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いつか王子様が〜Someday my Prince will come (後編)

ロレッタ編で完結です。

本と髪飾りを並べて、ロレッタは悩んでいた。


(一体どういうつもりでこれを?)

 ローレンスの行動は謎だらけだ。自分から奪い取るようにした本を、何故手放すのだ?しかも贈り物付きで。


 悔しいが髪飾りはロレッタの金髪によく似合った。銀細工にロレッタの青い目の色の石と、淡い色のトパーズが散りばめられてある。

 トパーズは、ローレンスの瞳の色を思い出させた。


「あらまあ、お嬢様。素敵な贈り物ですこと。ローレンス様からですか?なかなかやりますわね」


「なんでわかったの?ローリーからだって」


 ロレッタはつい昔のように、子どもの頃の愛称を使った。

 ロレッタとローレンス、よく似た響きなので、言い間違えないように、ローリーと呼んでいたのだ。


「何故と申されましても。侍女の直感でございますよ」と、ジェーンは笑った。


(なんてわかりやすい。昨日のローレンス様を見ていたらロレッタ様に気があるのは丸わかりですのに。

それに気がつかないロレッタ様もねぇ。何のために恋愛小説をお読みになってるのかしら?全く成果がないったら)


「そんなものなの?よくわからないのだけれど、昨日の本も譲ってくれたみたいなの。

 ねぇ、ジェーン、何かお礼をした方がよいかしら?」


「そうですね。物よりも、一緒にお出かけとか、ああそうだ、手作りのお菓子とかいかがです?

 ご領主様の奥様がお菓子作りがお得意だと、伺ってますよ。お嬢様の事を気にかけてくださってますし、ご相談されてはいかがですか?」




 学校が休みの日、ロレッタはマリアンナの元を訪れた。

 デヴィッドに盲目的に憧れて恋焦がれていた時、最大のライバルがマリアンナだった。

 しかし、2人が結婚して仲睦まじい様子を見ていると、良かった、お二人とも幸せそう、という温かな感情しか湧いてこない。

 実のところデヴィッドに対する気持ちというのが、恋に恋する思春期の少女ならではの勘違いの思い込みだったと、本人も気がついていた。


 侍女のジェーンなど、逆立ちしたってご領主様の奥方様に敵いっこないのだから、張り合う方が無駄だ、まあお嬢様が勝るとすればお顔立ちだけですね!と、笑う。


「それにご自身があれほど神々しい美しさなのだから、誰を見ても顔だけで恋に落ちるなんてこと、絶対なさそうですけどね」


 ジェーンはいつも正しい、そして厳しい。ロレッタは全く太刀打ち出来ない。

 そんな事をつらつらと思い出していたら、マリアンナに声をかけられた。


「ロレッタ様、どうなさったの?何か心配事?

 まさかと思うけど、うちの夫が何か失礼な事を言ったりした?」


「ち、違うんです!マリアンナ様」


 ロレッタは最近の自分が呆けていたこと、気晴らしで出掛けた本屋でローレンスに会ったこと、そのローレンスから買いそびれた本と髪飾りを貰ったことを話した。


(まあ、なんだか拗れちゃってるけど、それってつまり……)


 マリアンナは微笑ましくて笑顔が溢れた。


「じゃあ、お礼にクッキーでも作って差し上げる?」


 さて、ロレッタは初めてのお菓子作りに悪戦苦闘したものの、マリアンナの手助けもあり、なんとか焼き上げた。しかし、出来上がりの歪な形に、若干しょげていたロレッタだった。


「ロレッタ様、形がどうでも気持ちがあればいいのですよ。味は保証付きだから安心して。

 ねえ、その髪飾りがローレンス様から貰ったものなの?」

 マリアンナは、ロレッタのふわふわの金髪をハーフアップに纏めている素敵な髪飾りに気がついた。


「はい。本と一緒に入っていたんです。

 どうしてこんな物をくれたのかしら。なんだか、ローレンスはおかしいんです。

 やたらと突っかかってきて意地悪なことばかり言ったり、じっと睨みつけてくるし」


「そうね。ひとつ言えるのはローレンス様は、貴女が思うほど子どもじゃ無いってことかしら。

 午後からデヴィッド様の元へ剣の鍛錬に来ることになってるの。良かったら一緒に観覧してみない?」



 ロレッタにとってのローレンスは、心置きなく話せる同い年の幼馴染だった。小さい頃はよく一緒に遊んだし、何でも話せる友達だった。

 

