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ぷろろーぐ




   


 暗闇の中、視界もはっきりせず、四肢を鎖で繋がれていた。当たりはむせ返るほどの血の匂いを感じる。しかし、この匂いにはもう慣れていた。


「オラァ!さっさと死ねや!テメェみたいな売り残りなんざゴミなんだよ!」


 そんな甲高い男の声が響き、ぼくの腹にとてつもない衝撃が襲う。


「うぐぅ?!」


 ぼくはそんな蛙が潰れたような声を出しながら、背中から壁に打ち付けられた。


 ーーー………この痛みは、どこまで続くのだろう。


 ぼくは朦朧とする意識の中、ふとそんなことを考える。

 腹を思いっきり蹴りつけられ壁に背をぶつける。

 これだけで骨は十本以上折れているはずだ。知覚する限り、十四本は折れていた。

 しかし骨を折られる痛みにはもう慣れ、折れた骨は再生され元の形へと戻っていく。

 これでもう、二百九十四回目だ。


 ここに連れて来られた当初は、余りの痛みに胃から水を吐き、血を流し、涙を飛ばしながら絶叫した。


 そんなぼくも今は逆らう気も湧かなくなり、とうとう自我すらなくなりかけている。そんなぼくの自我が保たれていたのは、ぼくに憧れがあったからだろう。


 冒険者。そう呼ばれる人たちに、ぼくは憧れた。

 生まれ持った力や修練で極めた技を手に地下迷宮ダンジョン大魔森林フォレストなどに生息する強大な魔物モンスターを討伐する。

 時にはクラン同士で争い、時には助け合うレイドとなる。

 どこまでも自由な翼を持つ、最も自由な職業。

 ぼくは、そんな白い鳥たちに憧れた。


 しかし、僕には白い翼などない。ただ翼を喪がれ、地に打ち付けられたただの鴉。

 翼は黒く染まり、身は紅く塗りつけられる。

 身体は痩せ細り、衝撃を受けるたびに骨が砕けていた。

 もう、三年は何も食べていない。

 奴隷にされてから、一度も食事などしていない。

 それでもぼくが生きているのは、天から与えられた恩恵《生の枷》のせいだろう。

 

 

 ぼくにはスキルがある。

 本来、エルフが持たないはずのそれを、ぼくは四つ以上持つ異端者イレギュラー

  故にぼくは、監禁され、拷問され、殴られ蹴られ罵られ、五年の月日を過ごした。

 それからも奴隷として売られ、毎日奴隷商たちに嬲られる日常。

 幾度も幾度も嬲られ続け、そして肉体が再生する。

 抵抗も出来ず、ただ監禁される日々。

 

 何かを考えていないと気が狂いそうで、ぼくは毎日何かを考えていた。


 何故、ぼくはこんなにも辛いのだろう。


 何故、神はぼくにスキルを与えたのだろう。

 

 何故、ぼくに禁忌の烙印(レイヴンスティグマ)などを与えたのだろう。


 何故、ぼくは死ねないのだろう。


 何故、両親は殺されなければならなかったのだろう。


 何故、何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故ナぜなぜナぜなぜナぜなぜナぜなぜ何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜナぜなぜなぜなぜナぜなぜなぜなぜナぜ何故何故何故何故なぜナぜなぜナぜなぜナぜなゼナぜ何故何故なぜナぜなぜなゼなぜ何故何故なぜナぜナぜなぜ何故なぜ何故何故何故なぜナぜなぜ何故何故何故何故何故何故なぜなぜナぜなぜなぜなぜ何故何故なぜナぜナゼなゼなゼ何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故ナゼナゼなゼナゼなゼナぜなぜなゼ何故何故何故何故ナゼなゼナゼ何故何故何故何故何故ナゼナゼナぜなぜナぜ何故何故何故何故何故ナゼナゼナゼなゼナゼナぜナぜなゼナゼ何故何故何故なぜナぜなぜナぜなぜナぜなぜ何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜナぜなぜナぜなぜなぜなぜナぜなゼなゼなゼなゼなゼ何故何故何故何故何故何故ナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナぜなぜナぜなぜナぜナゼ何故何故何故ナゼナゼナぜなぜナぜなぜナゼナゼナぜなぜナぜ何故何故!!!


 何故ぼくはこんなにも………………………弱いのだろう。



 そう考えたその瞬間、ぼくの中で、何かが壊れるような音がした。


 長年ぼくの中に溜まってきた闇が、心の内側から溢れる。


 

 それと同時に、ぼくの禁忌の烙印(レイヴンスティグマ)から光が放出され、自身を縛る鎖を全て炭化させ、崩しさっていった。


 ぼくはその時、烙印ちからの全てを悟った。


 ーーーーーーあぁ……………確かにこれは、禁忌と言われるほどの力がある。

 全てを焼きつくす、最凶の力だ。

 エルフにとって、炎とは禁忌だ。

 遠い昔、エルフの里は業火に包まれ、ぼくらの始祖たちであるエンシェントエルフは滅亡した。

 それにより炎は禁忌とされ、炎を司る烙印を持つ者は迫害された。

 

 そしてぼくは炎の烙印を持ちながら、スキルまで持ち合わせるという最悪の忌み子。

 

 それ故に、エルフの里では虐げられてきたのだ。

 

 今までは、小さな檻に閉じ込められ、羽根を折られ、叩きつけられて来た。

 だから今度は………………

 

「ぼくの番だ。」

 

 そう呟いた瞬間、辺りに白炎の波を撒き散らす。異変に気づいた奴隷商の一人が入ってくるが、それすらも物言わぬ灰へと姿を変える。

 

 ーーーあぁ、ぼくはどうかしていたんだ。嬲られなくていい。罵られなくていい。爪を剥がされなくても目を抉りとられなくても四肢を喪がれなくてもいいんだ。

 

 全部全部全部全部!!全部燃やして壊して殺して灰に変えればよかったんだから!

 

「アハ、アハハ、アハハハハハハ、アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハははははははははっ!!」

 

 ぼくは、自由な鳥。もう、翼を喪がれてはいない、自由な鳥。だからぼくは飛び立つ。

 例え、他人が死のうとも。

 

 そして、再度白炎の波を起こそうとした時ーーーーーーーーーーーー…………

 

 

「悪いけど、ちょっと眠ってもらうわよ!」

 

 そんな女の声を聞いて、ぼくは意識を失った。

 

 

 

 

また2,3週間位更新しなくなるかも。とりあえずクリスマス特番でマジック&ガールズ更新したらファンタジア大賞用の作品仕上げます

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