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とある休日の話

 晴れた日の青い空が好きだ。花、動物、チョコレートも好きだ。

 でも、嫌いな物の方が世の中には多いように感じる。


「たまにはドライブでも行くか……」


 予定のない休日、朝というには遅い時間に起きた私は自室の窓から覗く青空を見て思う。

 これからの人生、何をすれば自分は満足できるのだろうか。


 一人きりの休日なのでメイクは省略して、服も気楽なのを被って、財布とスマホと鍵だけ持って私はドアを開けた。

 その日は寒い冬の日だったが、太陽が綺麗に上っていた。それだけで気分が上向き、何事もうまく行くような気持ちになる。毎日綺麗に空が晴れていれば、なんて絵空事ばかり頭をよぎる。

 貯金で買った、一台の軽自動車に乗り込み、好きな曲を流せば準備は完了。

 私は鼻歌まじりにアクセルを踏んだ。


 住んでいる所は都心からちょっと離れていて、子連れやお年寄りの方が多く住んでいる。洋服店より工場の方が多い。そんな町だ。その為かスーパーは多いが洒落た店は少ない。悲しい事に休日にドライブを楽しめるところは少ない。

 結果たどり着いたのは川だった。


 その川は流れも緩く、近隣に市営の運動場や釣り場がある為か、人がいて賑やかだった。

 その川辺を私はゆっくり散歩する事にした。


「いつも通勤で通るけど、下から見るとこんな景色なんだ」


 建物や車だらけの道路と違い、緑豊かな川辺は何だかほっと一息付けた。

 途中、子連れの親子が横を通り過ぎ、定年過ぎた人たちのゲートボールを見学し、木陰にたむろする丸っと太った鳩を横目にみながら歩く。


「にゃお」

 猫の声を聞いて振り返ると、ベンチに座って猫を膝に乗せた人とばっちり目が合った。


「あら…こんにちわ」

 彼女は目じりの皺を寄せ笑いかけてくれた。

「こんにちわ。いい天気ですね」

 私も少し緊張しながら挨拶を返した。


 その婦人の名前はキミと言う名で、散歩とおしゃべりが好きな、よくいるおばあさんだった。

 キミさんはおっとりとした口調ながらも、ぐいぐい話しかけてきたので、私はいつの間にかキミさんの隣に座っておしゃべりしていた。

 気が付いたら、夫が先日亡くなったばかりな事や、お友達に中々会いに行けなくなってしまった事、近所の猫がいつの間にか懐いてしまった事等、キミさんの事をたくさん知る事になった。


 キミさんは聞き上手でもあって、気づけば私も心の内を吐き出していた。


「勉強して、仕事して、結婚してって……皆の姿見ていてたらなんだか、私疲れちゃって。自分がどうしたかったのか、もう分からなくて」

「そうなのね」

「昔は、ああしたい、こうしたい、こうなりたい!って気持ちがもっとあったのに、最近はあれはダメ、これもダメ。そんな気持ちで一杯になっちゃって、自分でもどうすればいいのか……このままじゃダメな事だは良く分かるのに」


 そんな私にキミさんは優しく笑いかけて言った。


「ゆっくりでいいのよ。気持ちって言うのは自然と一緒。私達の思う通りに動いてくれない頑固者なの。貴方の気持ちが動くまで、ぼーっと空でも眺めながら待ってもいいわ。風向きが変われば自然と動くわ」


 キミさんの優しい黒目が太陽の光を吸い込んで、柔らかな茶色に彩られる。


「にゃあ!」

 のんき者!って怒るみたいに、キミさんの膝の上の猫が鋭く鳴いて、眼前を通った鳩にじゃれつきに行った。

「あら、元気ねぇ」

「びっくりしたぁ」


 驚いて猫を見つめると、黒目だと思っていた目が綺麗な空色だという事に気が付く。

「奇麗な空…」

「素敵な事ね」


 そう言って晴れた空を背負って笑ったキミさんが何よりも素敵に私には思えた。

 やっぱり晴れた日の青い空は好きだ。

 毎日だって見ていたいと思った。



二時間かかった泣

やっぱり1時間縛りは厳しいか…(´・ω・`)

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