(いつ頃からローリーと話さなくなったんだろう)

 ロレッタは思い出そうとしたがよくわからない。


 視線の先には領主のデヴィッドと子爵家が雇っている騎士達と、その中に混じって、まだ線の細いローレンスがいる。睨みつけるようにローレンスを見ているが、真剣な眼差しで打ちあうローレンスには、ロレッタの姿は目に入らないようだ。


「あっ!」


 その時、ローレンスがバランスを崩して倒れ込み、喉元に模擬剣を突きつけられた。ローレンスは降参とばかりに両手を上げている。


「怪我ないのかな」

 心配そうに見つめるロレッタを安心させるように、マリアンナはそっと手を握って、大丈夫よ、いつもはもっと激しいのよ、と声をかけた。


(ローリーは一体、何を目指してるの?もしかして王都の騎士団を目指して、ここから出て行くつもりなの?)


 その時、デヴィッドに何か告げられたローレンスが、こちらを振り返った。ローレンスは目を見開くと、マリアンナとロレッタに向かって一礼をした。


「さあ、ロレッタ様。せっかく焼いたクッキーですもの。皆さまに食べていただきましょう」


「え、でも……」

 

 尻込みするロレッタを他所に、マリアンナはロレッタの手を引いて、デヴィッドたちの元へ向かった。

侍女のシャーリーの手配で冷たい果実水や温かいお茶も用意されている。


「やあ、ロレッタ嬢、訓練へようこそ」デヴィッドが微笑みかけると、ロレッタの顔は真っ赤になる。

 ロレッタの憧れの王子様は打ち合いの後も涼しげで麗しかった。

 そして妻のマリアンナから差し出されたタオルで汗を拭くと、マリアンナの頬に軽くキスを落とした。


「マリアンナ、身体に負担はないかい?」

 マリアンナはまだ目立たぬ腹部を優しく撫でた。

「ええ。少しくらいは動いた方が良いってお医者様がおっしゃってるわ」 

 婚姻から半年、マリアンナはデヴィッドの子どもを授かっているのだ。

 一連の流れを間近で見ていたロレッタはますます赤くなった。そしてその様子をローレンスはじっと見ていた。

 

 訓練を終えた騎士たちは、用意された飲み物や軽食、マリアンナ達が焼いたクッキーに舌鼓を打っている。

 ロレッタはどうしようかと困っていたが、マリアンナに背中を押されて、意を決してローレンスの元へ向かった。


「あの、ローレンス。先日は本と、それから髪飾りをありがとう。

 それであの、マリアンナ様に教えていただいてクッキーを焼いてみたの。お礼に差し上げるわ」


 一気に言うとクッキーを押しつけて踵を返したロレッタを、ローレンスは呼び止めた。


「髪飾りつけてくれたんだ。似合ってる。クッキー、作れるんだな。ありがとう」


「いただきっぱなしは性に合わないもの。見かけはちょっと歪だけど、味はマリアンナ様の保証付きよ」


「形なんて食べたらわかんないさ。もしかして、俺のために?」

「さあ、どうだかね!」

 ツンと顎をそらすロレッタに、ローレンスはおかしくなって思わず笑い出した。


「相変わらずだなあ。子どもの頃と同じだ。都合が悪くなると、いつも偉そうに顎をそらすんだよなあ」


「まあ!ローリーの癖に生意気っ!あなたこそ、いつもわたしの後をついて回ってたのが、こんなにデカくなっちゃって。何を食べたらそんなになるのよ」


「え、、肉かなあ。お前も肉を食った方がいいぞ。痩せっぽちすぎる。色気も何もないぞ」

 

