関東新路線②:東神高速鉄道・東京メトロ六本木線
『関東新路線①』で相鉄と東急の直通線が1990年に開業した。これにより、相鉄の悲願である東京都心への乗り入れが実現した。
しかし、当初の目的である東京都心と港北ニュータウンを結ぶ目的は果たされなかった。目黒~港北ニュータウンの新線も開業しなかったが、こちらは目黒線とグリーンラインによって後年実現した。
また、千代田線の原宿~喜多見の別線も、建設費や速度の問題、小田急の複々線化への変更となって実現しなかった。
では、この路線が形を変えて実現させる場合、どうするべきか。実現した場合、どうなっていたか。
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正直、この路線だが開業させるまでの道程が非常に難しいと考えている。東急と小田急の勢力圏に挟まれている事から独立路線はまずあり得ない、そうなると東急か小田急のどちらかが運営する事になるが、どちらも勢力圏に入られるのは嫌うだろう。戦時中は大東急として一つだったが、小田急としては不本意であったし、戦後に大東急解体の音頭を取ったのは元小田急の社員であった。また、相鉄を巡って東急と小田急が張り合った事もある為、どちらかが建設しようものなら猛烈な反対をして潰すだろう。営団だと営業圏外の敷設は嫌がるだろうし、沿線自治体に建設するだけの資金を用意出来るのかも不明である。
そうなると、東急と小田急、沿線自治体が出資する第三セクターが妥当となる。そうでもしないと、運営母体が決まらず、建設そのものが不可能となる。
一応、運営母体を強引に決めたが、規格の問題もある。この路線は千代田線の延長の為、1067㎜・直流1500Vとするのが普通だが、港北ニュータウンに延伸する場合、横浜市営地下鉄ブルーラインと直通する事も考える必要がある。ブルーラインは1435㎜・直流750Vの第三軌条方式の為、直通は不可能である。ブルーラインの新横浜~あざみ野の開業は1993年なので規格の変更は可能だが、開業済みの新横浜~横浜~上永谷の方は不可能なので、結局規格の変更は不可能となる。
4号線は未開業なので、そちらに合わせれば良いだろうか。この世界は大東京鉄道が開業しており、鶴見~末吉~元住吉が完全な並行線となる事からその区間は外されるだろうが、残る区間の整備は行われるだろう。
尤も、ブルーラインの整備が終わってからになろうだろうが、港北ニュータウンと東京を直接結べる為、整備しないという選択はしないだろう。
だが、そうなると気になる問題がある。4号線の計画では日吉が起点となるが、日吉だと新路線のルートから外れる為、そのままでは直通は不可能となる。
一方、ブルーラインの終点は元石川(たまプラーザかあざみ野)の為、直通するとしたらこちらの方が相応しい。
考えとしては2つあり、1つは元石川~港北ニュータウンを複々線で建設し、一方はブルーラインと、もう一方は新路線と4号線に繋がる。もう1つは、港北ニュータウン~日吉をブルーラインに変更する事である。
しかし、そうなると横浜~日吉で東急と並行する事になり、東急が良い顔をしないだろう。『関東新路線①』の神奈川東部方面線の並行線にもなる為、二重整備として批判される可能性もある。
そうなると、この路線が東急・小田急・横浜市の3者に都合が良いだろうか。原宿から砧、溝の口を経由し、そこから南西に進み港北ニュータウンに入る。これならば3者の勢力圏に収まりつつ、4号線とブルーラインのルートと重複しない。
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1973年、前年に策定した都市交通審議会答申第15号の一部が変更された。変更されたのは千代田線の郊外部であり、砧・溝の口を経由して港北ニュータウンに至る路線が追加された。これは、千代田線が日比谷線の輸送力強化や小田急線の都心直通だけでなく、港北ニュータウンから都心直通も担う事を意味した。
しかし、実際に千代田線の分岐線とする気は無かった。既に建設の大半が完了している状態で、新たな分岐線の建設は不可能な為である。工事するにしても、千代田線と小田急線の接続が遅れる事になり、それは避けたかった。
だが、この路線を単体で整備しても、東京都心へ繋がるルートが無ければ意味が無い。利用者は多少いるだろうが、莫大な費用を掛けて整備する意味が無い。
その為、新たに東京都心の地下鉄線が計画された。ルートは渋谷を起点に六本木通りを通り溜池まで行き、そこから環二通りを経由して新橋に、そこから新大橋通りを経由して築地に、そこから東に進路を変えて有楽町線と複々線で合流して豊洲へ至る。豊洲から有楽町線の分岐線を通り住吉に至り、そこから半蔵門線と複々線で押上まで行き、そこから国道6号線経由で四ツ木、金町を通り松戸に至る路線となる。東側の多くが有楽町線と半蔵門線の計画と意図的に重複させており、西側は既存路線の隙間を通る形となる。
