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繰り返しの高校生  作者: りんた
繰り返しと不登校
9/10

9話

小林遥香が泣き止むとゆっくりと坂本とのことを話し始めた。

「あいりちゃんとは同じ部活で仲が良かったの…中2夏くらいまでは…」

そう言って1度深い呼吸してから続けて

「でも私が試合に出てあいりちゃんが試合に出れなくなったらあいりちゃんが私をいじめ出したの…」

零れそうな涙をぐっと堪えて

「最初は無視とかだけだったけどだんだん靴を隠されたり服をびしょびしょにされたり…して…」

と言いながら零れた涙を手で拭い

「私も部活に居にくくなって部活をやめたけどクラスでもいじめは続いたの…」

「でも中3になって別々のクラスになってからはいじめも終わったの…でも…でもあの時のあいりちゃんの事を思い出しちゃってクラスでもあまり目立つことが出来なかったの…そしたら入学式であいりちゃんを見かけて…」

思ったよりも深刻な状況に驚いてしばらく声が出ない…

「…また仲良くしたいのか?」

必死に絞り出した一言はそれだった。

「仲良く…できるなら…したいかな…でももう大丈夫…」

考えて悩やんだ途切れ途切れの答えは意外にもさっぱりしていた…

「明日学校に行く…のは本当はまだ怖い…から一緒に登校してくれる?」

断る気はさらさら無いが今の俺に明日が来るのかは心配…

「あぁ一緒に学校に行こう」

安心した顔に俺も安心した。

そのまま小林宅を出ていく

「ありがとうございました…」

小林遥香の母親はずっと泣きっぱなしでお礼を俺に言い続けている。

「ありがとうございます」

妹の小林久瑠美も素っ気ないがお礼はしてくれいる。


「翔太くん凄いね」

前を歩いていた古澤先輩が俺の顔を覗き込みながら話を続ける

「あんなに真剣に人のことなのに考えられるなんて…」

そう言い2歩大股で前を進んだ古澤先輩は

「私は翔太くんほど他人に真摯になれないや…」

ともう暗くなった空に向けて言い放たれた諦めたようなさっぱりとした言葉を俺はかき集めて古澤先輩に返す…

「ただ思ってた事を言っただけですよ。それに…」

大股で4歩進み古澤先輩の1歩前に出て

「古澤先輩がいなかったら上手く出来てなかったですよ」

と次は俺が暗い空に向けて言葉放つ

「あ、ありがとう」

街灯の明かりで照らされた古澤先輩の顔は少し頬を赤らめているように見えた…


よし寝るか…

布団の上で気合いを入れた俺はいつもより早く設定した目覚ましを枕元に置き電気を消す…

もし明日も今日が続いたらどうしようか…

そんな不安でいっぱいいっぱいになった心を落ち着かせる。

大丈夫…やれることはやりきった…大丈夫…大丈夫…


「チリチリチリ」

大きな目覚ましの音に目が覚める…

まだ起ききっていない脳みそをフル回転させて考える…

「ザー」

ん?

「ザーーー」

んん?

「ザーーーー」

耳には昨日までは聞こえてこなかった音が聞こえる。

カーテンを開けると雨が降っていた。

昨日は清々しいほど晴れていたはずだ…

やっとやっと明日が来た…来たんだ…

明日来たなら俺は小林遥香を家に迎えに行く…

幸い目覚ましを早くしといたから時間は沢山ある。

心の余裕はまるで無いが…

小林遥香を学校に連れて行って大丈夫だろうかと今更俺が心配になってきた…

けど小林遥香がやる気になった今更そんな心配は野暮かと思い心の奥に閉まっておく。


ピンポーン

「行ってきまーす」

家の中から聞こえる大きな声と共にガチャと扉が開く音がする。

「おはよう」

昨日よりもだいぶ元気になった小林遥香は俺の声に反応して

「おはよう」

といっぱいではないが元気な声で返事をした。

学校に近づくに連れてテンポの狂い出す足を落ち着かせようとしてるが全然落ち着かせられない小林遥香に俺は

「雨の日って好きか?」

と質問をするが答えを待たずに続けて

「俺は雨の日が好きだよ。雨は嫌なことも好きなことにも平等に降り続けるだろ。だから落ち着けって…小林さんも坂本さんも平等に今雨に打たれてるんだ…平等な相手に緊張する必要なんてないからね」

そう言って小林遥香の顔を見ると少し落ち着きを取り戻しているように見えた…

「さぁもう学校が見えてきたよ」

厚い雨雲の下にある学校はまるで勇者が目指す魔王城のように見えたのはきっと俺だけじゃないはずだ…

「ふーーー」

深い深呼吸をした小林遥香は

「よし…行こう…」

と言い校門を1歩でまたぐ。

「意外にあっけないんだね…ずっと学校が怖くてでも来たかったはずなのにいざ学校に1歩踏み入れてみるとそんなこと考える間もないし、考えてたことが馬鹿みたいに思えてくる…けど学校に入れたことは素直に嬉しい…」

そう言う小林遥香は嬉しそうに笑った。


「おはよー?」

クラスに入るなり俺に挨拶をしてきた陸矢は隣にいる小林遥香に気付いたらしく不思議そうな顔をしている

「おはよー」

挨拶を返すと案の定

「そちらの方は誰ですか?」

と小声で俺に聞いてくる。

この際だからまぁまぁ大きめな声で

「小林遥香さんだよ」

と言うとクラスが一瞬静かになった。まぁ入学式から1回も学校に来たことのない人が来たのだからみんな気になるだろう。

「席は多分そこだよ」

と俺が座席表を見て教えてあげる。

俺から小林遥香が離れたのを見ると小林遥香に話しかけに女子の数人が集まる。

小林遥香も楽しそうに話していたのを見て俺はほっとした。

「なんで翔太が一緒に来たの?」

陸矢が俺に質問してくる。

「まぁ色々あったんだよ」

と説明がめんどくさいから誤魔化しとく…


その日に小林遥香はクラスの人達と仲良くできたみたいだった。

しかし肝心の坂本とは1回も話していない…

「翔太放課後クラス残ってくれないかな?」

昼休みに小林遥香にそう言われた俺は何となく小林遥香が何をしたいのか理解した…

「頑張ってね」

とだけ声をかけて放課後を待った。

「あいりちゃんちょっといい?」

放課後になると小林遥香が坂本に話しかける。

俺が一応呼んどいた助っ人の古澤先輩はクラスの前で入るタイミング失ったらしく目で俺に合図を送ってくるが俺はそっと目を逸らした…ごめん古澤先輩…

「何?」

いつもと変わらない素っ気ない返事をする坂本の目をじっと見つめながら小林遥香は

「あいりちゃん…仲直りをしよう?」

意外な言葉その場にいた全員が耳を疑ったのをお構い無しに小林遥香は話を続ける

「別にまたあいりちゃんと昔のように仲良くなりたくて言ってるわけじゃないの…私はあいりちゃんがまだ少し怖い…でもそれでいつまでも小さくなって自分の殻に閉じこもってるのは少し勿体ないのかなって思って…だから…あいりちゃんとはいい関係でいたい」

なるほど…要するに小林遥香は私はあなたに何もしないからあなたも私に何もしないでくださいって言っているのか…

「分かった」

そうとだけ言って坂本はクラスを出て行った。

「こ、こ、怖かった…」

へなへなと弱々しく腰から崩れ落ちた小林遥香は

「もう大丈夫だね」

と心の底からの明るい笑顔で俺に笑いかけてくれた…

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ダメだしでも全然構いませんのでよろしくお願いします。

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