「なんですって?あんたこそ、背高ノッポすぎよ。

ぜんっぜん、可愛いげがないわ。こんなのがモテモテ?信じられないわ」


「へぇ、気になるのか? そうだな、婚約の打診は来てる。でもまあ、俺は自分から申し込むつもりだ。

 そういうお前はどうなんだよ?まさか婚約が決まったとか言うんじゃないだろうな」


「ああ、そうなの!良かったわね。幼馴染としてはお祝いの言葉を述べなきゃね!どこの誰か知らないけど、婚約者さんとお幸せにねっ!」


「おい!なんでそんな話になるんだよ。人の話はちゃんと聞けよ!」


 ロレッタはなんだか急に胸苦しくなって、ローレンスを無視して、気分が優れないので帰ります、マリアンナと告げて帰ってしまったのだった。



 あれからロレッタは、相変わらずやる気が出ずにいた。あれほど好きな恋愛小説もほったらかしで、ページを開く気にもならない。

 これまで脳裏を埋め尽くしていたのはデヴィッドであり、その後は小説の中の『ローレンス様』だったが、今やロレッタの頭の中は幼馴染のローレンスでいっぱいだった。


(なんだかわからないけど腹がたつわ。何なのよあいつ)


 ローレンスは確かに、自分から申し込むって言ってたけど、わたしの知ってる子なのかな……

 ロレッタは令嬢の顔を何人か思い浮かべたが、誰もピンと来なかった。

 髪飾りは帰ってきてすぐに外した。いっそのこと返してしまおうかと思う。


 学校では徹底的にローレンスを避けている。相手もまた、ロレッタには近寄ってこないし、以前は感じていた視線も無くなった。


 授業も上の空だったが、なんとか乗り越えて帰り支度をする。

 ぼんやりと窓から外を眺めていると、目に入ったのはローレンスと知らない女の子が連れ立って歩く様子だった。思わず凝視しているとローレンスと目があってしまった。

 ロレッタは咄嗟にカバンを持って、ごきげんようと教室を飛び出した。

(知らない、知らない、ローリーなんて知らない。

誰と婚約しようと関係ないわ)

 走ったせいか息が上がっているロレッタに、御者は心配したが、ロレッタは大丈夫、早く出して、と告げた。


 その夜、ロレッタは熱を出した。




「ロレッタ、俺はお前のことが好きだ。ずっと、子どもの頃から。俺じゃあ、お前の王子様になれないか?」

「ローリー。嬉しい!」

ロレッタはローレンスの胸に飛び込んだ。

(やっと、わたしだけの王子様を見つけたんだ!)


「………ローレンス様はわたくしのものよ。貴女なんかに渡さないわ。だってわたくし達婚約してるんだもの。ローレンス様から申し込まれたのよ」


「嘘よ!今、告白されたのよ!わたしの王子様になるって……」



 うぅぅぅ、うぅぅうーん、、


「、、さま。、、、うさま。お嬢様。

 お熱で苦しいのですか?ずいぶん魘されてましたけど」


 ロレッタは目を開けると、そこは自分の部屋のベッドの上。どうやら夢を見ていたようだ。

 心配そうな顔でジェーンが覗き込んでいる。


「大丈夫よ。夢を見ただけ」


 母もやってきた。

「ロレッタ、このところ元気もないし、しばらく学校は休みなさい。体調が戻るまでね」


 身体を起こしたものの、ぼんやりしていたロレッタは、サイドテーブルに置いた髪飾りを見た。


「ジェーン、これ要らない。捨てて」


「あら。これはローレンス様から頂いたものじゃありませんか。要らないのですか?お嬢様、ローレンス様と喧嘩でもなさったのですか?」


「喧嘩も何も。そんな仲じゃないから」


 ジェーンは承知しましたと、髪飾りを手に取ると、お嬢様を苦しめるこんなものっ!と、窓から投げ捨てた。 

 ロレッタは焦った。まさか、ジェーンが本当に捨てるとは思わなかったのだ。


「駄目ー!投げ捨てるなんて。酷いわ、ジェーン。

ローリーに貰ったのに、、」


 ロレッタは泣き出した。


「お嬢様、心にもない事を仰るからですよ。ほら、投げたふりをしただけです。ちゃんとここにらありますから」

 ジェーンはロレッタの手にそっと髪飾りを乗せた。


 ロレッタは髪飾りを胸元で抱きしめた。

「意地を張るのをやめたら、ぐっと楽になりますよ」

 ジェーンが背中をさすると、ロレッタは、うん、と小さく頷いた。


 翌日、熱は下がったが、学校へ行く気になれず、ロレッタは再びの引きこもり生活に入ろうとしていた。

 