新橋~松戸で国鉄の月島線と並行する為、「二重投資」という批判も出た。しかし、目的の違いから整備する事となった。
この路線と接続させる為、郊外路線の起点は渋谷となった。起点側のルートも一部変更され、京王井の頭線の渋谷~駒場東大前と並行する事となる。
しかし、地下鉄が答申に入っていない事から整備する意味は無い為、この時は計画は進展する事は無かった。それでも、東急が1975年に渋谷~松濤~駒場東大前~砧本村~津田山~宮崎台~有馬~港北ニュータウンの免許を申請し、1980年に認可された。
1985年、運輸政策審議会答申第7号に上記の地下鉄(「東京16号線」と命名された)と郊外路線が組み込まれた。これにより、翌年には渋谷~六本木~月島を営団が申請し、東急が持っていた免許を東急・小田急・京王・営団・沿線自治体が出資して設立した第三セクター「東神高速鉄道(東神高速)」に譲渡した。
同時に、常磐線及び京成筑波線の混雑緩和を目的とした「新常磐線」構想も答申に組み込まれた。区間は、千住又は松戸~南流山~豊四季~稲戸井~土浦とされた。
1989年、営団の新路線となった東京16号線と東神高速の工事が始まった。答申に組み込まれる以前から調査は行われていた為、ルートの作成は早かった。
しかし、建設開始がバブル景気と重なった為、収容費用が高騰した。また、収容完了までの時期も長引き、建設費用は当初の4割増し、収容期間も6年から9年になった。
収容が完了した場所から工事が行われ、1997年9月30日に東神高速の渋谷~宮崎台と六本木線(16号線から改称)の渋谷~汐留が開業した。規格は1067㎜・直流1500Vとオーソドックスなものとなったが、需要が低いと見られた事、並行路線が多い事から4両編成での開業となった。しかし、駅などの設備は将来の輸送力強化に対応出来る様に8両化に対応している。
両路線の車輛だが、東神高速は1000形、六本木線は05系が投入された。05系は東西線で運用されている車輛と同じであるが、1000形の見た目は史実の神戸市営地下鉄海岸線の5000形となっている。しかし、本来の車輛と異なり、20m・4ドア・運転台は左側・1067㎜の台車・リニアモーターカーでは無いなど、見た目以外の共通点は無いに等しい。
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東神高速と六本木線が開業したが、当初見込んでいた乗客数の7割程度しか利用しなかった。矢張り他の路線が並行している事もあるが、開業区間が短い事から利用者が限られていた。
東神高速の方は東急田園都市線と完全に並行している上にやや遠回りであり、運賃も高かった事から利用者が少なかった。また、急行運転を行っていない事から、田園都市線と比較して速達性の優位が無かった事も伸び悩んだ要因だった。
だが、砧や宿河原から乗り換え無しで渋谷に出られるという事で、そこそこ利用者はいた。沿線の交通の多くはバスだが、この付近の道路は狭く交通渋滞も頻発していた事から、渋滞が無い鉄道の存在は重宝される事となる。
一方、六本木線の方は多少利用者がいた。日比谷線・銀座線とは並行しているが、山手線との連絡駅の違い、六本木を経由する事などから、ある程度の棲み分けがあった。それ処か、バスと違って渋滞が無い事からバスの利用者を奪う事に成功した。
それでも、距離の短さや運賃の高さから敬遠された。バブル景気の終息やその後の極東危機などもあり沿線の開発や延伸工事も低調気味だが、当初の目的の実現と交通網の充実を目的に整備は続けられた。
2004年4月1日に営団が「東京地下鉄」として民営化した後も、15号線(後の副都心線)と共に工事は続けられた。2006年3月18日に汐留~押上と宮崎台~センター南が開業した。合わせて、新常磐線である「新都市高速鉄道(新都高速)」も開業し、直通運転も開始された。
六本木線の内、有楽町線・半蔵門線との共用区間となる月島~豊洲と住吉~押上は複々線で開業した。月島~豊洲は外側が有楽町線、内側が六本木線となり、住吉~押上は二層式複々線で上が押上方面、下が渋谷方面となった。押上駅のみ方向別複々線となり、外側が半蔵門線、内側が六本木線となった。
