三日目
次の日本当に学校に行っても彼女の姿は見つからなかった。
案の定いつもの彼らには絡まれる。
「昨日学校来なかったな?」
いつもの人気の少ないトイレの一室で問い詰められる。
「そ、そうですね。何か問題でもありましたか?」
オドオドした態度が逆効果だったのだろう。彼らはブチギレてしまった。
「問題多有りだ馬鹿野郎」
右ストレートが僕の顔に飛んできてもちろんまともに喰らう。
「お前みたいな奴は俺が毎日教育してやらないと取り残されちまうんだよ。だから有り難く思え!」
そのあとはもう殴られ放題蹴られ放題だった。我ながら情けない。
しかも彼女の元へ今日行けないと言う事実が少し胸を締め付ける。恋愛感情も性欲も駆り立てられないがそれでも彼女の元へ行きたいと心がボソボソ呟いている。
彼らが去ったあとトイレから出て殴られた顔を見て少し自分の顔を引いてから保健室へ向かった。
保健室に入るとこの前の保健医が少しびっくりした顔で手当てをしてくれた。
「どうしたのこんなに腫れ上がったり痣になっていたり大丈夫?」
「大丈夫ですよ。毎日こんな感じですから」
「そんなことないわ。明らかに誰かに殴られた跡があるもの。先生でよければ話聞くわ」
「大丈夫ですよ先生。友達と少し喧嘩しただけですから」
冷却用の氷をもらうとすぐさま保健室を飛び出て家に帰った。
その次の日も彼女は現れなかった。
彼らも当然のようにパシリやストレスの捌け口として僕を使った。
またその次の日も現れなかった。
次の日も‥次の日も‥次の日も‥
数多の日が流れ僕はついに言いつけを破ることにした。
校門には行かず反対方向に行き幾度か角を曲がって校舎裏の林を前にする。
なぜか今日はより一層不気味さを増していたが勇気を振り絞り林の中に足を踏み入れた。道なき道を進みついに小屋を見つけた。
「なんだ迷わないじゃないか」
ボロボロの扉を開け中に入る。
「霧雨さん!」
名前を呼んでみるが返事はない。なぜか不思議とここに残っていれば彼女に会えると信じ椅子に座った。
今日は何だかいい気分がしていた。紅茶でも飲もうかと薪を囲炉裏に組み火をつけた。やったことはないが案外やってみればんすんなりできて良かった。
お湯が湧いたので紅茶の準備をし完成した。
ティーカップに入れ椅子に座りゆったりと時間を過ごした。
「何だか眠いな」
ティーカップを机に置き目を閉じた。薄れていく視界の中で紅茶の湯気が僕を包んでいるのが見えた。
「ここはどこだ。見覚えがないな」
ただ真っ白な空間にいた。ただ、真っ白で何も見えない。だが、ほんのりとダージリンのような匂いがした。
物音が聞こえたので、奥の方を注意して見るとうっすらと人影が見えてきた。
「おーい!そこにいるのは誰だ!」
呼びかけてみても返事がない。
すると頭に声が響いてきた。
『勝手に行ってはいけないって話したよね』
「えっ」
『行ってしまったら一生迷うことになるからって言ったよね』
人影が鮮明になり彼女が現れる。
「霧雨さん!探したんだよ!何でいなくなってしまったの。ずっと待っていたのに。でも心配しないで迷わずにいけたから」
すると彼女は正気を感じられない顔で僕を見つめた。
『迷うのはこれから』
視界が段々と薄れていき意識がもうろうとしていく中でコーヒーのような匂いだけが鮮明に……。
いかがでしたか?今回の小説はここまでです。
次は新シリーズの投稿になりますが少し時間が空きます。それまで皆さん待っててくれると助かります。
それでは~




