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2話

視界に入ったのは青い空だった。

俺は草原に横たわっている。

喉を触ると傷はきれいに塞がっている。


痛みはなく、少し眠たい。

死後の世界には違いないし、もう少し寝てようか。


そう思って目を閉じかけたときだった



「起きたか?」


背後から声がする。

起き上がり、後ろを振り返ると、

年配の男が悲しげな笑顔でこちらを見つめていた。


「ここはあの世か?」

その男に問いかけた。


「さっき、お前がいた世界とあの世の狭間というのが、正確なところかな」


「俺は死んだのか?」


「あぁ、死んだ」


「貴方は神か?」


「あぁ、神だ」

神と名乗る男は淡々と応える。


「武昌様も死んだのか?」


「あぁ、死んだ」


「立派な死に様だったか?」


そう聞くと少し悩むように間をおいてから神は応える。


「立派かどうかは私にはわからない。敵に追い詰められ、側近が殺されるのを見てはいられず、自ら降伏と自害を申し出た」


「立派だ。武昌様らしい死に様だ」

俺は心からそう思った。


神は少しだけ、微笑んだ。

「武昌に伝えよう。それでだ、時間があまりない。今後の話をしよう。武摂よ、転生する意思はあるか?」


「転生?」


「その姿のままで異世界で残りの人生を生きないか?」


「南蛮か?」


「違う。次元が違う世界でだ。武士はもちろん、法や常識、食べ物や生き物も違う世界でもう一度人生をやり直さないか?」


「断る。不覚な最期ではあったが、武昌様に仕え、武士として全うに歩んだ人生を否定したくはない」


本心だ。叶うことなら再び武昌様に仕えたい。


「その武昌の願いだ。お前の人生が不条理な最期で終えたのを心の底から悲しみ、自分の采配を悔やんでおった」


「悔やむ必要などない!!俺は幸せだった。天下一の幸せものだった。武昌様が自責の念を抱く必要などどこにあろうものか」


思わず、大声で神の言葉に抗った。


「そう、荒ぶるでない。お前の悪い癖だ。とにかく、武昌の願いだ」


息を整えて、神に問う。

「武昌様も転生するのか?」


「しない」


俺が反論する前に神は言葉を続ける。


「武昌は神となった。私より上位の神曰く、平和を願う心と戦の才の乏しさを評価したとのことだ。今後は私とともに日本国の一柱を担う神として生きることになる」


涙が止まらない。


そうだ。そのとおりだ。

武昌様の生き様が認められないはずがない。

戦の才なくとも神は務まる。

きっと、平穏な国が作られることだろう。


武昌様が報われた。


涙は当分止まりそうにない。



「ありがとうございます」

神に最大の感謝の意を伝えたいが、どうしても声が震えてしまう。


「私がやったことではないが、伝えておこう。してどうする?」


すすってもすすっても流れる鼻水を無視して、神に向き合い、答えた。


「武昌様のご意向に従い転生いたします」

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