当初、センター南から更に延伸し、中山・二俣川・根岸方面に延伸、又は横浜市営地下鉄と直通する計画もあったが、横浜市との調整が難航した事、東急目黒線・相鉄新横浜線と並行線になる事、京浜東北線・根岸線との競争に劣る事などから、計画が白紙となった。また、六本木線も押上~四ツ木~松戸の整備が予定されていたが、こちらは新都高速に譲渡した。その為、東神高速と六本木線は全線開業した事になる。
全線開業を前に、東神高速と六本木線の6両化対応工事が行われた。全線開業及び首都圏高速鉄道との直通による輸送量の増加を見越しての事だった。また、新都高速と直通運転する事により運行距離が長くなる為、優等列車の運行も実施される事になり、使用されなかった東神高速の待避線の使用も開始される事となった。
港北ニュータウンから直接東京都心に行ける事で、ブルーラインや東急田園都市線から利用者の一部が東神高速に移ったなどの効果が認められた。運賃が高いというデメリットこそあるものの、乗り換え無しで行ける事、港北ニュータウンから座って通勤できるメリットは大きかった。また、延伸区間の開発も進み、利用者は順調に増加した。
一方、汐留~押上の利用者の伸びは少なく、当初予定の半分程度の利用者となった。六本木線はルートこそ違うが銀座線と半蔵門線、浅草線の並行線であり、新しく開業した汐留~押上はJR城東線とも並行している。その様な中で六本木線が開業しても、移る利用者は限られる。
それでも、新都高速と直通しているのは六本木線の為、通過客は多かった。沿線の開発こそ少ないものの、各路線の目的の違い(※)から一定数の利用者は存在している。
2013年、六本木線は注目を浴びる事となる。この年にブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、2020年のオリンピック開催都市が東京となる事が決定した。主要会場がベイエリアに置かれる事が決定し、そのアクセスの一つとして六本木線が活用される予定となった。また、沿線地域でも再開発計画が立てられ、俄かに注目が集まった。
その為、東京メトロは六本木線の各駅の改良工事(導線の改良、ホーム拡張など)、8両化の計画が立てられた。前者は開業が新しい事から大規模な工事はしないと見られているものの、後者は車輛の増備計画やら設備強化などで時間が掛かり、完了するのが2025年と見られている。東京オリンピックに間に合わないものの、設備強化によって円滑な運行を行う必要はある為、先に改良工事を全て終わらせる方針となった。
2020年現在、改良工事は昨年8月に完了し、現在は8両化の工事が行われている。8両化は2023年度と予定されている。
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(東神高速鉄道)
◎センター南:横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン
◎センター北:横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン
・北山田
・東有馬
・馬絹
◎宮崎台:東急田園都市線
・むかいが丘
◎津田山:JR南武線
・宇奈根
・砧本村
・砧公園
・世田谷大蔵
・上用賀
◎弦巻:大東京鉄道
◎若林:東急世田谷線
・太子堂
・代沢
◎駒場東大前:京王井の頭線
・松濤
◎渋谷:JR山手線・湘南新宿ライン、東急東横線・田園都市線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線
↓東京メトロ六本木線と乗り入れ
(東京メトロ六本木線)
↑東神高速鉄道と乗り入れ
◎渋谷:JR山手線・湘南新宿ライン、東急東横線・田園都市線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線
◎高樹町:東京メトロ白金線
◎六本木:東京メトロ日比谷線、都営大江戸線
◎溜池山王:東京メトロ銀座線・南北線、東京メトロ丸ノ内線・千代田線(国会議事堂前)
・西新橋
◎汐留:JR城東線、都営大江戸線、ゆりかもめ
◎築地:東京メトロ日比谷線、東京メトロ有楽町線(新富町)
◎月島:東京メトロ有楽町線
◎地下鉄豊洲:東京メトロ有楽町線、JR城東線(豊洲)
・辰巳の森海浜公園
◎越中島:JR城東線・京葉線
◎東陽町:東京メトロ東西線
・千石
◎住吉:東京メトロ半蔵門線、都営新宿線
◎錦糸町:JR総武本線、東京メトロ半蔵門線
◎押上:東京メトロ半蔵門線、東武伊勢崎線、京成押上線、都営浅草線
↓新都市高速鉄道と乗り入れ
※:六本木線は東神高速と新都高速の都心直通、半蔵門線は田園都市線と伊勢崎線の都心直通と銀座線のバイパス、浅草線は京成の都心直通、JR城東線は常磐線と総武本線、東海道本線の連絡と下町の南北の輸送の改善。