そこを目指して頑張っている。


 わたしは校舎のエントランスに掲示されたトーナメント表を見、自分の場所を確認する。


「あら、エミール、あなたの初戦の相手、ドゥボワじゃない」


と、隣で表を見ていたエリシアが言う。


「ドゥボワ? 誰だ、それ。ああ、あの人か、思い出した」


ドゥボワ。本名はシャルル・ドゥボワ。確か土属性術式の扱いで他より抜きん出ている奴だったか。


 土属性の術式には防御系が多い。わたしの戦闘スタイルはオールラウンダーなほうだが、強いて言うならば攻撃系のほうが得意だ。攻撃系対防御系。面白い戦いになりそうだとわたしは思う。


「......これ、エミールとは決勝戦になるまでぶつからないわね」


「そうなのか?」


エリシアに言われてわたしはエリシアの場所を探す。と、確かにそうだった。


「じゃあ、一戦やるにはお互い決勝まで勝ち進まねばな」


「そうね。途中で敗退なんて無様な真似はしないでよ?」


「君もな」



 それからエミールたちは会場である闘技場に行く。闘技場には半径三百メートルの真円状のアリーナが二つあり、それぞれの周囲には約一万人を収容可能な観客席がある。またアリーナと観客席の間には結界発生装置があり、アリーナで発せられた術式が観客席に飛んで被害を出さないようになっている。


 試合の番はエリシアのほうが先だった。エミールは観戦するべく、エリシアが戦う第二アリーナに行く。


 エミールが第二アリーナに着き、席を確保したとき、ちょうどエリシアと対戦相手がアリーナに出てきた。エリシアの相手はアリストテル・シャドウハート。名門魔道士一族の御曹司で、光属性術式の扱いに長けていると聞く。対するエリシアは水、木属性術式を得意とする。


 そして遂に、戦いの火蓋が切られた。


 先に攻撃に打って出たのはシャドウハートだった。力強く地面を蹴り、一気にエリシアとの距離を詰める。そして術式・光輝刃を発動。輝く光の刃を召喚し、エリシアに斬りかかる。斬撃の威力はすさまじく、刃が空を斬ったときの衝撃波が防護結界に激しくぶつかる。が、少々この攻撃は隙が多いとエミールは見ていて思う。威力は申し分ないのだが、エリシアには避けられた。そしてエリシアは一瞬でシャドウハートの六時を占位し、術式・蒼翠之氷華(水と木のエネルギーを融合させて美しも鋭利な花弁を持つ氷華を召喚し、それの回転切りで対象を切り刻む)をたたき込む。シャドウハートは完全に隙を突かれた訳だが、さすがは名門一族の子、とっさに術式・輝聖循を発動し、光の楯でエリシアの攻撃を凌いだ。


 それから二人はいったん距離を取り、互いの出方を伺う。


 今度はエリシアが仕掛けに出た。術式・緑浸透之波紋を発動。シャドウハートの周りの地面に木のエネルギーを浸透させ、そこから鞭のようにしなる幾本もの木の枝を召喚、シャドウハートを拘束しにかかる。シャドウハートは光の剣を召喚してそれらを斬りながら回避する。間髪入れずにそこへエリシアが追撃。術式・水霧幻影でシャドウハートの五感を惑わせてから術式・水流砲を撃ち込む。エリシアのこの連続攻撃にはさすがのシャドウハートも回避しきれず、被弾。シャドウハートは超高速で発射された水のエネルギー弾に吹き飛ばされ、力尽きてその場に倒れた。ここで終戦。初戦はエリシアの勝利で幕を閉じた。

 


 アリーナを去り際、エリシアがわたし、エミールのほうを向いて手を振ってきた。そして、なにやらハンドサインらしきものをしている。そのサインが「今度はお前の番だ、無様に負けたら承知しないぞ」という意味だということはわたしにはすぐにわかった。わたしは「わかっている」という意味のハンドサインをエリシアに掲げ、自分の試合の準備をしに行くべく、観客席を後にした。



 エミールは観客席の下の廊下を通り、アリーナに出る。対戦相手もほとんど同時に出てきた。エミールの相手は土属性術式において右に出るものはいないと言われている男、シャルル・ドゥボワ。


 両者にらみ合い、審判の「対戦、はじめ!」の号令と同時に戦いに火蓋が切られる。エミールはまず、小手調べに術式・炎矢を繰り出して攻撃する。それに対してドゥボワは岩の壁で防御。そこから攻撃に転じる。ドゥボワは岩の鎚を作り、エミールに肉薄して振り回す。エミールはそれを避けることなく、炎の剣で受け止め、岩の鎚を切断する。そこから間髪を入れずにエミールは術式・烈炎震を発動。ドゥボワの周囲の地面を激しく揺らし、さらに巨大な炎の柱を作り出してドゥボワを閉じ込める。


 勝負は、エミールの勝利に終わった。ドゥボワは岩の壁で自身の全周を覆って防御したものの、岩が火柱の熱に耐えられずに融解、ドゥボワは降参した。

お読みいただきありがとうございます。


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