ブラックホールの少女
その少女の真ん中には
いつもブラックホールがあった。
それは、
彼女のなかでずうっとずっと
彼女のいろんなものを吸い込むから、
それはとてつもなく無限の力だから、
抵抗しても意味がないから
彼女はすべてを諦めていた。
ときどき、
彼女の通う5年4組の教室の
頭上には
彼女の真ん中から溢れた
ブラックホールが
渦を巻いて、
ときどき
生徒を
飲み込むのだ。
誰も気づかないけれど、
無限に湧いて 飲み込むのだ。
彼女も気づかないけれど、
友達もときどき飲み込まれた。
だから、彼女には友達はいなくなった。
彼女は何かがなくなっても
“いつの間にかなくなったなぁ”
としか思えない。
何かを考える気力も
飲み込まれていたからだ。
何もかもが 湧かない。
生えてきた小さなやる気も
早速吸い込まれていく。
ぽろぽろとこぼれる涙も
吸い込まれていく。
だから、泣いても泣いても意味がないのだ。
ぽたぽたと歩く帰り道
夕焼け色の 住宅街
ぽつぽつ下を 向きながら
どれだけこの足 歩くだろう
どれだけこの道 歩くだろう
ずうっとずっと ブラックホール
彼女の真ん中 ブラックホール
無限に湧いてる ブラックホール
何十年後に 消えるだろう
このままずっと 消えないだろう
死んだらやっと 消えるだろう。
彼女の未来は 飲み込まれていく
歩いた道のり 意味のない道
彼女の影だけ 落ちる道
彼女自身は もういない
夕焼け色の 住宅街
誰もいなくなった 住宅街。