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ルーズリーフとキャンパスノート  作者: 夜桜ユウト
3/3

3、過苦琴二着イテ

うっす。

よさです。

かきました、かくことについて。

三枚目



物語

小説

脚本

小論文




音楽やストーリーを作るのは、昔から好きだった。

その世界の中にだけいる人物や生き物たちに命を吹き込むのが好きだった。

世界を作るのが好きだった。

紙と筆から、すべて電子の世界になったとしても、それだけは揺るがなかった。

今も、人生に、世界に、社会に苦しみながら、それらから逃げるための世界を作っている。

いつも耳には音楽が、口にはレモネードが、そして目には文字たちがいた。

友達がいなくとも、文字が私を助けてくれた。

書けないときでも、「次は書けるようになる」と思えるだけで、この生き方に意味は存在した。

語彙もなく、拙い文章でも、

褒めてくれる人が、好んでくれる人が、一人でもいてくれるのであれば、

自分の書き残した世界と人物は、現実に爪痕を残せたのだろう。

こうやって、この文字を書いてるだけで私の小さくて薄っぺらいココロは少しずつでも満たされている。


それはそうと、

久しぶりに、三ツ矢サイダーが飲みたいな。

筆をおいても世界は広がっている。

一度手を止めても、尚広がる。

だったら、少しだけ、いいよね。

光の板から目を離し、黒い板から手を放す。

自分の財布と、家の鍵を持って外へ出よう。

サイダーを買うだけでも、他にいいことを考えるのが、私のいつもの癖だ。

例えば、「少しは運動になる」とか「たまには外の空気を吸うことも悪くない。」とか。

逆に、「あんまり得意じゃない知り合いとあったらどうしよう。」とか「事故起きたりしないかな。」とか悪いことも考えてしまう。

妄想も、文字を書く上で重要だとは思うけど、傍から見たらただの変人。

考えすぎるのも、あまりよろしくない。

自分にとっても、いや自分にしか悪いことは回ってこないか。

机の上には、自分の名前が書かれた紙。

端に、小さく『オルフェウス』と書かれている。

自分がネット上で匿名で生きていくための、本名とは違うもう一つの名前。

オルフェウスは、ギリシャ神話に登場する琴の名奏者の名前だ。

愛する妻を亡くし、取り戻すために冥界にて琴を奏でた。

冥界の神ハーデスの心を動かし、妻を取り戻す猶予を与えられたが、あと一歩のところで失敗し、妻を永遠に失った。

悲しい話だ。

でも、そうなったのは、我慢しきれなかった自分の所為だと、私は小学生の頃星座の図鑑を読んだ時から感じていた。

自分もそうだ。

人生のつらさに耐えられず、大好きな文字に頼った。

彼と違って文字を失うことはないけど、その引き換えとして何かを奪われた感覚がまだ胸の奥にある。

そんな自分と、親がくれたこの世に一つだけの名前を重ね『オルフェウス』とツイッターやyoutube上では名乗っている。

最近は、ツイッターのフォロワーも増えて、話をしてくれる人も増えてきつつある。

仲がいい人はいるほうがいい。

けど、その人たちを選ぶ権利もあるはずなので、現実ではあまり人と関われない。

そう、強気でいるのがせめてもの救いなのだ。


小説の内容にできそうなことを歩きながら考えていたら、目的のコンビニに来てしまった。

家の隣の薬局は閉まっているので、少し離れているこのコンビニにわざわざやってきた。

三ツ矢サイダーは奥のほうにあるので、店員の「いゃっしゃいyしぇー」という雑な接客を聞き流して、迷いなく足を動かす。

雑といっても、私はあの感じの雰囲気の人嫌いじゃない。

こういうのを”隙自語”というらしいな。

それはともかく、大した用もないのでさっさとサイダーと、なんとなくZEROの方も手に取り、レジへ向かう。

こんな時間なので、誰も並んではいない。

幽霊がいたら、話は別だが。

いや、その前に私が失禁する。確信がある。

しかしながら、世界は面白くないもので、何事も無く事は過ぎ去っていく。

財布から、橘の硬貨を取り出し、釣りを綺麗にするために平等院も何枚か召喚する。

レジ袋は面倒なので断っておく。

白と緑のテープが貼られた二本のペットボトルを両手で抱え込むように持ちながら、自動ドアに向かう。

人影が見えたので、右に避けながら扉を開ける。

通りすがりに、声をかけられた。

「あれ、アキヅキさん?」

いきなり、声をかけられてびっくりしてしまった。

思わず今買ったばかりのサイダーを落としそうになった。

なんとか、防いだものの、確実に炭酸発車案件だ。

大きく、安堵のため息を零す。

さあ

ふと、我に返ってみる。

踊りて慌てふためき、行動一つ一つがオーバーリアクション………。

さて、相手はどう思うだろうか。

相手は、自分の名前を知っていた。

全てを察し、顔を朱に染めていく。

振り返りたくはないが、大事な用があるかもしれないので、致し方なく顔を振り向かせる。

しかし、やはり羞恥の気持ちが残っているので長い前髪で目を隠す。

「は、はい………?なん、です、か………?」

恐れながら、問いただす。

ああ、この人が、クラスの煩いやつらの一味だったらどうしようか。

明日からクラスのネタになりかねない……。

全て終わった気がする。

明日休もうかn


「やっぱ、着月さんだ。こんな時間に何してるの?」


予想とは裏腹に、爽やかな男子の声。

思わず、漫画のような「ふへ?」という声を出してしまった。

(って言うけど、じゃあその漫画って何ですか………)

前髪は形を変えずに、顔だけ上を向く。

見覚えがあった。

いや、それ以上に、彼は脳裏に強く残っていた。


「あれ?忘れられた?俺。卯花竜譜だけど?」


彼は、自分の学校の生徒で




自殺したいと考えている一人だった。



うっす。

よさです。

三枚目拝読ありです。


では一つだけ

皆さん元気ですか?


僕は元気です。

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