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Ⅲ. 吹雪の中の刺客③ 防衛戦

毎週木・金・日、15時~20時の間に投稿予定

 わたしはエリシアと、チームメイトを守る。そう決意し、わたしは襲ってきた敵を探す。


 まず、あたりが暗いのはよろしくない。敵が暗視系の術式を使っていたら、圧倒的にわたしが不利だ。


 そこでわたしは火球術式を発動し、火球を五、六個作る。そしてそれらに普通以上の魔力を注ぎ込み、威力と光度を上昇させ、上空に放つ。火球術式を応用した照明弾だ。さしずめ照明弾術式といったところか。


 これで辺りは一定時間明るくなった。が、敵の姿は見えない。辺りをくまなく見回していたそのとき、急に背後から何かが飛翔してくるのを感じた。わたしはとっさにそれをステップで回避する。


 飛んできたのは氷の矢だった。氷弾術式だ。わたしはそれが飛んできた方向を見やる。と、そこには男が一人、立っていた。


「フムン、避けるか......やはりビンゴのようだ......」


男はぶつぶつと独り言を言うや否や、再びわたし目掛けて氷弾を飛ばす。わたしはそれを難なく回避し、反撃に転じようとする。が、背後に殺気。とっさに身を翻して後ろから飛んできた氷弾を躱す。さらに、避けた先にまた別の方向から氷弾。さすがに避けきれず、とっさに氷壁術式を発動し、氷の壁を繰り出して防御する。


「敵は三人......か」


敵は三方に立ち塞がり、わたしを囲んで立っている。


「おい、貴様らは何者だ。なにが目的だ?」


わたしは彼らに問いかける。


「フム、予想以上の実力だ。驚いた......」


「これは......驚異だ......」


「早急に排除を......」


連中はわたしの問いかけにはまるで応じず、彼ら同士でぶつぶつと話すのみだ。


「......そうか、了解した」


わたしは彼らとの会話を諦め、三人に対して同時に攻撃を開始する。一瞬で先ほどと同様の照明弾を打ち上げ、爆槍術式を発動。何かに触れた途端に爆発する炎の槍を三人に向けて飛ばす。そして着弾に合わせて抜刀し、正面の一人に斬りかかる。


 爆槍は命中。が、直後にガツンと、鈍い音がした。何かを斬った手応えはない。斬撃は失敗したらしいと判断し、反撃に備えてバックステップで三人から距離をとる。


「――人間じゃなかったのか」


爆煙が晴れ、爆槍をもろに食らったはずの三人、いや三体の姿がはっきりと見えるようになる。それと同時に、敵が人間でなかったことがわかった。


 氷狼人、それが敵の正体であった。美しい銀の毛に全身を覆われ、鋭い牙と爪を持ち、水属性魔術と肉弾戦に長け、人間の百倍以上に敏感な嗅覚を持つ、魔物だ。おそらくは悪魔同盟側の工作員だろう。任務は、転生者の抹殺といったところか。


 だが、やられるわけにはいかない――


 まず、氷狼人は風属性魔術に弱い。これは対魔教本の最初の方に書いてあったことだ。逆に、火属性には耐性がある。どうりで先ほどの爆槍をもろに食らってもピンピンしていたわけだ。


 わたしは敵の攻撃を躱しつつ、攻撃の機会をうかがう。敵は肉弾戦に強い。となれば、接近戦は不利だ。距離を取れば氷弾のような水属性魔術で攻撃してくるが、これは避けるのはたやすい。


 ならば――


 わたしは上昇気流術式を自分自身にかけて大きく跳躍し、一気に距離を取る。そして台風結界を発動。三体を暴風の吹き荒れる空間内に閉じ込める。さらにその結界内を目掛けて風刃術式(空気を固めて作った刃を飛ばす術式)を撃ち込む。


 獣の、この世のものとは思えないほどの、もっと近くであったなら鼓膜が破れてしまいそうな断末魔が辺りに響く。しばらくそれが続き、やがて、元の夜の静寂がよみがえった。


 わたしは警戒しつつ結界に近づく。そして、わたしは確認した。


 敵、氷狼人は死滅。結界内には細切れになった、氷狼人だったものが散らばり、地面は真紅に染まっていた。



 夜が明け、わたしたちは出発する。天気は快晴。昨日の猛吹雪がまるで嘘であったかのようだ。エリシアも完全復活した。外で倒れていたトラディトールと、眠らされていたオペラティーノも無事だった。


「いやあシュタインハルト殿、その、昨日はすまなかった......」


歩きながらトラディトールが謝罪する。


「見張り役が倒されたんでは元も子もないのに、不甲斐ない」


「なに、そう落ち込むことはない。君が外で戦っていてくれたからわたしも敵襲に早くに気付けたのだ。君はよくやったと思うよ」


わたしは取り合えず、彼を慰めてやる。


「そうだぞ、俺なんかずっと眠りこけてたみたいで、敵襲なんてまったく気付きもしなかったんだからな」


と、オペラティーノがなぜか胸を張って言う。


「よくそんなことを自慢げに言えるな、オペラティーノ」


わたしは突っ込む。


「なに、それほどでも――」


「褒めてないぞ」


わたしは彼の言葉を遮って言う。


「ほら、無駄口をたたいていないで急ぐぞ。ただでさえ一日遅れているんだ」


「ヘイヘイ」


 その後は皆の口数も減り、黙々と前進することに集中した。


 そして二時間ほど歩き、ようやくゴールであるロッジの丸太の屋根が見えてきた。


「はあ、やっとゴールだわ。もう雪山は懲り懲りよ」


と、エリシアがわたしに向かって言う。


「まあ、君は大変な目に遭ったからな。同情するよ」


なにはともあれ、こうして揃って無事にゴールできたのだ。


 もっとも、”やること”はまだ残っているのだが――

お読みいただきありがとうございます。


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