 そんなロレッタを訪ねてきた人があった。学友だというが、名前に心当たりがない。

 しかも、ローレンス・アーチャー様のことで話したい事がある、とお見舞いの花束にメッセージカードが付いている。

 ロレッタは、会わないで後から気になるなら、会った方がいいと決心して、身なりを整えた。


「お待たせしました。」


 学友だと言う女性は立ち上がって深くお辞儀をした。

 自分は、エインズワースの領都でドレスを作っている工房の娘、メアリーだと名乗った。年はロレッタより1歳上だという。


「体調がすぐれないとお聞きしました。こんな時に伺うご無礼をお許しくださいませ」

 

 ロレッタはメアリーを観察した。大層美しい娘である。実家がドレス工房だけあって、シンプルながら上質の布を使ったドレスを着ている。


(あ、この人、ローリーと一緒にいた女性)

 ロレッタが一瞬眉を顰めたその様子を、メアリーはしっかりと見ていた。


「メアリー様、今日はどういったご用件かしら?

 わたくし、病み上がりですので、難しいお話はご遠慮願いたいわ」


 頷いたメアリーの口からは、信じられないような言葉が出てきて、ロレッタは頭が混乱してしまった。


「本当に?」

「ええ、本当です」

「わたくし、どうしたら良いのかわかりません」

「お待ちいただくのが一番かと」


 何を信じて待てば良いのだ?




 父の執務室へ呼ばれたのは二日後。

 ロレッタは結局、この日まで学校を休んでしまった。

 ローレンスに会うのが怖かったのである。


 普段は厳格な父親が心配そうに体調を尋ねたが、ほぼズル休みのロレッタは逆に心苦しくて、ええ、まあ、と言葉を濁した。


「ロレッタ、実はお前に婚約の打診が来ている。今までも勿論あったのだが、まだ早いと断っていたのだがね。

 今回ばかりは断り難いのだ。それで一度会って貰いたい」


 ロレッタは頷いた。

「お父様、承知致しました」


「おや、いつもの様に、横暴ですだの、親の手駒にはなりませんだの、言わないのかい?」

 オルコック代官は愉快げに尋ねたが、ロレッタは首を振った。

「貴族の娘として生まれたからには義務がありますから」

「誰だか知らなくて良いのか?」

「どなたでも同じです(どうせ断るんだから)」


 相手に会うのは次の休みだと聞かされたが、ロレッタにはどうでも良いことだった。



 いよいよ、お見合い当日になった。両親は乗り気のようだが、ロレッタの心は晴れなかった。

 朝から念入りに手入れをされているロレッタに、ジェーンが声をかけた。


「お嬢様、ドレスはいかがなさいますか?」

「何でもいいわ」

「まあ、投げやりですこと。しゃんとなさいませ」


 長椅子にだらけて座るロレッタにジェーンの容赦ない小言が飛ぶ。

「何でも良いのなら、さきほど届いたばかりのこちらにしましょうね」


「ドレスなんて注文してないじゃない、いつ作ったのよ」


 ロレッタはハッとした。

「ねえ、まさかそれって?」


「そのようですよ。領都のドレスメーカーから届いております。ロレッタ・オルコック令嬢宛に」


 恭しくドレスを運んできたメイド達によって着付けを済ませ、髪を結い上げたロレッタは、両親と見合い相手の待つ応接室へと連れて行かれた。


「まあ、まあ!ロレッタ。こんなに美しいお嬢さんになっていたのね」

「元から美しかったが見違えたよ」


 そう言ったのは、見合い相手の両親、すなわちアーチャー男爵夫妻だった。




 メアリーが訪ねてきた日、彼女からは、これは内緒にしておくようにと言われておりますが……と聞かされたのは、ドレスの注文を承っている、という話しだった。


「え?誰が誰にですか?」

「ローレンス・アーチャー様からロレッタ様に、でございます。お色味とデザインは決まっているのですが、最後の飾りをお嬢様に似合うものにしたくて、わたくしこっそり参りました」


 メアリーは、有名なドレス工房の娘で、デザインを任されており、学校へは交友関係を深めるために通っている。

 生憎とオルコック家とは縁がなかったが、これを機に是非ご贔屓に、と売り込むのも忘れない。

 詳細なサイズは、侍女様から伺いました、と言うメアリーに

(すっかり騙されていた)と悔しがるロレッタだった。


「先日、窓からご覧になっておられましたね。その後、学校をお休みされているとお聞きしまして。

 あの、誤解があればいけないと思っております。アーチャー男爵家は、わがエインズワースドレス工房の顧客様ですの」

「そうですか」

「ドレスの理由をお尋ねにならないのですか?」

「え?」

「ローレンス様はロレッタ様にご婚約の打診をされているそうなのですが、全くお返事を頂けないため、振り向かせたいのだと仰ってました」


 ロレッタは目を見開いた。打診って?

