Ⅳ. 空を征せ③ ボムズ・アウェイ
毎週木・金・日、15時~20時の間に投稿予定
攻撃目標に接近した。わたしは腰にぶら下げた擲弾筒を手に持ち、投下のタイミングを見計らって各騎に合図を出す。
「今だ、みんな、投げろ」
そう言ってわたしはピンを抜き、投げる。擲弾筒が命中したかどうかの確認は必要ない。投げ終えたら、あとは帰投することだけに集中すればいい。命中か否かは偵察隊の仕事だ。
「よし、帰るぞ。――シュタインハルト隊、ミッションコンプリート。帰投する」
さっきの攻撃だが、命中率は八割程度、上出来だ、と、帰投してからわたしは、教官にそう、攻撃結果を告げられた。一人あたりの投下した擲弾筒の数は三。つまり、単純計算で一人二個ないし三個すべてが命中したことになる。
わたしはその結果を他のメンバー、エリシア、ヤコヴレフ、フィアモーレに伝える。
「やりましたね、エミール。あなたの合図のタイミングは完璧だったと言っていい」
と、ヤコヴレフ。
「一回目よりも格段に伸びたわね、命中率」
と、エリシア。
「ああ、そうだな。でも、結局投げるのはそれぞれだ。わたしが十二個すべて投げるわけじゃない。みんな、よくやったな」
わたしたちは互いにねぎらい合う。
「そういえば、次は要撃班や護衛班も付くのよね?」
と、フィアモーレが言う。
「ああ、そうだな。今度からはわたしたちを迎撃してくる連中がいるぞ。まあ護衛もいるわけだが、そいつらが全滅すればわたしたちを護ってくれるやつはいない」
「ただ落として帰ればいいわけじゃなくなるってことね」
と、エリシア。
「そうだ。そのときは銃なり魔術なりで応戦するか、投下後なら馬に神速かけて一目散に逃げる手もある」
「それなら、投下前から神速で突っ込んで投下し帰投、でもよさそうですね」
「その手もある。が、問題は命中率だな。速いぶん、投下タイミングがシビアになる」
爆撃機ならばボタン一つで投下できるのだが、擲弾筒を手に持って投げるのでは、そうはいかない。
「もたもたしてたらあっという間に通り過ぎてしまうわね」
と、エリシア。
「まあ、そこはどっちをとるかだな。幸いこれは実戦じゃない。撃たれても死にはしないし、いろいろ試してみればいい」
「そうね。――っと、そろそろわたしたちの番が回ってきそうよ」
と、エリシアが言う。
「そうだな」
「作戦はどうします?」
と、ヤコヴレフが訊いてくる。
「ウム、まずは普通の速度で護られながら接近、投下後は神速でさっさと帰ってこよう」
それからわたしたちは再び馬に乗り、飛び上がる。上空ではすでに護衛班が待機していた。四方を彼らに囲まれながら、わたしたちは攻撃地点を目指して飛ぶ。
「エミール、要撃班があがってきたわよ」
と、エリシアが言う。
それとほぼ同時に、護衛班が迎撃に向かっていった。そして四対四のドグファイトが始まる。
「よし、護衛班はうまく釣ってくれたな。今のうちだ、突っ込むぞ」
「「「了解」」」
わたしは高度を下げ、低空飛行で、攻撃目標に突入する。他三人がしっかり付いてきてくれているのが、いま発動中の術式・空間探知(周辺の空間の微細な変化を感知し、対象の位置を探知する)でわかる。それと、護衛班や要撃班の位置も。もっとも敵味方の識別は不可能で、単に位置を知ることができるだけなのでどちらが優勢または劣勢なのかはわからないが。
「いまだ、落とせ」
三人にそう合図し、わたしは三つすべてを投げ落とす。そして高度を上げ、反転すると同時に神速術式を馬にかける。
「さあ、一気にいくぞ」
馬が一気に加速し、一瞬、ガクンと後ろにのけぞる。が、すぐに体勢を立て直し、速く飛ぶことに集中する。
大丈夫だな、他の三人も付いてきている。
空間探知で三人の状況も把握し、わたしは安堵する。要撃班と迎撃班はあっという間に後方に行ってしまった。仮に要撃班が突破し、我々を追いかけたとしてももう遅いだろう。
「ミッションコンプリート。帰投する」
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