スナック菓子の可能性
「なんだぁ?この細長い棒は?」
大体察しがつくだろうけど、あの有名な棒だ!
今回の味はチーズ味にしている。因みに出してから気づいたが環境の為か包装の材質が紙になっていた。あの有名な絵も無く茶色の紙に包まれている形だ、ゴミの処理が楽で助かるな。
「口当たりのいい焼き菓子みたいなものですよ、味付けにチーズの粉を使ってます」
グルセルさんは一口齧って咀嚼した。
「おいおい...こいつは...」
ダメだったか...?
「うめぇじゃねぇか!職業柄甘い物はたまに食べるが少し苦手でよぉ菓子って聞くと甘いもんって思っちまうがこいつはいい!酒のアテにもよさそうじゃねぇか!それに軽い!空気の様に軽いから幾らでもいけちまいそうだ!」
匂いの強いチーズ味だと個人差は出そうで怖かったがグルセルさんには高評価だな。
「好みに合ったみたいで良かったです。味も何種類かあるので良ければどうぞ。」
そういいながらコーンポタージュ味とサラミ味を差し出す、なぜこの二つかは説明のしやすさとこの世界に存在してそうな物を優先で選んだからだ。
「へぇ!こっちは少しあめぇが砂糖じゃねぇなスープの甘さがあってくどくねぇ...こっちは干し肉か?肉みたいな風味と香辛料の風味が美味しいじゃねぇか!」
これも手ごたえはよさそうだ、問題は値段だが...
「御口にあったようで安心しました、グルセルさんならこの焼き菓子にいくら値段を付けますか?」
反則みたいな技だがこの世界の商人なら幾らつけるか聞いてもいいだろう。
因みに仕入れ値は元の世界だと7円だったがショップで買うと10メル、つまり10円だ。
他の駄菓子も一桁円だったものは軒並み10メルになっていた。この辺りはうまくやってくれってことなんだろう。
「そうだな...俺なら...いくらで仕入れたかにもよるが何も聞かずに答えるなら120...いや150で出すだろう」
「150!?」
聞いた瞬間びっくりして少し噴き出してしまった。利益が仕入れ値の10倍以上なんて破格の商売だろう
「あ?安かったか?腹にたまる程の密度がねぇから嗜好品と考えてだが200でも買うやつはいるだろう。」
「いえいえ!思ったより高かっただけです!でも参考になりました、ありがとうございます。」
と言ってチーズ味をいくつか差し出そうとすると
「礼はいらねぇよ、中々新鮮な経験もさせてもらったしよ、ここらで売るのが初めてなら商品は多い方がいい、今度買いに行くからしまっときな!で?いくらで売るか決まったのか?」
なんてニヤニヤしながら聞いてくるグルセルさんの懐が広すぎて申し訳ない気持ちが沢山湧いてくる。元値10メルなんです...
「えぇ...ただ僕が想定していた値段と違うのでもう少し考えてみようと思います。」
元々駄菓子の利益なんてほとんどない様な物だ。うちではもともと穀物や手作りで売っていた菓子や惣菜、加工肉などで利益を上げていたのだから。
この世界で俺は暴利を貪るつもりはない。身の丈に合わないやり方をしてはいつか綻びと慢心、油断が出てしまうからだ。品行方正というつもりは無いが駄菓子を一番楽しんでもらいたいのは子供たちだ。その子供たちの手に届かない値段にしてしまっては駄菓子を作った人に申し訳ない気がする。
しかしこの価格で市場を破壊をしてしまっては周りの店に迷惑が掛かってしまう...要チェックだな。