 もしかしたら、机に積んであったアレ?


「本当に?」

「ええ、本当です」


 そんなやり取りがあったのちの、今日なのである。


 届けられたドレスは、ローレンスの髪のような優しいミルクティ色に、トパーズやシトリンといった、ローレンスの瞳を意識させる色の宝石が散りばめられていた。

 ふんわりした袖とバルーンのように広がる裾も、美少女ロレッタを引き立てるに充分だ。


「なかなか、お返事をいただけなくて、どうなるかと思っていましたけど、ようやくその気になってくれて嬉しいわ」

 

「いやまだ、何も決まっておりませんからな。娘はいわゆる釣書というのを積み上げたままで、何も見てはおらんのです。

 今日は他ならぬアーチャー家のご子息という事で、ようやく会う気になったようなもので」


 それでも2人だけで話し合いなさい、誤解もあるかもしれないから、と言われて、ロレッタとローレンスは2人で庭に出た。


「ロレッタ、ごめん。こないだ怒らせてしまった。

お前が返事をくれないから焦っていたんだ。

 デヴィッド様に憧れているのは知ってる。だけど、デヴィッド様には奥様がいる」


「あー、あのね、デヴィッド様は憧れだけだから。

 それより釣書って何よ。そんなのいつ送ったの?見てないわよ」


「何だって?もう何ヶ月も前だぜ?

 お前から何の反応もないし、俺、お前の侍女からあれこれ聞き出して、本の主人公に恋してるっていうから、どんな男が好きなのか研究しようと思って読んでみたんだ。そしたら、主人公の名前がローレンスじゃないか」


「まさかそれで、あの日本屋にいたの?」


「そうだよ!新作が出たと侍女から連絡があって、研究するつもりで行ったら、本屋にお前が来たんだよ」


 ロレッタは驚くばかりだ。ローレンスの行動が、侍女のジェーンにそそのかされたものだとは。

 

「で、髪飾りとドレスは?」


「髪飾りは、『恋人たちの散歩道』のローレンス卿がオリビエ嬢にプレゼントするじゃないか。真似したんだよ。

 ドレスは工房に相談したら、メアリー嬢を紹介されて、それで放課後にずっと打ち合わせしてたんだ。

 そしたらお前と目があって……逃げ出すから」


「なんでそれを早く言わないのよ」


「ちゃんと伝えようとしたのに、お前がいつだって話を聞かなかったんだろう」


「何なのよ!ローラーが、あのドレスメーカーの人に婚約申し込みをしたんだって思ったじゃない!馬鹿みたい」


「何怒ってんだよ。申し込みしたのはお前だけだ。それを受け取らなかったのもロレッタじゃないか!」


 ロレッタはしゅんとした。

「だって、だって……」


「ロレッタ、聞いてくれ。

 君が王子様に憧れてるのは知ってる。俺はちっとも王子様っぽくなくて金髪でも青い目でもないけど」


 ロレッタは泣きそうになるのをぐっと堪えていた。


「俺じゃあ、お前の王子様になれないか?」


 目の前には真剣な顔つきのローレンスがいる。


「そうね、考えてあげてもいいわ」


 意地っ張りのロレッタは、最大限の譲歩をして、ローレンスに手を差し出した。


「『ローレンス様』なら指先にキスを落とすのよ、わかってるわね?」


ローレンスは、ロレッタの手をそっと持ち上げた。





 


途中、当方のミスで違う話を突っ込んだりしましたが、なんとか番外編終えました。


マリアンナ、エルリーヌ、アリッサ(悪のヒロイン)

そしてロレッタ(ツンデレちゃん)。

強い女の子が好きです。

アリッサに関しては賛否両論もありそうですが、(今のところ何の反応もないのは筆力不足でしょうね。)、被害者からの減刑嘆願が効いたようです。


そんな感じでこのお話も終わりを告げます。

読んでいただいてありがとうございました。

本の少しでも、心に残れば嬉しく思います。


2025/3 改稿



続編準備中です。


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